ぶっちゃけ日本の財政ってヤバいの?

今日は参議院議員選挙の投票日ですね。

私達の生活に直結する部分としては、増税年金の話題などがあると思います。
やはり少子高齢化が本格化する中で、国の借金が増えている、財源が足りないなどと言われると、
じゃあ増税も仕方ないのか... とも思ってしまいます。
とはいえ、実際のところ財政はどれくらい「ヤバい」のでしょうか?
日本はこのままで大丈夫なのでしょうか?

せっかくなので、この機会に日本経済の実態について考えてみたいと思います。

日本の借金は本当にヤバいのか

「日本の借金がどんどん増えている」という話をよく耳にしますが、実際のところ、この問題はどれくらい深刻なのでしょうか。

ここでいう借金とは国債、つまり政府が借りているお金のことです。
この借金を返せなくなると、デフォルト(債務不履行)となって混乱状態に陥るわけですが、
有名な2015年のギリシャ以外にも、利息のカットや返済の先延ばしを強いられた例は、今世紀に入ってからも中南米を中心に頻発しています。

では、日本も同じように財政が破綻する可能性があるのでしょうか。
日本の国債残高は毎年着実に増加しており、3月末時点で1,000兆円以上とされており、
対GDP比での債務残高は、主要先進国の中で断トツのワースト水準になっています。

これは確かにヤバいのでは...... という気もしてきます。


日本のデフォルトはあり得ない

結論から言えば、日本が財務不履行となることはないと思ってよさそうです。

現在の日本国債(長期)の保有者は、日本銀行(約46%)と民間銀行等(約40%)が大部分を占めていて、海外投資家のシェアは約7%しかありません。
つまり、借金の9割以上は国内で賄われているのです。
(ただし、民間銀行等に含まれる投信・証券などの一部は海外勢も購入しているので、厳密にはもう少し海外比率は高いはずです。)

例えるなら、家族の中でお金を貸し借りしているようなもので、
これを理解せずに「日本の借金は国民1人当たり800万円」などと表現して、無駄に不安を煽るのには違和感があります。

しかも、日本国債は全て円建てで購入されています。
どういうことかというと、いざとなれば必要な分だけ新たに円を発行すれば政府はお金を返すことができるということです。

これが、EUの一員で自国通貨の発行権を持っていなかったギリシャとは明確に異なるポイントです。
もちろん、通貨の新規発行には一定の制限を設けていますが、少なくとも「借金を返せなくなる」ということはまずあり得ないのです。


考えられる財政破綻のリスク

近年注目を集めている現代貨幣理論(MMT)という経済理論では、
自国の通貨を発行して借金できる国が財政破綻することはないと主張されています。
だから、財政再建のために政府の支出を減らしたり税や保険料の国民負担を増やしたりする必要はなく、どんどん借金をしてカバーすればいいと言うのです。

むしろ、日本のような財政構造の国の場合、政府が赤字を縮小することばかりに専念しようとするのは危険です。
シンプルに捉えれば、政府の赤字の分だけ国民の資産になっているわけですから、
政府が急に財政赤字を減らせば、企業や家庭の資産が減ってしまい、景気も悪化して、結果的に税収も減るというシナリオが考えられます。

逆に考えれば、政府が国民から借金をするほどに景気は良くなるはずです。

それで実際に景気が良くなっているかというと、肌感覚としてはそれほど良くなっていないように思いますが、これについては他の様々な要因も踏まえて議論することにしましょう。

ともあれ、やはり日本政府が借金を返済できなくなることはなさそうです。
であるとすれば、可能性がある財政破綻リスクとしては、お金を返せなくなることではなく、むしろお金を借りれなくなることでしょう。

しかし、この点についても新規通貨発行によってカバーできるようです。
日本を含む多く主要国では、通貨を発行する中央銀行が、直接が政府から国債を購入することを禁じていますが、
アベノミクスの柱である「異次元金融緩和」の実態はこれにあたります。
黒田日銀総裁は、MMTには全く賛同できないと述べていますが。


無限に円を刷りまくればいいのでは

ということはやはり、どんどん新たに通貨を発行して、どんどん国債を発行すればよく、財政破綻を心配する必要もないということになります。

しかし、そもそもなぜ中央銀行による直接の国債購入が禁じられているかというと、それはインフレを制御するためです。
インフレというのは、つまり物価の上昇です。

新規発行によって流通する円の量が増えれば、1円当たりの価値が下がるので、相対的に物価を上昇させインフレになるはずです。

緩やかなインフレであれば、物価の上昇に伴って所得や土地・証券などの価格も上昇するのでそれほど問題ではないのですが、
急激なインフレになると、一般消費者の生活は大きな打撃を受けます。

