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【お仕事】『Numero TOKYO』2019年7・8月合併号「男の利き手」古川日出男さんインタビュー

普段はお仕事の告知は画像投稿 or つぶやき形式でしていますが、ただいま発売中の『Numero TOKYO』7・8月合併号(扶桑社)では、自分にとっては一生の記念になるようなインタビューをさせていただいたので、テキスト投稿形式で告知します(先に書いておきますが、個人的な思い入れが強すぎて、長い上に気持ち悪い文章になっています。熱がこもりすぎて、暑苦しい&鬱陶しい文章なのは毎度のことですが)。

2006年の『Numero TOKYO』創刊時から続く連載として、フォトグラファーの操上和美さんが撮影した俳優やアーティスト、ミュージシャンなどの著名人男性の“利き手”の写真と、その方へのインタビュー記事&人生の歩み(年表と図版)で構成された『男の利き手』という3ページものの連載があります。今回、約13年間続く連載の中で、小説家としては初めて古川日出男さんにご登場いただいたのでした。

《操上和美さんと小説家》という組み合わせを聞いて、開高健さんが出演されていた《サントリーオールド》の広告を思い浮かべる方もいるかもしれません。自分はこの広告のイメージがあったので、逆になんでこれまで小説家の方が連載に登場していなかったのか、ちょっと不思議でした。

雑誌などのインタビューは、新作などのプロモーションを兼ねて行われることも多いのですが、今回はプロモーションではないスタイルでの取材。実はこのスタイル、ライター/インタビュアーにとっては非常に緊張するものです。プロモーションを兼ねてのインタビューであれば、プロモートする作品を切り口に話を伺えば記事としての最低限のラインをクリアできるので、新作についてだけ入念に下調べしておけばすむといえばすみます。

しかし今回はそうではない上、記事が掲載されるのはハイモードのファッション誌。文芸誌であれば読者の大半は古川さんのことを(少なくとも名前や代表作と作風くらいは)知っていると想定できるも、ファッション誌の場合はどれくらいの読者の方々が古川さんのことを知っているのか、全く予想がつかない(2008年から書かせていただいているブックレビュー欄で、古川さんの作品をストーカーのごとく何度も紹介しつづけてきているとはいえ)。そもそも《古川日出男という小説家》の全貌を、たった1ページのインタビュー記事で伝えようとすること自体が(文章力がない末端ライターにとっては)至難の業である。

なので、古川さんの人となり、それと作風をどうすれば伝えられるか、ポンコツ脳をフル稼働させてひたすら考え、「小説」「朗読」「戯曲」の3つを切り口としてお話を伺うことに決めました——が、1ページには到底おさまらない情報量/文字量となってしまい、結局は「小説」を切り口に伺った内容を中心に記事をまとめることに(泣く泣く)しました。「縦書き/横書きの様式が生み出す効果の違い」とか「古川作品は単行本が刊行されてから3年後くらいに読むのが一番“おいしい”らしい」話とか「読者と観客、より手強い存在なのは?」などなど、いくつもの興味深いエピソードを、まさに断腸の思いでカットしましたよ……

3つのテーマについて、それぞれ少しずつ入れて1本の記事にするという選択肢もあったといえばあった。でも、そうしてしまうと記事として《軽い》かつ《弱い》ものになってしまい「古川さんが語った言葉で構成される記事とはいえ、これだと古川さんらしくないし、何より本質に触れていない気がする」とポンコツ脳なりに感じて「小説」の1つにしぼったのでした(原稿を編集部経由で古川さんにご確認いただいた際に「あれだけ色々と話をしたのに、これだけしか使わなかったのか、あのポンコツ末端ライターは」と思われていなかったかどうか、不安で不安で仕方がないが)。

自分のした選択が正しかったのかどうかは分からないし、そもそも正解とか不正解なんてものはないのかもしれない。しかし自分なりのベストは尽くしたつもりです。それでも記事を読んでつまらないと感じさせてしまったら、全ての責任/原因は(当然のことだが)自分にあります古川さんが語ってくださったことは、何もかもが興味深いことだったので。

……なんだか言い訳めいた文章になってしまいましたが「古川日出男さんってどんな人?」「どんな作品を書く人?」と思っている方にとっては、多少なりともイントロダクションになるようなインタビュー記事になったと(自分としては)思いますので、もし書店で雑誌を見かけましたら、ぜひ手にとっていただけたら、この上なくうれしいです。

古川さんのファンの方にとっては——自分としては最大限の努力はしたものの——インタビュー記事に物足りなさを感じるかもしれませんが、操上さんが撮影された古川さんの手の写真はぜひ(というか絶対)見た方が良いと思います。丸々1ページを使い、ドーンと写真が掲載されているのですが、小説家(に限らず、誰か)の手をここまでじっくりと見ることができる機会はなかなかないと思いますし、何より古川さんの手相が素人目にもわかるくらいに(良い意味で)異質なので。あと手の形が、猫好きで知られる古川さんらしい形になっているので(撮影時の言葉をお借りするのであれば「にゃんこの手」の形)。

ちなみにnoteにおける過去の投稿をご覧いただければ一目瞭然ですが、自分は古川さんのファンです。でも末端ライターなので、編集部側に「古川さんの取材がしたいです」なんてとても言える立場ではないし、言ったこともない。なので今回、インタビューできたことは自分にとって奇跡のような出来事です。何せ古川さんは、自分内《いつかインタビューしてみたい人ランキング》のトップに君臨しつづけていた憧れの方ですから。

あとここ3年ほど、とある古川作品に対してずっと抱いていた疑問への《答え》(というか《原因》)を知ることができたのもうれしかった。古川さんの言葉を一文字でも多く誌面に掲載すべく何を疑問に思ったかは質問部分では省いたのですが、その《答え/原因》にあたることはインタビュー記事の中にしっかりと入れてあります——古川さんにしてみれば、あまり触れて欲しくなかったことかもしれないですが。それが何だったのか推測してみると面白いかもしれません。

かなり気持ち悪い内容の投稿になってしまいましたが(※自覚はあります)、要は「書店などで雑誌を見かけたら、ちらりと誌面をご覧いただけたらうれしい、かつ、これをきっかけに古川さんの作品や朗読に興味を持っていただけたら、ものすごくうれしいです」ってことです。どうぞ皆さま、よろしくお願いいたします。