見出し画像

甲状腺検査、福島県は本当に受けたい人だけが受けるようにしてくれているの?

福島の甲状腺検査は2011年に開始されました。
目的は『子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守ること』です。
(福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター「県民健康調査」甲状腺検査の『検査の目的』https://fukushima-mimamori.jp/thyroid-examination/outline/purpose.html)
 

最初は無害で安全な検査であるとされていた甲状腺検査でしたが、2014年に韓国で甲状腺がんの過剰診断の被害が発生したのを皮切りにその有害性が明らかになり、無症状の対象者に甲状腺超音波スクリーニングはするべきではない、とした勧告が海外では多数出されています。
 
そのためか、福島の甲状腺検査は最近では『検査の任意性の確保』が言われはじめ、
「甲状腺検査は、希望する方にのみ行う検査です。」
https://fukushima-mimamori.jp/thyroid-examination/outline/freelyselect.html
 
ということになっています。つまり、受診するのも受診しないのも、自己責任でということです。

しかし、自己責任で、と言うためには、医学倫理的に、1)自分で決めるための十分な説明をすること、2)強制をしないこと、すなわち「検査を受けろ」というプレッシャーをかけないこと、が必要とされています。福島の甲状腺検査はそのような状況下で実施されているのでしょうか。

まず、説明についてです。福島県の有識者会議では、受診率の低下について危惧する発言が相次ぎ、「検査のリスクについての説明は抑制的にするべきだ」との発言まで飛び出しています(第33回「県民健康調査」検討委員会の富田哲氏のご発言など)その結果、原子力事故後に甲状腺集団スクリーニングを実施することは推奨しない、としたIARCの提言は説明文書から削られていますし、UNSCEAR 2020 Reportの『甲状腺がんの多発見は過剰診断の可能性』という結論についても、責任問題を回避するためなのか、福島県はいまだに県民に知らせようとはしていません。
 『福島県は過剰診断を認めていない TBS「報道特集」2022年5月21日 【原発事故後300人 原発事故と甲状腺がん 関係は?】についてのSCOの感想』
https://note.com/mkoujyo2/n/n72c633863ebd
 

次に強制性についてです。新型コロナワクチンでは、福島県では任意性の確保のため、として学校での接種を実施していません。健康被害のリスクは甲状腺検査の方が圧倒的に高いはずですが、学校でしかも授業時間中に実施されています。このちぐはぐな対応はどうしてなのでしょうか。
 
また、任意性の確保がうるさく言われるようになった現在でも甲状腺検査を受診していない人に対してはこのような手紙を送ってプレッシャーを与えています。これは問題ないのでしょうか。

任意性についての福島県の対応の最大の問題点は『県民健康調査甲状腺検査サポート事業』です。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kojyosen-support.html
 
これは、甲状腺の病気になった人の治療費をサポートする事業ですが、対象者は「甲状腺検査を受診した県民」に限られています。すなわち、自由意思で検査の受診を拒否した県民はサポートとしての治療費の提供を受けられないのです。これは明確な受診勧奨(検査を受けなかったら治療費も自己責任ですよ、というあからさまな圧力ですね)で医学倫理的には重大な問題です。
 


これについては、第33回福島県「県民健康調査」検討委員会で問題視されています。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/318302.pdf

津金昌一郎 委員
『対象者のことなんですけれども、「甲状腺検査の対象者であって甲状腺検査を受けており」というのがあるんですけれども、私は基本的に「受けており」 は要らないと思うんですね。最初に、県民の健康を見守ろうと思って県民健康調査の対象になった人がそこからも甲状腺がんが起こる、それで受けていない人からも起こり得るので、その人たちも含めて対象にすべきではないかなと思います。
 
髙野徹 委員
『津金委員と一緒なんですけれども、これは医学倫理的に見てこの改正というのは非常にまずくて、要するに一次検査を受けていない場合は甲状腺がんになってもサポートしませんよということなので、これは一次検査に対する強烈な強制性を持つことになるので、改正前に戻すか、あるいは津金委員がおっしゃったとおり、受けていなくても対象者であればサポートできるという形にしないと、ちょっとこれは問題あると思います。』

第33回福島県「県民健康調査」検討委員会


このような指摘があったにもかかわらず、福島県は事業内容の変更しませんでした。この支援事業が県民の見守りであるならば、どうして検査を受けていない県民を支援対象から外してしまうのでしょうか。この事業を見る限り、国の税金を使い、一次検査に対する強烈な強制性をもって、県がデータ集めをするという構図になっているのではないかと危惧いたします。
 
それにつけても、このような医学倫理から逸脱した検査がなぜいまだに大手を振って実施されているのでしょう。福島県立医科大学の倫理委員会の責任は重いと言わざるを得ません。