スクリーンショット_2019-01-04_17

YouTube心理分析①「精神的な居場所」の欲求

YouTubeマーケターのわだっちです。
普段はYouTube関連のベンチャーでマーケターをしつつ、最近自分でもYouTubeチャンネルを始めたりしています。

そんな僕が最近大切だなと思っていることが、
「YouTubeが観られる理由を心理的に分析する」
ということです。


なぜYouTube心理分析が重要か

それは、
「YouTubeは視聴者の心理を分析しなければ、観る意図がわかりづらいプラットフォームだから」
である。

Google検索と比較するとわかりやすい。
Google検索は「意図を持って利用されるプラットフォーム」だ。
何か知りたいという欲求があり、検索ワードを自ら打ち込み、それに対して最適な解を提供するサイトを閲覧する。

利用者の意図が明確であり、それに沿った行動が見られる。
それがGoogle検索である。

対してYouTubeはどうか。
もちろん検索機能もある。その場合はGoogle検索と同じだ。
しかし皆さんご存知の通り、YouTubeでの検索流入の割合は大きくない。
(※この割合は増加していくと予想しているが、それはまた別の機会に)

それ以外の人たちは、「関連動画」など何らかの「YouTube側からのレコメンド」によって動画を観ている。
だから最初に動画を観るときに視聴者の「意図」が働いていない場合が多い。

「どうやって関連に載るか」のようなテクニカルな話は他の場で扱うとして、レコメンドでたまたま出てきた動画を観て、また別の動画も観て、古い動画も観て・・としているうちに、ファンになり、ときに熱狂的な支援者として応援したり、お金さえ使ったりするわけである。

しかしここには「意図」がない。
「なぜ好きなの?」と問うても、ほとんどの場合、「好きだから」「面白いから」「かっこいいから」など表面的な理由が返ってくるだけである。

彼らもわかっていないのである。なぜ好きなのかの「本当の理由」を。
わかる必要もない。彼らにとっては、ただ「好き」ということ以外に理由はいらないのだ。

しかし一方で、これから人気を獲得したい配信者にとっては、その無意識の部分にある心理を知ることは重要である。
意図してそこを押さえることができれば、より多くのファンを獲得することにつながるだろう。

ということで、これから何回かに分けて、「YouTube心理分析」の記事を書いていきたいと思う。


※余談1
TikTokはより「観る意図が働いていないプラットフォーム」である。
一応検索機能はあるが、おそらくほとんど使われていない。

※余談2
テレビも必ずしも「観る意図」が働いていないプラットフォームだが、YouTubeやTikTokとの大きな違いは、「レコメンドしてくれない」という部分である。
また、「精神的な居場所」の欲求を満たす点については、YouTubeなどと大きく異なることは後述する。


この先の内容

・「精神的な居場所」の欲求を満たせ
・「コミュニティ」の正体
・YouTubeが「居場所」になる
・「居場所」をつくる2つの心理的条件
・「居場所」とは「ヨコ」のつながりである
・ニッチ系YouTuberをオススメする理由
・「ただ食べる動画」はなぜ伸びるのか?


「精神的な居場所」の欲求を満たせ

第1回目のテーマは、「『精神的な居場所』の欲求」である。
これを求めて、YouTubeで動画を観ている人が多く存在する。
もちろん彼らは気づいてはいない。無意識で働いている欲求なのである。
だから「精神的な居場所」の欲求を満たせるYouTuberは、伸びやすいと言える。


「コミュニティ」の正体

普段YouTuberや企業の担当者と話している中で、「強いYouTuberの条件はコミュニティができていることだ」という話を聞くことが多い。
例えば企業からタイアップ案件を依頼するにしても、単にチャンネル登録者数の多い人よりも、「コミュニティの有無」が重要な要素になったりする。

「コミュニティ」とは「濃いファンの集合体」であり、コミュニティがあるYouTuberには「何をやっても応援してくれる土壌」がある。
だから企業側も安心して案件を任せることができたりするわけだ。

この「コミュニティ」とは何か。
もう少しわかりやすい日本語で言うならば「居場所」のことである。


YouTubeが「居場所」になる

「居場所」とは、実は「物理的な場所」のことではない。
いわゆる「居場所」になりやすい場所 ― 例えば家庭、学校の教室、友達が集まるラウンジ ― も、人によって居場所になったり、そうでなかったりする。

「居場所」とは実は物理的な場所ではなく、「精神的な場所」なのである。
ということは逆に言えば、「物理的な場所はいらない」ということだ。
YouTubeのようなネット上の空間であっても、条件さえ満たせば居場所となり得るのである。

