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この夏に『ガールズ ラジオ デイズ 2ndシーズン』があってよかった

 2019年を代表する超現実ネットラジオ『ガールズ ラジオ デイズ』(ガルラジ)の2ndシーズンが始まっています。3ヶ月の空白期間を置き、3ヶ月分年を取り、彼女たちは帰ってきた。俺はこの夏を二つの世界で過ごしている。わかっているのか。

「ガールズ ラジオ デイズ」はラジオ番組です。アニメともゲームとも違うのでディスプレイ前に拘束されることはなく、降ってくるアイコンにあわせて指を叩きつける必要もありません。

 2ndシーズン――続編作品の成否はどこで分かれるのか。どうすれば「面白かったのにね」とか「なんで作ったの?」などと言われずに済むのか? 正答があるなら誰も失敗しない。
 あの映画は、大好きだったアニメはなんであんなことに……。そうやってうじうじしているのもいいだろう。だが忘れるな。ここはメキシコの荒野。今この瞬間もコンテンツという名のエントロピー・サボテンは増え続け、彷徨うお前を餌食にしようと狙っている。お前の食べる分を選別収穫する人間は、後にも先にもお前自身しかいない。

 続編作品成功への定石はない。だが大きなカギとして、前作で観客にウケた要素つまり作品の”本当の強み"を作り手が正しく理解し、再演・超越できるかどうか、をあげることはできる。観客が続編作品に"前作で面白いと感じた要素の再体験"を期待することは、意識の有無とすら無関係な生理現象だからだ。

 ガルラジ2ndシーズンはその前提をクリアした。ガルラジは”本当の強み”への期待に見事応え、さらにパワーアップ!した激ヤバコンテンツとして再開した。

リアルタイム性の強化

 ガルラジでは現実世界と同じ速さで時間が流れる。各番組は30分の生放送、そして隔週で更新されるため物語には常に2週間の間隔が空く。此岸が年を越えれば彼岸も年を越え、誕生日を迎えれば登場人物が年を取る。1stシーズン終了から2ndシーズン開始までの3ヶ月間は放送がなかったが、その間にも彼女たちの生活は続いていた。

パーソナリティの一人、二兎春花は18歳になった。手作りの温かみ。スポンサーの巨大さを一瞬忘れる。
スクショめいたあらすじ。1stシーズンの振り返りではなく、空白期間のダイジェスト。内容が重い。
空白期間には数名が誕生日を迎えたほか、中学校への進学、進級、脱ニートなど各自いろいろあった。

 劇中だけならともかく、画面外でも完全にリアルタイムという形態の作品は珍しい。作るのも追うのも大変になるからだ。
 設定を組む煩雑さ、限られた時間内で物語を展開する難しさ、観客がコンテンツに触れるタイミングの不整合……。
 それらの問題をラジオの生放送という表現手法によって突破したのがガルラジだ。

 音声だけで成立するラジオという媒体は必然的に情報量が少なくなる。さらにそこではあらゆる物事がパーソナリティの視界・経験・意識・発声を経由してのみ現れる。何もかもが一人称、主観的かつ断片的。その語りの隙間――場面の映像、空気、第三者など存在するが描かれない要素――は聴衆が想像で補完するしかない。ラジオブースにすべてを見通す神は存在しない。
 それでも、そこで語られる不完全な物事を聴衆は(基本的には)事実として受け取る。なぜか? そもそも人間同士の会話とは主観的・断片的なものだからだ。誰も他人の人生を完全に追体験することはできないが、そんなことをしなくても情報は伝達できる。人はその術を身に着けて生きている。

 だからこそラジオは完全リアルタイムの物語を描くことができる。限られた情報で物語を伝播できるラジオだからこそ、リアルタイム進行により生じる爆発的なエントロピーを現実的範囲に抑えられる。これは歴史に残る発見だ。

 ガルラジはそんな荒業を1stシーズンで成し遂げた。空白期間にも先述したTwitterでリアルタイム性という"本当の強み"を強化し続けた。そして2ndシーズンの開始……時間経過と関係性の深化を強烈に感じさせる異常空間が出現した……

