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フリーライターに対する“4大誤解”

誤解1.「時間が自由に使える」

 フリーライターは、「フリー」という言葉の語感からか、ものすごく自由気ままに仕事をしているようなイメージを持たれがちだ。
いや、ライターに限らず、すべての自由業に対する誤解ともいえる。が、時間が自由に使える仕事などあるわけがない。

会社員のように、毎朝同じ時間に起きて、同じ電車に乗る必要がないのはたしかだ。朝寝坊できるのはフリーライターの(もしかしたら最大の)特権である。

しかし、フリーライターはしめきりという名の時間的制約につねに拘束されている。世の会社員は私たち自由業者を「時間が自由に使えてうらやましい」と思っているかもしれないが、私たちはむしろ、「会社員は労働時間と休日が決まっていてうらやましい」と思っているのだ。

〆切が立て込んで、どこから手をつけていいかわからないような状態になると、当然、睡眠時間を削って仕事をすることになる。日曜がこようが終電の時間になろうが、原稿が上がらない限り仕事の終わりはやってこない。会社員なら家に帰れば基本的には仕事から離れられるが、フリーライターは離れられない。

売れっ子になればなるほど、自由に使える時間は会社員よりよっぽど少ない。「時間が自由に使える」のではなく、たんに生活が不規則なだけなのだ。

誤解2.「好きなことを書いてお金がもらえる」

 これも、「フリー」という語感からくる誤解であろう。だが、フリーライターは基本的に、スペシャリストではなくジェネラリストである。注文に応じて幅広い分野の文章を書かなければならない。自分の気に入った客しか乗せないタクシードライバーが許されないように、好きなことしか書かないようではライター稼業は成り立たない。

一つの専門分野、二つ三つの得意分野を持ち、それ以外の仕事は受けないというライターもいるにはいる。しかし、そうした人たちにしても、お金をもらうからには編集者側の注文に応じて文章を書くわけで、けっして好き勝手に書いているわけではない。また、仕事が選べるようになるのは、ライターとしてそれなりに成功を収めてからなのだ。
好きなことだけ書いていたかったら、アマチュア物書きに徹したほうがいい。

誤解3.「有名人とお友達になれる」

 いるんだ、こういうミーハーな動機でライターを目指すヤツが……。
取材はライターの仕事の中でも大きな割合を占めているから、メジャーなメディアで仕事をしていれば、そこに登場する「有名人」の方々と、取材を通じて会う機会はたしかに多い。しかし、それを契機に「お友達」になることはまれであろうし、ライターたるもの、けっしてそんなことを目的にしてはならない。
たとえば、あなたの大好きな俳優を取材する機会に恵まれても、取材の場でサインを求めたりしたら、同行の編集者にあとできつく叱られるはずだ。
それにもちろん、有名人とは縁もゆかりもない地味な仕事だって多いのである。

誤解4.「文章さえうまければなれる」

 これは最もポピュラーな誤解かもしれない。
 もちろん、文才があるに越したことはないし、きちんと筋の通った文章が書けなければ話にならない。しかし、「文章がうまい」だけではライターにはなれない。つまり、「文章がうまい」ことは、ライターに要求されるさまざまな適性の一つではあっても、けっしてすべてではないのだ。

たとえば、あなたがいくら文章がうまくても、すごく無口で人見知りが激しかったら、それはライターとしては致命的な欠陥になりかねない。社交的で人当たりがよいことは、ライターの重要な適性の一つである。

つげ義春さんは若い頃ひどい赤面症で、「人に会わなくても済む仕事だから」という理由でマンガ家になったのだそうだ。しかしライターは、「人に会わなくても済む」どころか、未知の人に会って話を聞くこと自体が仕事の半分くらいを占めている。部屋にこもって文章を書くことだけが仕事ではないのだ。

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