【MIA】MLBの新たな顔!?Chisholm Jr.の1か月を振り返る
日本中を熱狂の渦に巻き込んだWBC。日本が準決勝・決勝を戦ったローンデポ・パークは連日多くの観客が入り球場を熱気の渦に巻き込みました。
この球場を本拠地にしている、我がマイアミマーリンズは同地区にメッツ、ブレーブス、フィリーズという強豪がいる中、15勝13敗と勝率5割以上をキープ。特に1点差の試合では負けなしと、チームとしての粘り強さが出てきており、今年はひょっとして…と期待させてくれるチームになっています。
奮闘を続けるマーリンズですが、一方で人気のなさは今季も相変わらずで、平均入場者数は約1.3万人、MLB全体29位となっています。
もはや慣れてしまった感もあるのですが、アウェーチームのファンの歓声の方が大きく、チームがピンチのときは委縮しそうな雰囲気になったりもするんですよね…
人気がないが故か知名度の高い選手も多くないマーリンズですが、ライト層の方でも知っている人が多いと思われる選手が2人います。
1人はSandy Alcantara。昨年、満票でサイヤング賞を獲得した絶対的エースです(今季はまだ調子が悪いですが…)。
そしてもう一人が、Jazz Chisholm Jr.です。
昨シーズンは怪我によって後半戦を欠場したものの、自身初のオールスターに選ばれた他、有名ゲーム「MLB the Show」のカバー選手にも選ばれました。
奇抜なファッションや髪型でも注目を集めており、普段あまりMLBを見ない選手でも名前を聞いたことくらいは、もしかしたらあるのではないでしょうか。
そんなChisholm Jr.は今季、センターにコンバートという新たなチャレンジを続けています。
まだ開幕して1か月と少し気が早いですが、今季どのような活躍をしているのか、振り返ってみたいと思います。
Jazz Chisholm Jr.とはどんな選手?
そもそもChisholm Jr.ってどんな選手よ?という方に、さらっとですがまとめています。
Chisholm Jr.は数少ないバハマ出身のMLBプレイヤーです。2015年にダイヤモンドバックスと契約し、2019年にZach Gallenとのトレードでマーリンズに移籍しました。
尚、そのGallenはマーリンズが2017年オフにファイヤーセールを実施した際、Marcell Ozunaを放出する際に獲得した4選手の1人。ちなみにそのうちの一人は昨年サイヤング賞を受賞したSandy Alcantaraでした。
当時は批判の多かったファイヤーセールですが、結果的に現在の投打の柱を獲得できた為、成功のトレードだったと言えるでしょう。
2021年に同じくセカンドのレギュラー定着を目指すIsan Diazとの競争を制し、開幕ロースターをつかみ取ると、持ち前の本能むき出しなプレーと、美しいスイングから放たれる本塁打を武器に頭角を現し、上述の通り、2022年にはオールスターにも選出されました。
↑ホームイン時のバスケのユーロステップは定番パフォーマンスです
↑このインハイを救い上げてのHRを得意としており、見ていて惚れ惚れする打ち方です。
守備では主にセカンドを守り、圧倒的な身体能力を武器にファインプレーを連発。21年、22年ともにDRS(守備防御率)はプラスを記録しています。
しかし今季からはLuis Arraezが加入したことで、センターへコンバート。
センターを守るコア選手の獲得という、ここ数年のマーリンズの課題を彼のコンバートによって解決する形となりました。
これまでセンターを守ったことがなかったため、今季はスプリング・トレーニングから精力的に守備練習を行っており、ゴールデングラブ賞を取りたいとメディアにも語っています。
貪欲なプレーが故に、怪我も多い選手ですがチームにとって走攻守すべてにおいて欠かせない存在です。
守備
そんな初体験のセンターの守備に挑んでいるChisolm Jr.の主な守備指標は以下の通りです。
DRSやOAAは積み上げ式の数値で、サンプル数の少ない現時点ではまだ何とも言えないところもありますが、大きく足を引っ張ってはいないようです。
