横浜DeNAベイスターズの大卒新人、牧秀悟が驚異的なストロングフィニッシュを見せている。

牧は中央大学から2020年のドラフト会議でDeNAから2位指名を受けて内野手として入団。今季2021年のシーズンはコロナ禍により、各チームの外国人選手たちが軒並み、合流が遅れる中、DeNAも主力のタイラー・オースティン、ネフタリ・ソトを欠いたこともあり、牧は新人ながら開幕から「三番・セカンド」でスタメンに座った。
チームでは前身の大洋ホエールズを含め、開幕戦に新人野手がクリーンアップで先発出場するのは1959年の桑田武以来であり、4月終了時点で、打率.288、6本塁打、22打点と、順調の滑りだしを見せた。

その後も、5月中旬にオースティン、ソトが戻るまで、三番、二番、五番とほぼ上位で常時、スタメン出場を続けた。
そのせいか、疲れが見えた7月に打率.194とスランプを迎えたが、東京五輪2020の開催によるシーズン中断で一息つけたのが功を奏したのか、8月中旬からのシーズン再開後は打率.378と調子を取り戻した。

牧は9月30日、対ヤクルト戦で今季20号本塁打を放ったが、これはNPBの新人で史上15人目の快挙となった。チームでは1959年の桑田武、2003年の村田修一に次いで3人目である。9月は5本塁打と4月以来の自己最多タイをマークした。

10月6日には、負傷のタイラー・オースティンに離脱に伴い、四番に座った。チームで新人野手が四番打者で先発出場するのは1960年の黒木基康以来である。

この試合、牧は4打数2安打とマルチ安打を記録した。
その後も9試合連続で四番に座り、マルチ安打4度を含む、34打数15安打、打率.441と気を吐いている。「つなぎの四番」としての役割を果たしている。

しかも、牧は四番打者に座って以降、新人シーズンの打撃記録で軒並み、上位に顔を出すようになった。

新人シーズン最多本塁打ランキング

牧は10月13日の広島戦（マツダスタジアム）では四番に座ってから初の本塁打となる22号を放ち、今年の佐藤輝明の23本塁打に次いで、NPB新人史上8位タイに並んだ。

また、このときのソロホームランで打点67とし、新人史上12位タイとなっている。

新人シーズン最多安打ランキング

牧は10月14日に同じく広島戦で、2安打を放ち、今季136安打とし、NPB新人史上10位タイとした。続く、10月17日のヤクルト戦（横浜スタジアム）では2安打で138安打に伸ばし、単独10位となっている。

新人シーズン最多二塁打

牧は10月17日のヤクルト戦（横浜スタジアム）で第4打席に今季29本目の二塁打を放ち、これもNPBの新人では史上3位となった。

また、この二塁打で、塁打数236は1958年の長嶋茂雄に次いで、新人史上2位タイに並んだ。

NPB史上3人しかいない「打率3割＆20本塁打」到達への挑戦

さらに、10月17日のヤクルト戦（横浜スタジアム）では3打数2安打で、打率はついに.298まで上昇し、4月28日以来の打率3割も見えてきた。
NPBで新人野手が規定打席に到達して打率3割を超えたのは過去に11人おり、2リーグ分立後（1950年以降）でも8人しかいない。もし到達すれば、1998年の高橋由伸（巨人）以来、23年ぶりの快挙である。

さらに、NPBで新人野手がシーズン打率3割超えと20本塁打以上をマークしたのは、1958年の長嶋茂雄（巨人）、1981年の石毛宏典（西武）、1986年の清原和博（西武）の3人しかいない。
この3人はいずれも新人王（2リーグ分立後に制定）を受賞している。
新人シーズン打率3割超えの8人のうち、新人王を受賞したのはその3人と1954年の広岡達郎（巨人）だけである。

熾烈を極めるセ・リーグの新人王争い

セ・リーグの新人王争いは、広島カープのドラフト1位ルーキー、栗林良吏（トヨタ自動車）も、51試合に登板し、0勝1敗35セーブ、防御率0.72。
デビューから22試合連続無失点、18試合連続セーブとNPB新人記録を次々と塗り替えており、2015年に山崎康晃（DeNA）がつくった新人最多のシーズン37セーブにもあと2と迫っている。

他にも、奥川恭伸（ヤクルト）が高卒2年目で16試合に先発し、9勝3敗、防御率3.02と、2015年以来のリーグ優勝争いに貢献し、「高卒2年目までにシーズン二桁勝利」という史上20人目の記録に王手を懸けている。また、先発投手として史上最長となる54回1/3連続無四球という記録もつくった（記録はいずれも10月17日終了時点）。

NPB史上、稀にみるハイレベルな新人王争いを制するのは誰か。