〈偏読書評〉【番外篇】壮絶すぎる過去を、軽やかな「笑い」と「救い」へと昇華する漫画力

偏読書評〉ブログのnoteへの引っ越し作業がまだ終わっていないのですが、「#今週のお題」が「2018年オススメのマンガ」という面白そうなテーマなので(またもや)番外篇です(そして、またもやムチャクチャ長いです)。

オススメしたい作品は、2018年になってから刊行された作品に限定しても結構あるのですが、せっかくなので《noteで読めるマンガ》というしばりを(勝手に)加えた上で、『コココミ』で絶賛連載中の、川路智代さん作『ほとんど路上生活をオススメ……いや、激推し(っ!!)したいと思います。

ほとんど路上生活』というタイトルからして、ちょっと強烈なのですが、その内容はというと……

DV&ギャンブル狂いの父親に耐えかね、一家は「夜逃げ」ならぬ「昼逃げ」を決行! だが、たどりついた新居は、お風呂やキッチンはおろか玄関すらない宴会場だった…。著者が中学生の頃に経験した圧倒的現実を軽妙に描く、家族がテーマのノンフィクション!

……と、これまたショッキングなもの。しかし「昼逃げ」のエピソードなんて、軽いジャブ程度なんすよ、本当に。もうね、読み進めれば進めるほどにネット漫画(しかも、かなりエグイ系のレディコミ)のバナー広告ばりに、想像を絶するエピソードがバンバン出てくるんですよ!! もう、バンバンッと!!

しかも、その壮絶な〈ほとんど路上生活〉が注目され、2月12日放送の『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)には《事情があって、3年間もドアが無い中身まる出しの家に住んでた人。》として、著者である川路さんご自身が出演してしまうという事態まで発生。

番組内では、作中で描かれているエピソードのいくつかを川路さんご自身が紹介していたのですが、連載を読んでいる自分としては「あぁ……あのエピソード、テレビ的には、やっぱりアウトよね……」と、納得してしまうほどに壮絶なのです。

ここまで読んで「そんなエグイ作品、オススメするなよ!」「人の不幸をなんだと思っているんだ! この冷血漢!!」「note村から出てけーっ!!」と、石とか火炎瓶を私に投げつけたい衝動にかられている人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってーっ!!

確かに、《想像を絶する過去を描いた、実録マンガ》というのも『ほとんど路上生活』のセールスポイントかもしれない。でも私が一番の魅力として感じているのは、その《想像を絶する過去》の実体験を、《軽やかな「笑い」あふれる実録漫画》として成立させている、川路さんの漫画力なのです。

実は川路さん、以前は〈井の頭かわじ〉名義でTwitterやpixivに『おそ松さん』の二次創作作品(ほぼ1コマ、多くても数コマ程度のもの)をアップされていたのですが、それがもうムチャクチャ素晴らしかったんですよ!!(※現在は、全て削除。あぁ、スクショしておけば良かった……と、本当に後悔っ!!

キャラクターのデフォルメ具合にはじまり、たった1コマの中でキャラに言わせるセリフの言葉選びのセンスの良さ前後の物語を読み手に想像すらさせる時間の切り取り方&一瞬で心をわしづかみにする表現力、そして何よりも不思議な色気を放つ、どこか日本画を彷彿させる滑らかな線に、私はメロメロ(死語)になっていました(ちなみに川路さんは線を削って、絵を完成させるタイプだそう。あぁ、その解説画像もスクショ(以下、略)っ!!)。

そんな〈強烈なギャグ感覚〉と〈一切の無駄のない、ファイン・アートのような美しい線を描けるテクニック〉を併せ持つ、ハイブリッドな川路さんが連載を持つのを知ったとき、「絵は抜群だけど、あまり漫画には向いてないのでは……」と正直思っていました。が、実際に始まった連載を読んでみたら、そんな心配は杞憂に過ぎませんでしたよ、マジで。

二次創作の中で発揮されていたキャラクターのデフォルメ具合と言葉選びのセンスの良さに加え、絶妙な(もしかしたら、ものすごく計算されているのかもしれない)リズムで展開していくコマ、そして何よりもストーリー・テラーとしての技力の高さたるや!! もう度肝を抜かれましたね、はい。

題材としては、読了後に人間不信モードになってしまうエグイ系レディコミと大差ないのに、軽やかな(でも決して、ただのギャグではない)「笑い」をもたらし、人を「信頼」できることの尊さや、さらには煉獄のような世界を生きる上での「救い」と「希望」を差し出し、読み手をカタルシスへと誘う作品として成立できているーー言うなれば、壮絶な過去を、ひとつの作品として見事に昇華できているーーのは、川路さんに飛び抜けた漫画力があるからこそだと、自分は思うのです。

でも「こういうタッチ、私はちょっと苦手かも……」という人も、正直いるかもしれません。でも、そういう人にこそ、試しにnoteに掲載されている第1話だけでも読んでいただきたいです。ストーリーにぐいぐいと引き込まれて、気づいたら最新回まで読み終えていた、ということが起きるかもしれないので。

と、ものすごい文字数で激推しした『ほとんど路上生活』ですが、この度めでたく単行本化が決定!! ギャーッ!!(黄色い雄叫び)

こんなタイミングで投稿をアップし……さてはオマエ、関係者だなっ!?」「ステマ警察だ! 公開設定ボタンから手を離せ……っ!!」と、これまた石 or 火炎瓶を投げる準備を始めている人もいるかもしれませんが、ちょっと待ってーっ!!(本日2度目)

本当に自分はただの(ひきこもり過ぎて、川路さんが参加されていたイベントにすら行けなかった)いちファンなんですよ。っていうか、この投稿の下書きをしていたら、単行本化の発表を思わすTweetがされて、「ひゃーっ!! もうっ!?」ってビックリしたくらいなんですよ、マジで。

ちなみに川路さんが一緒に暮らしているのは、昨年『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』(小学館刊)で鮮烈な漫画家デビューを果たした、つのがいさん。4月には待望の『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』第2巻が発売されるので、『ほとんど路上生活』も一緒にヒットして、ふたりのおうちが、21世紀のトキワ荘みたいな存在になって欲しいな、とも願っています。

何はともあれ、単行本の発売が、本当に待ち遠しいです。そして、川路先生……好きです……っ!!(超私信)

↑つのがいさん作『仕事で使えるつのがい』LINEスタンプより(このスタンプ、何気に実用性が高くてオススメです。愛用してます……っ!!

ぱお〜ん!(感謝と感動のひと鳴き)
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Mk_Hayashi

偏読書評

「偏食」ならぬ「偏読」気味の本好きによる、文芸やマンガ作品紹介。
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