続いて、打球に対して如何に早く、正確に到達できているかを示すJumpという値は1.5。これはMLB全体14位の数値で、MLB上位15%に位置します。
内訳を見てみると、Reaction:0.9, Burst:1.1, Route:-0.1となっています。
持ち前の身体能力を活かすことで落下地点まで最短でいけなくとも、打球を処理で来ている、というところでしょうか。
個人的な感想に近いですが、シーズン当初はふらふらしながら打球を追っていたのが、最近は慣れて来たのか、外野手らしい動きをしながら取り始めていて、今後さらなる成績の飛躍が望めそうです。
最後に、難易度別の打球をどの程度アウト/ヒットにしているかを示しているのが下表になります。
横軸が打球までの距離、縦軸が打球の滞空時間となっており、右下に行けば行くほどアウトにするのが難しい打球となります。
①のような、捕球確率99%とされる打球の判断を誤り、結果的に2塁打にしたり、OAAの対象となる打球ではないのですが、打球を前に止めれず長打にしたりしていました。
一方で、②のような、捕球確率30%の難しい打球も対応できており、シーズン当初に懸念していたような守備指標が大幅にマイナスになる、ということはなさそうです。
攻撃
現時点での主要な打撃成績は以下の通りです。
シーズン序盤はイマイチ波に乗れていない印象がありましたが、ここ5試合で23打数9安打2本塁打。徐々に調子を取り戻しているようです。
ここまでチームトップタイの5本塁打を放っているものの、例年以上に三振率とWhiff%が高いことが気になります。元々空振りの多い選手でしたが今季は顕著で、それぞれMLB下位3%、4%に位置しています。
球種別にみてみると、下表の青線のように、今季はスライダーやカーブ等の球種が含まれるBreaking系のボールに対しての空振り率が57.7%。昨年は39.4%だったので、約20%も上昇しています。
4シームや2シーム等が含まれるFastball系は空振り率に大きな変化がなく、かつ打率も.302と高い水準(昨年は.245)であることから、Breaking系のボールにいかに対応するかが今季のカギになりそうです。
走塁
ご存じの通り、今季から導入されたピッチクロックに伴う牽制の回数制限、ベース拡大によって、盗塁が成功しやすい環境となっています。
実際、近年低下傾向だった1試合当たりの盗塁企画数は今季大きく増加し、またその成功率も4%ほど向上しており、盗塁が試合に与える影響は大きくなりつつあると考えられます。
Chisholm Jr.は21年に23盗塁を決め、リーグ4位。22年は後半戦を欠場したものの12盗塁を決め、前半戦だけで見るとリーグ9位でした。
そして今年はリーグ2位の11盗塁(失敗1)。シーズンが進むにつれて、打順が当初の4番から1番に固定され始めたこともあり、直近10試合で6盗塁を決め、持ち味を生かし始めています。
(ちなみに、昨年盗塁王のJon Bertiはまだ4盗塁…)
まとめ
いずれもまだシーズン1か月しか経過していないため、まだまだ振れ幅がありますが、今年のChisholm jr.は、
・センターの守備は思ったより悪くない
・打撃は相変わらず空振り多い。特に変化球の空振りが多いのが不安
・ルール変更の恩恵もあってか、足は存分に活かせている
というところでしょうか。
最後に、破天荒なイメージのあるChisholm Jr.ですが、根はまじめであることがわかる記事を。
今季より、Skip Schumaker監督に手渡されたノートを活用して、相手投手の特徴を事前にチェックし、試合中もどのような攻め方をされたかなどを随時記入しているようです。
その甲斐あってか、4/18のジャイアンツ戦ではノートを活用して投手の攻めを予測し、見事3ランを放ったとのことです。
派手な行動で勘違いされやすいかもしれないですが、誰よりも熱心に野球に取り組んでいるであろう、Chisholm Jr.の活躍に今後も注目してみてください。(ぜひマーリンズの試合を見てみてください…)
※成績、データは全て日本時間4/30時点
※ヘッダー画像は公式Twitterより引用
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