山川穂高/パ・リーグ対戦チーム別・対戦投手別の打撃成績

山川穂高がこのオフ、埼玉西武ライオンズからFAで福岡ソフトバンクホークスに移籍した。
報道によれば、4年契約で年俸総額は12億円に出来高払いがつくという。

NPBは2024年シーズンの開幕を1か月後に控え、すでにオープン戦がスタートしているが、ソフトバンクは宮崎アイビースタジアムで、台湾の楽天モンキーズとの練習試合を行った。

山川穂高は「4番・ファースト」で先発出場したが、山川にとってはこの試合がソフトバンク移籍後、初の対外試合出場となった。

1回、初打席は5-4-3の併殺打だったものの、3回、ソフトバンクが3-3の同点に追いつき、なおも無死二塁の場面で山川穂高に打席が廻ると、その初球の変化球をレフトポール際へ運び、勝ち越しの2ランホームランを放った。

3度の本塁打王、日本人最速100号、150号、200号本塁打に到達

山川穂高はプロ5年目の2018年に初の本塁打王とシーズンMVP、翌2019年も2年連続で本塁打王を獲得、西武のリーグ2連覇に貢献した。
2022年には日本人最速の試合数(697試合)で通算200号本塁打に到達し、その年、初の打点王と3度目の本塁打王を獲得したスラッガーだが、昨年はわずか17試合の出場にとどまり、ホームラン0本に終わった。
プロ10年での通算成績は786試合に出場、打率.256、681安打、218本塁打、575打点、OPS.911である。

昨年5月、山川穂高がプライベートをめぐるスキャンダルに端を発し、オフのFA移籍騒動に至るまでその対応を巡り、多くの野球ファンの反感を買ったことは否定できないし、依然として古巣のライオンズファン、また山川を受け入れる側のホークスファンにもわだかまりがあるのは動かしがたい事実だ。

だが、2024年のシーズン開幕まで1か月、少なくともホークスファンの中では、果たして、山川穂高が期待されているような活躍ができるのかどうかという点に関心が徐々に移ってきたように思える。

山川は同一リーグ内でのFA移籍となったが、同様のケースで参考になるのはやはり近藤健介だろう。
近藤は山川よりも2歳年下だが、昨年オフ、7年総額50億円ともいわれる巨額契約(近藤本人は否定)でソフトバンクにFA移籍した。
近藤はざまざまな「雑音」や重圧を跳ね返し、それまでのアベレージヒッターという印象も覆して、シーズン終盤まであわや三冠王かという成績を残し、プロ12年目にして初の全試合出場を果たすと、打率.303、26本塁打、87打点で自身初となる本塁打王と打点王の二冠を獲得し、出塁率、長打率、OPSもリーグトップ、打率以外のほとんどの項目でキャリアハイを塗り替えた。

では、山川穂高が4年総額12億円という契約に見合った活躍はできるだろうか。
最大の懸念はメンタル面よりもフィジカル面であるのではないか。
山川の長距離打者としてのピークはやはり、2年連続で本塁打王を獲得した2018年、2019年で、その後は度重なる下半身の故障で戦線を離脱することも多かった。

山川と同様のタイプで、セ・リーグを代表するホームランバッターの岡本和真(読売ジャイアンツ)は、山川の5歳年下であるが、高卒4年目の2018年にレギュラーに定着後、NPB史上最年少となる22歳で「打率3割・30本塁打・100打点」を達成し、その後、昨季まで6年連続でシーズン30本塁打以上をマークし、本塁打王を3度、打点王を2度獲得しているのとは対照的である。

山川は2022年に3年ぶりにシーズン40本塁打の大台を超え、3度目の本塁打王を獲得したが、2023年シーズン前のWBC日本代表に選出されながら、ほぼ控えに廻り、シーズン開幕直後にまた下半身の故障に見舞われた。
仮にスキャンダルによる出場停止処分がなかったとしても、山川が年俸2億7000万円に見合った活躍ができていたかどうかは疑問だったろう。
山川に一連のスキャンダル、オフのFA移籍にまつわる心労を克服する強いメンタルがあったとしても、2023年シーズンを通して、一軍の試合にほぼ出場できず、実戦から遠ざかっていたというマイナス面は大きい。

果たして、山川は3度目の復活を果たすことができるのだろうか。

それを占う意味でも、山川穂高のプロ10年間におけるパ・リーグの対戦チーム別、対戦投手別の打撃成績を振り返ってみる。

パ・リーグの対戦チーム別の打撃成績

まず山川穂高のパ・リーグの対戦チーム別の打撃成績を見てみよう。

山川穂高がもっとも得意としているチームは?