では、その条件は何だろうか。
以下の2つの心理的要因が考えられる。


「居場所」の心理的条件①:受容

「受容されている」
この感覚が「居場所」には必要不可欠だ。

「受容」とは、無条件に自分が受け容れられる感覚、素の自分が認められる感覚、自分が大切な存在として尊重される感覚、などと言い換えることができる。

これが人間にとって大切なものであることは、説明するまでもないだろう。

あなたが過去、「ここは自分の居場所だ」と感じたことがあれば、そのときのことを思い出してほしい。
「受容されている感覚」があったのではないだろうか。

しかし「受容」にもいろいろな表現方法がある。
「あなたのことが大事だよ」と直接言葉で言うことも受容の表現だ。
しかしそれだけではない。

例えば
「自分と同じような体験をしていること」
「自分と同じ興味関心を持っていること」

それだけでも相手は、「受容されている感覚」を覚えることがある。

与える側が積極的なアクションを取らなくても「受容」は起き得る。
だから、例えばYouTubeのような場で、配信者がひとりひとりの視聴者全員に個別に、「受容」のメッセージを伝えなくてはいけないというわけではない(もちろん不可能だ)。

このとき配信者にとって大事なことは、
「自分にとって大切なことを大切だと表現し、好きなことを好きだと表現し続けること」
である。

それだけで、観ている側は「勝手に」自分が受容されている感覚になるのである。

この感覚は後に述べる「ニッチ系YouTuberをオススメする理由」につながっていく。


「居場所」の心理的条件②:共有

居場所をつくる2つ目の条件は「共有」である。
これは①の「受容」から一歩進んだ、受け手側の主体的なアクションである。

受容され、そこに居てもいいと感じたその次に人は何を求めるか。
それは、「自分の意見・感情・経験を表現し、共有すること」だ。

人は自分の内面にあるものを表現し受け止めてもらえるとき、大きな喜びを感じる。
まず「受容されている感覚」があり、そして次に「共有」に移行していく。

リアルな居場所なら、自分から語ったりイベントを企画することがあるだろうし、WEB上の居場所なら、コメントやSNSを使うなどして、視聴者から何らかのメッセージを届けるというのがあるだろう。

「共有」は「受容」に比べてハードルが高い。
「共有」は他者に否定されるなどの精神的なリスクがあるからだ。
そのハードルを乗り越えて来てもらうために、配信者側が工夫できる点は大いにある。
細かい方法論は割愛するが、「共有しても精神的なリスクを負う可能性が低い、安全な場」にしていくことが重要である。

この「共有」のフェーズを経て、「居場所」の感覚はより強固なものになる。
それによって「視聴者」は「ファン」となり、ファンが増えれば「コミュニティ」となる。
外の人からは「宗教だ」なんて言われたりもする。しかしそこにいる人にとっては、かけがえのない大切な「居場所」なのだ。


「居場所」とは「ヨコ」のつながりである

ここまで「居場所」をつくる2つの条件をお伝えしたが、これをつくっていくうえでひとつ大事なポイントがある。

それは
「居場所」とは「ヨコ」のつながりである
ということだ。

どちらの方が上で、どちらの方が偉くて、どちらの方が価値があって、、
という関係性の中では、「受容」「共有」は生まれづらい(まったく生まれないということではないが)。

あくまで対等な関係性の中に、「受容」「共有」は生まれやすい。
「自分とは違う世界の人」に自分のありのままをわかってもらえるとは思いにくいし、自分の内面的なことを伝えてみたいとも思いにくいのだ。

そういう意味で、YouTubeやSNSというのは「ヨコ」のつながりを作りやすい場である。
なぜなら誰もが視聴者にも配信者にもなれる場所だからである。
同じ立場にいる双方が「たまたま」視聴者や配信者という役目を負っているだけで、本質的にその居場所の中での立場は対等である。
だから、「受容」「共有」が生まれやすく、人にとっての「居場所」となりやすいのだ。

これがテレビだとなかなか起こらない。
「芸能人」は「すごい人」だからである。
誰もがテレビに出られるわけではない。同じ立場ではない。
だから「受容」「共有」が生まれにくく、「居場所」にもなりにくい。

そしてもうひとつ重要な点を付け加えると、配信者と視聴者の間に起きる「受容」+「共有」=「居場所」だけでなく、
視聴者同士の「受容」+「共有」=「居場所」も起きてくる。
こうなると、その「居場所」はもはや配信者のコントロールを超えて、自発的な動きを見せるようになる。


ニッチ系YouTuberをオススメする理由

ここまで、
・「精神的な居場所」の欲求を満たせるYouTuberが伸びやすいこと
・「居場所」には「受容」と「共有」が必要なこと
・「受容」と「共有」は「ヨコのつながり」から生まれやすいこと