空白期間における関係性の深まりを特に感じさせるチーム富士川の2ndシーズン初回。ヤバすぎる劇薬。打ち解け過ぎてなにがなんだかわからない。あともうゴリゴリに百合。

 番組は生放送だが、もちろんアーカイブで楽しむこともできる。1stシーズンも同様だ。これもまた現代のラジオらしい形態といえる。

現実との連動

 聴衆からの介入手段として、ガルラジには聴衆からのお便りという要素がある。ラジオだからだ。そして2ndシーズンのガルラジはそれだけではない。以前から言及はされていたものの明らかに持て余していた番組間ランキングが本格的に実施され……

「ガルラジ」2ndシーズンのポイントについて
7/23(火)からSTARTする「ガールズ ラジオ デイズ」2ndシーズンでは、チームごとに加算される《ポイント》をもとに、ランキングを集計します。
ラジオを聴いたり、ニコ生のアンケートに答えたり、各チームのホーム(サービスエリア・パーキングエリア)に行ったり、Twitter企画に参加したり、して楽しみながら、彼女たちを応援してください♪

< ポイントの加算方法 >
①各回のラジオ視聴者数が多い順に、5~1ポイントを各チームに加算
②各放送後のニコ生でのアンケートの満足度が高い順に、5~1ポイントを各チームに加算
③各回の番組内コーナー「今週のムチャ振り」のMVPチームに5ポイントを加算
④各回の番組内コーナー「ガルラジクイズ」で正解したチームすべてに3ポイント加算
⑤ガルラジ公式Twitterアカウントで実施する企画の上位3チームに加算
※ ガルラジ公式Twitterで実施する企画は、後日詳細を告知します。
⑥ 各チームのホーム(サービスエリア・パーキングエリア)にて配布する「チームカード」の残数が少ない順に5~1ポイントを各チームに加算

 (上記公式サイトより引用)

……さらに、いよいよ現実への浸食も始まった。

NEOPASA岡崎。高速道路だけでなく一般道からでも入れる施設だが、山中に位置し徒歩での侵入を寄せ付けない現代の要害。

EXPASA富士川。JR富士川駅から富士川沿いを徒歩30分とアクセスは比較的容易。
ルールに則れば複数箇所で収集するべきではないのだが、俺にはそもそも1チームを優勝させたいという願望がない。それに全部集めればノーカンだ。

 7/24以降、各サービスエリアを訪れ「チームカード」を入手することで好きなチームを直接応援できるようになった。聴衆からの介入手段が増設されたと同時に、実在するサービスエリアによって立つというガルラジの属性が拡充した形だ。ガルラジはこちらの世界に存在する。これはもはや事実となった。

虚構であることの強調

 ところでガルラジは生放送ではないし、ラジオでもない。配信される番組は事前に収録、編集されたものであり、この世界に実在する人物が会話をしているわけでもない。台本があり、本職の声優が演じている。ガルラジはネットラジオ風ボイスドラマだ。
 急に穿った話を始めたわけではない。そもそもガルラジは実在感の形成と虚構性の強調を両立する、デンプシーロールめいたコンテンツなのだ。

2ndシーズン初回直前には全キャスト14人を集めたニコ生特番が放送された。やはり後ろ盾と意気込みの強さを感じる。番組では「どのぐらい噛んでも使われるか」「リアルな番組に聞こえるように(リアルな番組ではあまりないことだが)ティッシュや机のノイズを入れた」などガルラジの特殊性が大いに語られた。たぶんまだ視聴可能。

 1stシーズンに存在したアフタートーク(各番組の終了後、キャストが内容を振り返るコーナー)は隔週金曜日配信の「キャストトーク」として継続する。公式Twitterではキャストのつぶやきが連日リツイートされ、前述したようなガルラジ世界の動向と入り混じり混沌とした様相が生まれている。

 詰めが甘いとかそういう次元ではない。ガルラジは明らかに聴衆の認識を混乱させることで現実と虚構の境界を曖昧にしようとしているのだ。


 ガルラジ2ndシーズンはこのようにして始まり、聴衆(公式呼称ガルラジスト)たちを混乱の渦に叩きこみ続けている。
 ガルラジが実在するのかどうか、俺にはもうよくわからない。しかし『ガールズ ラジオ デイズ』が今この瞬間も進行していることは確かだ。だからこそデイズ。だからこそ、2019年はガルラジ(公式標語)。ガルラジは30分のラジオ番組で異世界観測を実現した。俺は2019年の夏を二つの世界で過ごしている。お前もそうなれ。

「虚構の輪郭が溶けてゆく……」偶然の一致だと思いたい。それはそれで怖い。

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