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「恥の文化」に生きる日本人が身につけたい判断の軸『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』◆読書メモ2019#7

今年は、読んだ本の感想を全てnoteにメモしていきます。
2019年7冊目は、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』です。

こちら、既に読まれた方も多いかもしれません。
山口周さんの著書は以前にも一冊読んだことがあって、非常に面白かったのですが、今回もそれに劣らぬ良書でした。
経営者やグローバルエリートを目指す人でなくとも、全てのビジネスパーソンが読んでおくべき本だと思います。

本書における「美意識」とは、経営における「真・善・美」を判断するための認識のモード、ということになります。

つまりそれは、「論理」に対する「直感」であり、「理性」に対する「感性」であり、「サイエンス」に対する「アート」であります。

多くの人が分析的・論理的な情報処理スキルを身につけ、「他人と同じ正解を出す」ための方法論が一般化した結果、
「正解のコモディティ化」「差別化の消失」という問題が生じているのが現代です。

それと同時に、テクノロジーや経済・社会が急速に大きく変化する中で、世界は非常に不安定・不確実・複雑・曖昧な状況になっており、
これまで有効とされてきた論理的で理性的なアプローチだけでは通用せず、意思決定が膠着してしまうという問題も発生しています。

さらに、「システムの変化が先、ルールの整備が後」ということも珍しくない変化の速い今の世界で、
明文化されたルールだけを拠り所にして判断をしていては、その急激な変化に遅れを取ることになり、
とはいえ、「明文化されていないから何の問題も無い」という発想で行動してしまっても、大きく倫理を踏み外すことになる可能性があります。

以上のような背景で、「美意識」に基づいた意思決定スキルの重要性が高まっており、
しかし、それは何もかもを全て非論理的な勘によって判断を下してしまえばよいということでは決してなく、
あくまで「サイエンス」と「アート」のバランスが重要なのであり、
あるいは良心や道徳心というものにも耳を傾けながら、時に「超論理的」とも言えるような判断をしていかなければならないのです。

その「美意識」を信じられないのは、自分の「美意識」に自信がないからでしょう。
自分の「美意識」の声を聴く方法を知らないからでしょう。
なぜなら、それを鍛えていないから。じゃあ、鍛えましょう。

というのが、本書の趣旨です。


本書で紹介されている、ルース・ベネディクトによる指摘は面白かったですね。

世界の国は「罪の文化」と「恥の文化」に大別され、日本は「恥の文化」に類別される、というものです。
「罪」は救済されるが「恥」は救済できないというのがこの恐ろしい点で、
「恥」が行動を規定する最大の軸になる日本人にとっては、
自分の属する組織における「世間の常識」に盲目的に従うことが最も賢明だということになります。

実際、この文化は、どうやら現代社会と相性が悪いようです。
ここから脱却するための方法は2つあって、
ひとつは、異文化体験によって「狭い世間の掟」がおかしいことを見抜けるようにすること、
もうひとつが、まさに「美意識」、つまり、「世間の目」ではなく「自分の内側」の方に物事の判断軸を持つということになります。

決して、「日本はダメ、欧米は素晴らしい」と嘆いているのではなく、
それらの根底にある価値観や背景を本質的に理解し、
自分の中と外にある「真・善・美」を、もっと純粋な目で見てみるべきなのではないかと、そういう気付きを与えてくれる一冊でした。

タメになる度 :★★★★☆
文章の読み易さ:★★★★★
分かりやすさ :★★★★☆
総合オススメ度:★★★★★


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