白い日まであと2日
バレンタインデーが終わるや否やホワイトデー特設会場(以下『ホワイトデー会場』)が設置された。
私は週1のペースでそのホワイトデー会場の監視をしている。
時には潜入し、時には少し離れたカフェでコーヒーをすすりながら自前のホークアイ(視力2.0)を光らせて監視をしている。
なぜ、そんなにホワイトデー会場が気になるのかというと、ホワイトデー会場にどんな人たちが来るのかを知りたいからだ。
ホワイトデー会場に来るということは、「バレンタインデーに戦利品があった」ということだ。
いわゆるバレンタインデーの勝ち組がそこに居るはずなのだ。
「その勝ち組とやらはどんな人なんだい?え?」と思いながら監視をしている。
***
バレンタインデー直後、ホワイトデー会場には女性しか居なかった。
「私甘いもの大好き」
「ああ、もうホワイトデーになってる。どれ、どんなものが置いてあるかな」
「友チョコのお返しに何か買ってこう」
どんなことを考えてかは分からないが、客の殆どが女性だった。
ホワイトデーに近づくにつれて、男性の割合が増えていった。
男性の「お返し」の選び方は実に興味深かった。
女性の場合、バレンタインデーのチョコレートを選ぶ時には「パスカル・ルガックのフォンダンショコラ」とか、「ダリケーのカカオニブ」とか、「デメルのザッハトルテ」とか、もうすでにターゲットが定まっているため、時間がかからない。
ところが男性は、普段あまり食さないお菓子に関する知識が乏しいのか、明らかに迷ってホワイトデー会場をうろうろしている。
あらかじめドコのナニを買うか決めている様子もない。
「ホワイトデー会場にはたくさんのお菓子があるだろうから、見ながら決めよう」
と思っている感じが見受けられる。
だが、お菓子は見た目ではよく分からない。
そうなるともはや味は関係ない。見た目重視になる。
「可愛い」と思うものを獲物に定める他なくなる。
「これこそあの子にふさわしい」
「これならば同僚女子にダサいと思われない」
彼らから見たらそう見えるらしいパステルカラーや花柄に包まれた「KAWAII」を両手に抱える男性がたくさんいる。
「KAWAII」を抱えてレジに向かう途中で、また別の「KAWAII」が視界に入り、「あれ?こっちのが良くね?」と思い、最初の「KAWAII」が置いてあった場所にリリースしに行く道中でまた別の「KAWAII」の方がよく見えてきて、「あああああああ!」となっている様子が少し離れたカフェからでもよく分かる。
なんて言うか、いい人だ。
ホワイトデー会場にいる人たちはいい人なのだ。
***
ホワイトデー2日前の本日、ホワイトデー会場は男まみれになっていた。
バレンタインデーと違う点は、バレンタインデーは会場が設置された時点で既に混み合うのだが、ホワイトデーは直前にならないと混み合わないというところだ。
女子はお目当てのチョコレートをゲットするという、「絶対に負けられない闘い」がそこにあるのだが、男性は「ホワイトデー特設会場にはあんなにたくさんお菓子があるし、ゆっくり選べばいっか」と考えているのではないかと思われる。
直前になってから「うわあああああ!!明後日だ!うわああああ!」となっている感じがよく伝わって来る。
心なしか数日前よりも右往左往の勢いが激しい。
野球部っぽい男の子3人が神妙な面持ちで相談しながらお返しを選んでいた。
マネージャーへのお返しだろうか。
とても微笑ましかった。
バレンタインデー会場にいる女子の目がハンターの目なら、ホワイトデー会場にいる男子の目は迷子の目だ。
オロオロしている。
いい人。
やっぱりこの会場にはいい人たちが集まる。
***
女の扱いに慣れている人は今流行っているドミニクアンセルベーカリーなどで女子目線の「可愛い」スイーツをあげたりするのかも知れないし、カッコつけたい人はバラの花束をあげたりするのかも知れない。
彼女にずっと欲しいアピールをされていたアクセサリーをあげるかも知れない。
それはそれでとてもステキだし、女の子は喜ぶと思う。
女性の皆さん、もし、彼氏や旦那さん、同僚からダサいお返しを貰ったとしても、「うわ!ださ!」なんて言わないであげて欲しい。
そのお返しがここに来るまでの過程に想いを馳せてみて欲しい。
「うわああああ!」とか「ああああああ!」とか思いながら選んだのかも知れないと想像してみて欲しい。
ジョン・レノンも言っていた。
「想像してごらん」と。
それでもあまりにもダサかったら、喜んで受け取ったのち、あなたのお気に入りのカフェやお店に連れて行こう。
「私、ここが好きなの」と言ってとびきり可愛くて美味しいものを食べたらいいと思う。
私?
私はホワイトデーないよ。
だって誰にもチョコあげてないんですもの。
あっ、でも自分にチョコ買ったから、ホワイトデーに自分へお返ししてもいいってことか!
ホワイトデー、明後日だ・・・
・・・うわあああああああ!