一部で特に懸念されているのは、ハイパーインフレのリスクです。
ハイパーインフレというのは、もはやインフレという概念では説明ができないほど急激に物価が上昇し、経済が成り立たなくなる現象を指します。

今まさにハイパーインフレの状態にあるベネズエラでは、物価上昇率(インフレ率)が前期比で250万%を上回っているそうです。
2019年中には、インフレ率が1,000万%に達するとの予想もあります。
300円で買えたコーヒーが、1年後には3,000万円になるということです。
ちょっと意味が分からないですね。

しかし、こうしたハイパーインフレも、日本では心配する必要はないでしょう。
ハイパーインフレは、戦争や革命などによって国家が崩壊の危機に陥り、国民が通貨の発行主体である政府を信用できなくなった場合に起こります。

本来、貨幣というのはそれ自体が価値を持つものではないのですが、
発行主体(つまり国)がその交換価値を保証し、それを使う人達がその価値を信用することで、現代の貨幣経済は成り立っています。
国家の存続自体が危うくなれば、必然的にその国の貨幣はただの紙切れに戻るため、ハイパーインフレの状態になります。

ともかく、貨幣そのものの信用が無くなることで起きるハイパーインフレという異常事態は、貨幣流通量の増加に伴う相対的な貨幣価値の低下によっておこるインフレとは根本的に別物なのです。

世界的には、デフレが優位な傾向にあります。
デジタル化やオートメーション化、コモディティ化によって生産コストがどんどん下がっていく中で、さらに供給過多の状態が続いているためです。

事実、2013年4月から行われている異次元金融緩和をもってしても、日本はたった2%の物価上昇ですら実現できていないわけです。
(※日銀が2年で達成するとした消費者物価指数の目標は前年比+2%ですが、それから9年が経った今でも前年比+0.7%に留まっています)

ということで、このまま日本政府が借金を増やし続けても、
戦争に巻き込まれたりでもしない限りは、今の構造のままなら財政破綻もインフレも起こらないと思われます。


そもそも日本は「赤字」じゃない

さて、ここまで日本の借金に関連して解説をしてきましたが、そもそも「赤字」なのは日本政府であって、日本という国全体では「黒字」なのです。

国全体としての収支を表す代表的な指標が、経常収支というものです。
外国とのモノ・サービス・投資の取引状況を示しています。

経常収支貿易収支サービス収支所得収支

昨年の日本の経常収支は19兆932億円で、前年比で13%減、4年ぶりのマイナスとはいうものの、依然として大幅な黒字が続いています。

貿易収支は為替や原油価格などの影響を比較的受けやすく、変動が大きい性質がありますが、全体的な傾向としては、この10年間はあまり勢いがありません。

代わりに経常黒字を支えているのが所得収支で、右肩上がりで大幅な黒字が続いています。
所得収支には第一次所得収支と第二次所得収支とがあるのですが、簡単に言うと、国外との投資取引に伴う配当や利子の収支を表します。

そして実は、日本は対外純資産(対外資産残高-対外負債残高)の額が世界一という、世界最大の債権国でもあります。
日本政府の借金は1,000兆円以上もあるとはいえ、その9割は国内から借りているだけのいわば国民の資産であって、しかも対外純資産は300兆円以上もあるわけです。
つまり、この日本の借金はちっともヤバくないのです。

経常収支のもう一つの要素であるサービス収支はわずかに赤字ではあるものの、じわじわと黒字に近付きつつあります。
サービスの内訳は、輸送・旅行・その他であり、やや赤字の水準のまま横ばいで推移している輸送・その他に対し、訪日観光客が増加している旅行については、順調に黒字を更新し続けています。
オリンピック開催もある来期には、さらにこの黒字が大きくなると見られます。

ただし、これはあくまでも「収支」なので、逆に言えば日本人の海外旅行者が増えていないという側面を見落としてはいけません。
この20年間で日本人の海外出国者数はほとんど増えておらず、やはり日本経済は停滞しているというか、元気がないなというのを感じます。

いずれにしても、日本の経常黒字は素晴らしいと言えるでしょう。
日本は貨幣の新規発行だけでやりくりしているだけの国ではないのです。
しっかりとそれを支える経済基盤があるからこそ、政府の赤字が膨れ上がっても、混乱状態になることなく生活していられるのです。