を伝えてきた。

では、どのようなYouTubeチャンネルが、上記を満たしていけるのだろうか。

僕がひとつオススメしたいのは、
「ニッチ系YouTuber」
である。

なぜか。

「受容」は、「受容されていない」という感覚を強く感じてきた人ほど、強く求めるものになるからだ。

どういうことか。

例えば、あなたが世間一般的に見てマニアックな、あまり理解されない趣味を持っていたとしよう。
その領域に関してあなたは「受容されない」感覚を強く持つようになる可能性が高い。
そこである日、自分と同じような趣味を持つ人と出会ったとする。
とても嬉しくて会話も弾むはずだし、もしかしたら今までちょっと自分でも否定していた自分の趣味に対して、「別にこの趣味でもいいんじゃないか」と感じるかもしれない。
これが「受容」の感覚である。

ニッチ系のジャンルは「受容されない」感覚を持っている人の割合が高い可能性があるから、そういう人たちの「居場所」となりやすいと考えられる。


ゲーム実況も最初はニッチだった

このひとつの例が、「ゲーム実況」である。

今でこそYouTubeでも一大ジャンルとなっているゲーム実況だが、一昔前までは、大人でゲーム好きだと言ったら「オタク」のレッテルを貼られていたかもしれない。少なくともゲームは、社会的地位の低い趣味だった時代があった。
「ゲームなんかしてないで勉強しなさい」と親に怒られたことのある人も多いだろう。

しかしそこにゲーム実況者が現れる。

好きなゲームを楽しそうにプレイし人を楽しませている。
しかもそれでお金を稼いでいる。
メディアなんかにも取り上げられて、スターになっていく。

自分が今まで否定してきた「好きなこと」。
格好悪いもの。価値のないもの。
でも、それはもしかしたら違うのかもしれない。
もしかしたら、ゲームが好きだと言っていいのかもしれない。
好きなことを好きだと言っていいのかもしれない。

これが「受容」だ。
そして「居場所」ができる。

今でこそ「ゲーム実況」はニッチなジャンルではない。

しかし、一昔前のゲーム実況のようなジャンルはまだまだたくさんある。
もしも自分がそういった趣味や経験、意見を持っているのなら、そういうジャンルで発信していくと、誰かの「精神的な居場所」の欲求を満たせるかもしれない。
登録者数100万人超えの「トップYouTuber」にはなれないかもしれないが、絶対に離れない濃いファンたちとの「居場所」は作れる。


※余談
今の時代は幸せな時代だ。
ここまでネットが発達していなければ、ニッチなジャンルの同じような趣味を持つ人と出会うこと自体難しかった可能性があるからだ。
だから少し前までは、みんな無意識で世間でマジョリティーの趣味嗜好に合わせざるを得なかった。
しかし今の時代は、ほとんどどんなジャンルでも同じ属性の人と出会えるのだ。


「ただ食べる動画」はなぜ伸びるのか?

「受容」+「共有」=「居場所」は、趣味嗜好の領域だけで生まれるわけではない。

「ただ食べる系の動画」をご存知だろうか。
(※「大食い系」と被る部分もあるが、似て非なるジャンルである)

日本ではそこまでメジャーではないが、韓国では「モッパン」と呼ばれ多くのファンを持つ人気ジャンルである。

上の動画を観てもらえればわかると思うが、動画内容は、配信者が「ただ食べる」だけである。
もしかしたら、何が面白いのかわからないかもしれない。
しかしこのジャンルが多くの人を魅了しているのは事実なのである。

僕はこの「ただ食べる」動画の魅力のひとつに、「精神的な居場所」の欲求を満たす効果があると考えている。

「食べる」という行為は、基本的には家族や友人、恋人など、親しい人にしか見せない「プライベートな行為」である。
その姿を見せてもらえるということは、「あなたはここに居てもいいんですよ」というメッセージにもなり得る。
無条件に自分が受け容れてもらえる感覚。そう、「受容」である。

人によっては、特に会話はなくても、食卓を一緒に囲むだけで精神的な充足感を感じる人もいるだろう。
それがリアルの場から、YouTubeになったというだけのことだ。
どちらが良い悪いではなく、選択肢が増えたということなのだ。

「食べる」以外にも、こういったリアルの場で行なわれていた「受容」をYouTubeで再現するということは可能であると思う。
何か新しいジャンルを見つけたらここでも追記していきたい。


・・・

ということで、YouTube心理分析の第1回目として、「精神的な居場所」の欲求をテーマに書いてみました。

皆さまの活動のヒントになったなら幸いです。

もしよければ、TwitterでRTやコメントなどしていただけると嬉しいです!
今後書いてほしいテーマなどもお寄せください。
お読みいただきありがとうございました。

サポートしていただけると大変励みになります(100円〜)。 今後のYouTube関連の活動で皆さまによりお役に立てるよう活用させていただきます。