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【MIA】その実力は本物か⁉得失点差から見る今季のマーリンズ

"-17"

この数字が何を示すか、お判りでしょうか。
これは我らがマイアミ・マーリンズの現時点(日本時間6/25終了時点、以下同様)での得失点数を表しています。

得失点差はマイナスなのに…

今季のマーリンズは開幕前の多くの予想を裏切り好調で、44勝34敗で貯金10を稼ぎ出しています。
そんなマーリンズが現在得失点差を見てみると-17。ピタゴラス勝率は.474となります。

ピタゴラス勝率の根本的な考えとして、いわゆる投打がかみ合った試合(3-2で勝利、1-0で勝利とか)は偶然の部分が大きく、試合単位で見ずに、そのチームのトータルの得点数と失点数を見ることがそのチームの真の力を示しているとされます。
つまり、得失点の結果で考えるとマーリンズの実力では本来借金生活をしていてもおかしくない、ということです。
それなのに、下表のようにマーリンズの勝率はMLB全体8位。マーリンズより上位に位置するチームはいずれも得失点差でプラスを記録しています。

球団別勝率、ピタゴラス勝率

そして、「実際の勝率 ー ピタゴラス勝率」の値は0.090とMLB全体でトップの乖離値です
この乖離の要因は、一般的に僅差のゲームに勝利できていることで生じるとされます。確かに今季のマーリンズは僅差のゲームに強く、特に1点差ゲームは19勝5敗と高い勝率を記録しています。
本来負ける可能性もあった僅差のゲームを確実に拾えている
ということになるでしょう。
また、上述のように本来の実力とは異なるとされるので、現在の勝利は偶然によるもの。今後は揺り戻しによって勝率が下がり、本来の勝率(ピタゴラス勝率の値)に近づくとされています

では、今のマーリンズの勝利は偶然で、この後はズルズル負けてしまうのか…?
個人的にはそんなことはないと思っています。以下の表はマーリンズの月別得失点率となります。3/4月は-35だった得失点差が5月は-10、そして6月には+28とついにプラスを記録しました。得失点差が大きく改善しており、
偶然勝てていた5月から、勝つべくして勝つ6月だったとも言えるのではないでしょうか。
勿論、相手チームとの巡り合わせであったり、たまたま調子が良かっただけ…ということもあるかと思いますが、勝てる試合を確実に勝てるようになったのは昨年と比べて大きな成長だと思います。

マーリンズ月別勝率、ピタゴラス勝率

好調の要因を考える

見事6月は得失点差がプラスになったマーリンズ。その要因を探るため、簡単にですが野手と投手(先発/リリーフ)で分けて見てみます。

野手

今季から加入したLuis Arraezが打率4割を記録する大活躍するほか、Jorge Solerの復活、Bryan De La CruzJesus Sanchezの活躍などがありますが、得点能力を示すwRC+は91(3/4月)→102(5月)→98(6月)とリーグ平均~平均以下の得点能力となっています。
原因としては今季から加入したJean Seguraの不振などが挙げられます。開幕から調子は上がらないままIL入りしたJazz Chisholm Jr.もそろそろ戻ってくるので、彼らの巻き返しに期待したいですね。

昨年のwRC+は101(3/4月)→99(5月)→103(6月)と、実は今年とあまり変わりません。但し、その後は73(7月)→66(8月)→90(9/10月)と目を覆いたくなる数字でした…

先発投手

エースSandy Alcantaraの不調、Jony CuetoTrevor Rogersの長期離脱、つい最近はEdward CabreraもILする等、思い描いたメンツをそろえられていませんが、防御率はリーグ4位、FIPに至ってはリーグ1位と大奮闘
月別で見ても6月に大きく防御率、FIPが上昇しており、6月の得失点差がプラスへの転換に大きく貢献しています。
特にトッププロスペクトのEury Perezの活躍は素晴らしく、8試合で防御率1.54。今やいなくてはならない投手の一人となっています。

先発投手の月別防御率/FIP

リリーフ投手

先発投手ほどの奮闘とは行かないものの、充分チームを支えていおり、防御率はリーグ5位、FIPは6位となっています。
月別で見ると、3/4月からの改善は見られますが、先発程の劇的な改善はないように見えます。

リリーフ投手の月別防御率/FIP

ただし、選手単位で見ると好不調の波があることが見えてきます。

リリーフ投手別 月別防御率(5イニング/月の選手のみ表示、太字は防御率3.00以下)
リリーフ投手別 月別防御率(Devin Smeltzerは非表示)

年間を通して安定している投手がいない中、各月で好調な投手が中盤~終盤の試合を作ってくれたと思います。6月で言えば、Andrew NardiDylan FloroSteven Okert(現時点で先発に回っているBryan Hoeingは除く)が好調と思えます。
実際、Nardiは6/25のPIT戦にて延長に登板し、3者連続三振を奪うなど素晴らしい活躍を見せました。
その試合で1点差の9回に失点してしまったTanner Scottや、同じく6/24の試合で1点差を守り切れなかったA.J.Pukはともに指標としては非常に優秀なので、今後の復調も期待できるでしょう。

Tanner Scott(左)とA.J.Puk(右)の主要指標(出典:BaseballSavant)

とは言っても、そもそも投球イニングが少ないリリーフを月別の防御率だけで語るのは多少強引な感じがしますが、主力投手であっても3連投を極力避けるようにしたりと、臨機応変な対応をしています。各投手の状態を見極め、確実に勝利を勝ち取るためにも首脳陣のカードの切り方が非常に重要になるでしょう。
地味ながらも彼らが大崩れしないことで、僅差の試合の多くをものにできており、現状の得失点がマイナスなのに高い勝率を維持できていることにつながっているのだと思います。

最後に

だらだらと書いてしまったので最後にまとめると

  • 得失点差は-17ながらシーズン勝率はMLB全体で8位。ピタゴラス勝率との乖離は全チーム中最も大きく、僅差の試合を勝利していることによると思われる

  • しかし6月は得失点差がプラスになっており、チームとして実力がきちんとつきつつある

  • その大きな要因としては先発投手陣の頑張りが挙げられる。防御率はリーグ2位、FIPはリーグ1位

  • 中継ぎも頑張っている。得失点差マイナスなのに勝てているのは彼らが崩れないから。各投手の調子を見極め、適材適所に運用する首脳陣の腕にかかっている。

といったところでしょうか。

最後に好調な先発陣ですが、好調が故に先発が投る投球回数の割合が増加傾向にあります。(Alcantaraが不調ながらもイニングをしっかり稼いでくれている点も大きい)

月別先発/リリーフ投球回数割合

チームとしては長いイニングを投げてくれることは勿論ありがたいのですが、先発投手陣にけが人が増えてきていることや、Perezがイニング制限を設けながら投げていくことも予測され、今後リリーフの負担が増加することが予想されます。何とか乗り切り、3年ぶりのプレーオフ進出をつかみ取りたいですね

※ヘッダー画像は筆者撮影

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