年金制度は破綻しているのか

国民にとっては、実感のない財政赤字よりも、自分の人生に大きく影響する年金問題の方が気になるところかもしれません。

少子高齢化が深刻化する中、6月頭に金融庁審議会で提出された報告書には「老後の金融資産として約2,000万円が必要」という主旨の内容があったと報道され、
SNS上では「年金制度の崩壊を事実上認めた」「年金が出ないなら納めた金を返せ」などと炎上騒ぎになりました。
大規模なデモも行われたようですが、デモをしたくらいで何かが良くなるとは思えません
まずは、この年金制度の実態を整理してみましょう。

年金は自分で積み立てた分を将来受け取る「積立方式」だと思われがちですが、日本の公的年金制度は、集めた保険料を年金を受け取っている人に仕送りする「賦課方式」です。

となると、やはり少子高齢化が進むと現役世代の負担が大きくなり、やがてシステムが破綻するのではという気がします。
しかし、積立だろうが賦課だろうが、約束した分の年金は支払う必要があるので、そのための仕組みがちゃんとできています。

実は、現役世代から退職世代に仕送りされて残った一部は「積立金」として運用されています。
厚生年金の財源の年金の内訳は、2割が国庫から、7割が現役世代の保険料から、1割が積立金からです。
今の年金の全てが、現役世代からの仕送りではありませんし、全てが積立金の取り崩しでもありません。

現在の積立金の総額はおよそ160兆円と超巨額なのですが、
この大きなお金を運用しているのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という機関です。

株式市場では「クジラ」と呼ばれるこのGPIFは、世界最大の機関投資家でもあります。
もちろん資産の運用に「絶対」はありませんから、短期的に見れば損失を出すこともあるものです。
その運用する金額の大きさゆえに、GPIFがほんの数%でも損失を出すと「俺達の金を返せ」と叩かれたりもしていますが、
長期的には安定して利益を上げており、2001年~17年の運用益の累積収益は約63兆円にもなります。

この積立金は、少なくともこの先100年間は尽きない計算で運用されており、少なくとも、今の現役世代が引退した後に年金がもらえないという事態にはならなさそうです。

老後のために自ら資産を運用していくことは確かに重要です。
それ以上に、より稼げるようになるために新たにスキルを磨くとか、より長く働けるように健康に気を遣うとか、そういうことの方が大切かもしれません。

それでも、この国はそういった自己責任論を全員に押し付けるほどには危機的状況に陥っていないと思っていいでしょう。


この閉塞感の正体は何か

日本の財政は、数字的には思ったよりも大丈夫そうだということが分かりました。
とはいうものの、やはり経済の閉塞感・停滞感があるのは否めません。

中国をはじめとする諸外国の急速な成長に、既に日本は追い越されているような感じがあります。
自動車や家電といった製造業も、かなり厳しい状況になっていると言えるでしょう。
この20年間、教育も働き方も他の様々な社会システムもほとんど変化していません。
生産性の水準も、主要先進国の中では非常に低い水準です。
現金比率が異様に高い上に、稚拙なセキュリティレベルのナントカPayが乱立しまくっていてカオスです。

やはり一番のリスクは、少子高齢化です。
生産年齢人口が減少すれば税収は減りますし、経済競争力も落ちます。
社会保障医療・介護・年金)に必要な政府支出も、増加の一途です。

10月に予定されている消費税増税も、①借金を返すため②社会保障制度を維持するためという名目です。
消費税は他の税よりも景気変動の影響を受けにくいので、安定した財源とされているため、増税のターゲットとなりました。

「借金がこんなに多いのでは増税もやむなし」と容認されているようですが、前述したように、日本の場合は引き続き借金で賄えばいいはずなのです。
消費に対して税を課して、それで経済が活性化するわけがないでしょう。

海外の付加価値税の場合、生活必需品は非課税となっている国も多く、庶民の生活への影響は抑えられていますが、
今度の日本の中途半端な軽減税率は、ただ現場を混乱させる以外の何物でもありません。

消費税に限らず、法人税も所得税も軽くすべきだと思います。
追加の借入も経済の成長も見込めないのなら、社会保障のため増税は仕方がないかもしれないですが、
税率を下げることで企業や家庭の収支を改善し、それによって経済が活性化すれば、結果として税収も増えるという好循環が期待できます。

とにかく、「お金が必要だから税金を増やします」という短絡的な話ではなく、もっと根本的に社会や経済の構造を変えるような施策を考えていかねばなりません。


本質的な課題はどこにあるのでしょうか。
我々は、今何ができるのでしょうか。

という議論をもっとしたいのですが、まだ考えがまとまっていません。
また別記事で考察してみます。

こういう話を盛り込んだ経済学の本も、今度Kindleで出版するつもりです。
年内には完成させたいと思っていますが、正直分かりません。

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