［答え:予言していません］

　この話のうち2015年のほうは、同年に「TED」と呼ばれる講演会で、実業家のビル・ゲイツ氏が、その後に起きる新型コロナウイルスの世界的大流行を予言していたとして話題になったものでした。（中略)

　「イベント201」では、新型のコロナウイルスが世界的に蔓延するというシナリオのもと、15人専門家が議論を重ね、演習をおこないました。そして18か月間で6500万人が死亡するという結果が示されるのですが、このシナリオがその後に起きる新型コロナウイルスの世界的大流行の様子と「酷似」しており、そこから「さまざまな陰謀論説が一層ささやかれるようになった」というのです（内海聡『医師が教える新型コロナワクチンの正体』ユサブル)。

　たしかに、こうした話を紹介されれば、なんらかの陰謀が疑われるかもしれません。しかし「イベント201」で示されたのは架空のシナリオですし、モデルになったものや、反ワクチン本などでは紹介されていない情報もあります。

　ここでは参考のために、「イベント201」の実際のシナリオを紹介しておきましょう。主に次のようなものでした。

　・SARS（サーズ、2002年~2003年にかけて流行した新型コロナウイルス)をモデルにした新しいコロナウイルスが発生。

　・ウイルスはブラジルの養豚場にいた豚から人へと感染する。

　・最初に感染の流行地となるのは南米のいくつかの大都市。そこから海外へと感染が爆発的に広がっていく。

　・最初の感染報告から数カ月間に、感染者は大幅に増加。1週間ごとに2倍のペースで増えていく。

　・最初の感染報告から18か月後には、全世界で6500万人が死亡。その後は感染爆発によって感染しやすい人が減少したことで、新規感染者数も減少に転じていく。

　これが主なシナリオです。このうち、その後の出来事と比較して当たっているといえるのは新型のコロナウイルスが想定されていることだけです。しかし、これもすでに流行が起きていたSARSがモデルになっていたのですから驚くことではありません。

　ほかのシナリオはすべて外れています。とくに「18か月後には6500万人が死亡」については、実際の新型コロナウイルスによる18か月後の死者数が約372万人（ジョンズ・ホプキンス大学調べ)ですから、まるで違います。これのどこが「酷似して」いるのでしょうか？

　注意しなければならないのは、陰謀論などでは、新型コロナウイルスによる死者数が「水増しされている」という設定になっていることです。つまり設定に従って水増ししても、死者数が約17分の1にとどまっているということになります。どうやら陰謀組織は数合わせもできないようです。（本城達也)　ASIOS〈新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本〉より