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計量バイリンガル,特殊相対論的トリリンガル,一般相対論的マルチリンガル

相対論関連の講義を準備をするたびに迷うこと,それは計量の符号どっちを使うか?です.

私自身が論文を書いたりするときには,ミンコフスキー計量の符号を(-+++)つまり,時間成分をマイナス,空間成分をプラスにとります.これは,物性に分野替えして一番最初に行ったスピン接続の計算のときにこの符号で計算ノートを作ったからです.リハビリを兼ねて参照したのが,学部の講義で直接お世話になった須藤靖「一般相対性理論入門」だったという影響もあります.

一方で,大学院のときには自分の計算では(+---)を使っていました.

場の量子論を勉強し始めた頃は,M0ゼミではT.D.Lee,"Particle Physics and Introduction to Field Theory"を使っていて,これは,(x,y,z,ict)という(太田浩一先生曰く,ミンコフスキーが使った由緒正しき)虚数タイプ.

元々1つの文献だけに集中して取り組むことが苦手な私はそれに並行して

- S. Weinberg, "The quantum theofy of fields" (-+++)
- J.J.Sakurai,"Advanced Quantum Mechanics" (x,y,z,ict)
- Peskin--Schroeder,"An introduction to quantum field theory" (+---)
などを参照していたので,どの流儀も身につかないまま,右往左往していました(今でも,よく分からなくなります汗).

(虚数時間,といえば,平衡系統計力学の計算を行う際に登場する虚時間形式というのもあって,また混乱してしまうのですが)

大学で相対論的量子力学の講義を準備する際に,手持ちの本を眺めていて,ふとどんな流派がどう分布?しているのか調べたことがありました.

一覧表にしてみて気づいたのが,傾向としては曲がった時空を扱う分野では(-+++)が多め.だからといってランダウ・リフシッツの場の古典論やBirrel--Davis,超弦理論の教科書でも(+---)を採用しているものもあります.ここには載せていませんが,SUSYの文献で,章ごとに符号が違うものもありました.

一般相対論になるとリッチテンソルの定義にバリーションがあって,初学者泣かせですね(私はごりごりとリッチテンソルの計算をする機会がなく,あまり悩まずに済んでいますが).

ことあるごとに,(-+++)でも(+---)でも迷わない人になりたい,と思っているのですがムズカシイです.そんな私のキモチを初音ミクさんに歌ってもらいました.

いや,こんなことしてる暇があったら,様々な数式毎に両者の対照表をちゃんと作ればいいのですが,未だ現実逃避中です.

最近気づいたのですが,Lewis Ryderの教科書では,Quantum filed theory 2nd edition で(+---),Introduction to General Relativity では(-+++)という,バイリンガル?でした.

(2020/06/30追記) 
もうひとりバイリンガル発見.M. Kakuの"Quantum field theory --- A Modern Introduction"は(+---),"Introduction to Superstrings and M-Theory"と"Strings, Conformal Fields, and M-Theory"では(-+++)でした. 


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