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AI&音声検索の時代のWEBに不可欠な『Yext』とは【ONWARD18レポート】

10月23,24日に、米ニューヨークで開催されたYext社のカンファレンス「ONWARD18」に参加してきたので、レポートします。

〔追記(2018/12/18)〕
▼イベントのハイライト動画も公開されたので、是非ご覧ください▼

「デジタルナレッジマネジメント」を手掛けるYextとは?

本題の前に、まだ日本での知名度があまり高くないYextという会社について、簡単に説明しておきます。

Yextは、2006年にHoward Lerman氏(現CEO)によって設立されたデジタルナレッジマネジメントのリーディングカンパニーです。
アメリカ以外にも、ヨーロッパや中国等に複数の拠点を構えるグローバル企業で、2017年にはNY証券取引所に上場しています。

2017年7月には日本法人も設立され、セールスフォース日本法人社長などを務めた宇陀栄次氏が、代表取締役会長兼CEOに就任しています。

"テジタルナレッジ"とは、営業所の名前・住所・電話番号・営業時間・写真、イベント・キャンペーン、メニュー・製品情報など、
ビジネスに関するインターネット上の様々な公開情報を指します。

Yextが提供するソリューションをザックリまとめると、
①あらゆるデジタルナレッジ
②連携する世界150以上のソーシャルネットワークに、常に正しい情報を直接フィードする
というサービスになります。

日本ではまだ導入が少ないですが、Fortune 500 の3分の1以上の企業が採用しており、今後は日本でも広く利用されるようになるだろうと思います。
ホテル・飲食店・小売・金融・自動車ディーラー等、営業拠点を多数有するビジネスを中心に、幅広い業種で導入されているサービスです。


三方良しで唯一無二のソリューション

せっかくなので、もう少し詳しく説明しておきます。

従来のインターネットでは、検索窓にキーワードを入力すると、
検索エンジンが膨大な情報の中から関連度の高そうな情報を探し出し、候補をリスト化して表示します。
検索エンジンは常に進化をしていて、世界中に散らばった雑多なデータの海の中から、ほんの1秒もかからずに候補をリストアップできます。
最近では、ユーザーひとりひとりに合わせてパーソナライズした情報を表示することさえあります。

しかし、その検索結果には、必ずしも"正しい情報"が表示されるとは限りません
なぜなら、Webの海に散らばっている構造化されていない情報たちは、コンピュータにとってはただの文字列の集合に過ぎず、
それを何とか解読して、「推測」することしか叶わないからです。

そのため我々ユーザーは、その検索結果のリストから、さらに自分が求める"正しい情報"を「選び出す」という作業を求められてきたのです。

しかし、情報提供元である企業は、常に全てのサイトに自分達の正しい情報を出したいし、
情報を公開するプラットフォームやメディア(パブリッシャー)としても、正しい情報を届けたいし、
情報を受け取るユーザーも、もちろん、検索から一発で正しい情報を手に入れたいと思っています。

そこで登場するのが、Yextです。

企業の一次情報をクラウドで管理し、提携するパブリッシャーに構造化された形で直接それを届け、結果としてユーザーに正しい情報を公開するという、
三方良しで、かつ唯一無二のソリューションを提供しているのです。


Webは1995年から変化していない

さて、前置きが長くなりましたが、イベントレポに入りましょう。
今回参加してきたのは、Yextが年に1回行っているカンファレンス「ONWARD18」です。
10月23~25日に、米ニューヨークのJazz at Lincoln Centerにて開催されました。

CEOのHowardによるオープニングの後で発表されたのは、
新製品『brain』『think』、そして『pages』のアップデートです。

「Webは1995年から変化していない」と言います。

誕生から20年以上が経った今でも、Webは、ただの"巨大なドキュメントの集合"に過ぎないのです。
ユーザーは、その大量のドキュメントの中から求める正しい情報を探し出さなくてはならず、そのUXフローはほとんど変わっていないのです。

しかし、そんなWebも今や大きく変化しつつあります。

検索エンジンの役目は、チャットボット音声アシスタントといった対話型AIに取って代わられます。
どこか行きたいお店があれば、「Hey, Siri」や「OK, Google」とスマホに話しかけるだけで、
地図上に位置を表示すると同時に、そのお店の写真や営業時間、電話番号などが瞬時に返ってきます。

もはや、ユーザーが情報を求めてWebの海に深く潜っていく必要などないのです。

検索エンジンやAIアシスタントが、「ただ1つの正しい情報」を即座に返すためには、シンプルかつ簡単な形に構造化されたデータをWeb上に整理しておく必要があります。
そして、それをサポートするのがYextだったわけです。


しかし、これまでのYextのソリューションは、主に位置情報(ロケーション)を起点にしたデータベース設計で、それに付随する情報を扱ってきました。
そのため、ホテルや飲食店、小売店、営業所などの複数拠点を抱えるビジネスを中心に利用されているのが実態です。

今回発表された新製品『brain』は、そのロケーションを中心に据えるという制約を取り払います。
位置情報だけでなく、イベント・メニュー・製品・人材・経歴・連絡先など、ビジネスに関するあらゆる情報を、
それらがどのように関連しているかというネットワーク情報を中心に捉えます。

決められた形に情報を置く「箱」は、情報を臨機応変に繋いで柔軟な形で理解するAIの「脳」へと進化し、
それはつまり、構造化されたデータベースではなく、ネットワーク化されたブレインで情報を管理できるようになるというのです。

そして、この『brain』をベースにした回答エンジンが、新製品『think』です。

例えば、『think』を搭載した医師検索サイトがあるとしましょう。
「腰痛が専門のイタリア語が話せる近くの医者」と検索すれば、条件に合致する医者を瞬時にリストアップします。
もちろん、住所や写真、連絡先などの情報と一緒に。

複数条件検索をするのに、下図のように、いくつもの検索窓に丁寧にキーワードを打ち込んで絞り込む時代は、もう終わったのです。
自然言語を用いて、AIと対話するように直感的に絞り込んでいきます。

加えて、『pages』のアップデートも発表されました。

『pages』は、これまでYextが提供していたプロダクトの1つで、
Yextのプラットフォームに登録されている情報を元に、自動でホームページを生成するというものです。
それは、現代のニーズに合わせたモバイルファーストのデザインが特徴のひとつではありましたが、
それ以上に、AIが情報を拾い上げやすいように、シンプルに構造化された情報をすることに重きを置いている印象があります。

現状は、ページのデザイン・構築をYextに委託する形のみですが、
今回のアップデートで、多数のテンプレを用いてセルフサーブの形で構築することが可能になります。
また、『brain』『think』をベースにしたAIページの作成もできるようになるとのことです。

これらの新製品・新機能の発表をもって、ロケーションベースのビジネスだけでなく、
「製品」や「人」や「イベント」など、より幅広い種類の情報を柔軟に扱うことができるようになるため、
Yextのカスタマーの業種も、さらにバラエティに富んだものになるだろうと思われます。


ほとんどは音声検索+地図アプリで完結する

今年は、スマートスピーカーが一般にも広く普及するなど、音声アシスタントAIが身近な存在になった年でした。

今回のイベントでも、ボイスファーストの世界が、既にかなりのところまで来ていることを改めて感じました。
しかし、その進歩と変化は、事実、アメリカと日本との間に半年~数年分の差があります。

イベントでは、Amazon Alexaのエバンジェリストの方が登壇し、
音声AIが発音された自然言語を聞き取り、単語を認識し、前後の文脈からインテント(意図)を理解する構造や、幼児教育・シニア層との相性などについてスピーチをしていただけました。

僕自身も、iPhoneやAmazon Echoで音声アシスタントをよく利用しますが、日々その認識の精度は向上していて、スキルの幅もどんどん広がっているのを実感しています。


さて、そんな音声検索の時代を見据えて、ものすごい勢いで機能を充実させているのが地図アプリです。

今回登壇したApple Mapの方が紹介されたApple Business Chatもその一つです。
マップ上でお店やホテルを検索したときに、そのままその画面から予約やお問合せのチャットが行えるというもので、現在はアメリカの一部の企業で運用されているそうです。


ついでに、Google Mapの方もチェックしておきましょう。

下の図は、Google MapアプリでブルックリンのDenny’s(Yextのクライアントのひとつ)を調べた結果です。
住所や電話番号、写真(上に隠れています)、WebサイトURLはもちろん、「Menu」という項目もあります。

「Menu」をタップすると、マップアプリ上でメニューとその説明を見ることができます。
日本ではまだほとんど利用されていない項目ですが、わざわざ店舗HPを見に行かなくてもメニューを確認できるのは非常に便利です。

最近のGoogle Mapは、近くで開催中・開催予定のイベントを探せたり、
周辺の飲食店を、評価や価格帯でフィルタリングしながら比較出来たりと、数年前にはできなかったことがいくつも可能になっています。

他にはこんなのも。

写真もレビューも、商品情報も人の情報も、電話もチャットも地図アプリ上で完結する、
そうなると、わざわざ公式HPや比較サイトを利用しなくてもよいのでは...と思える場面もたくさんありそうです。

スマホに話しかける→ 地図アプリで写真やレビューを確認する→ 予約する→ アプリの案内に従ってそこに行く

というように、どこかに行くためにスマホを使う場合には、
音声検索→地図アプリの起動 のみで完了してしまうのです。
必要なのは数回のスワイプだけで、文字入力作業は一切不要です。

今後も、AppleやGoogleの地図アプリは、さらに大掛かりなアップデートを予定している上に、
我々(特に日本人)の知らないところで、ひっそりとテスト・追加が行われている新機能も多々あるようです。
今後は、IoTARの発展によって、地図をベースにして、リアルとバーチャルがより自然に融合していくでしょう。

位置情報は、単に時刻と場所を表す「点」から、移動・経路により「線」になり、それらに付随するソーシャル情報が加わって「面」になります。
位置を起点にして、リアルとバーチャルはクラウドを介して繋がり、裏側のAPIネットワークを通じて、地図アプリは、データドリブンで連鎖的に関係性を広げていきます。

地図アプリは、もはやただの「地図を表示するツール」ではなく、場所・ヒト・モノ・コトが呼応するプラットフォームへと変化しているのです。


「指数関数的なテクノロジーの進化に対応するのが重要だが、それはとても難しいことでもある。Yextは、そのどんな変化にも柔軟に適応していく助けになる。」
と、共同創業者であるBrian Distelburger氏は語ってくれました。


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