山川が対戦チーム別でもっとも打率・出塁率・OPS・長打率が高いのは、楽天であった。
打率.279、出塁率.410、長打率.601、OPS1.011はいずれもトップである。

山川にもっとも本塁打を献上していたのは、奇しくも今回、移籍したソフトバンクの投手陣だった。553打席で46本、12.0打席に1度、本塁打を打たれていたことになる。
山川はソフトバンク投手陣から対戦チーム別でトップとなる114打点を挙げている。

山川穂高をもっとも抑えているチームは?

意外かもしれないが、山川穂高をもっとも抑えているチームは、日本ハムである。
打率.220、32本塁打、出塁率.321、長打率.463、OPS.784はいずれも最少である。
山川穂高がプロ入りしてから日本ハムのリーグ優勝は2016年の一度だけで、特に直近5年間は、5位、5位、5位、6位、6位であり、投手陣もリーグトップクラスとは言い難いが、山川の打棒を抑えることには成功していた。

ただ、被本塁打率でいうと、オリックス投手陣が最も低く、山川には17.5打席に1本しかホームランを許していない。
こちらは2020年以降、リーグ3連覇を成し遂げ、山本由伸を始め、先発にも救援にも好投手が揃っていたため、納得できる結果だろう。

山川穂高とパ・リーグ対戦投手との相性は?

では、山川穂高とパ・リーグの投手個人との対戦成績を見てみよう。
山川穂高はプロ10年間、一軍で384人の投手と対戦してきたが、30打席以上、対戦がある投手はちょうど20人いる。

最も多く対戦している投手は、前日本ハムの上沢直之(タンパベイ・レイズ)である。
69打席の対戦があり、60打数15安打、打率.200と比較的、抑えていたが、本塁打も5本、献上している。



山川穂高が本塁打を最も打っている投手は?

ロッテの石川歩である。
山川との61打席の対戦で、54打数16安打、打率.296、本塁打8本を浴びている。

次に被弾が多いのが、前ソフトバンクの千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)で7本。
続いてソフトバンクの東浜巨から6本、放っている。

山川穂高がもっとも得意としている投手は?(被打率)

30打席以上の対戦に限ると、楽天の辛島航である。
37打席の対戦で、27打数11安打、5本塁打、打率.407と山川がカモにしていた。

20打席以上だと、やはり楽天の瀧中瞭太が22打席の対戦で19打数8安打、5本塁打、打率.421とよく打っている。

20打席以下だと、日本ハムの堀瑞樹が17打席の対戦で、14打数9安打、5本塁打、打率.643と、どこに投げても打たれているという感じである。

一方、山川が「苦手」としてきた投手をみてみよう。

山川穂高が最も多く三振を喫した投手は?

山川が三振を最も多く食らったのは、前オリックスの山本由伸(ロサンゼルス・ドジャース)である。
67打席の対戦で、60打数7安打、22三振、打率.117と抑え込まれており、3打席に1度は三振している。ホームランは2本だけである。

続いて、千賀滉大が18個、上沢直之、石川柊太(ソフトバンク)、山岡泰輔(オリックス)が17個で並んでいる。

山川穂高との対戦で奪三振率が最も高い投手は?

山川との40打席以上の対戦で、最も奪三振率が高いのはオリックスの山岡泰輔である。

50打席の対戦で、17三振、すなわち2.9打席に1度、三振を喫しており、山本由伸(3.0打席)、千賀滉大(3.5打席)の奪三振率を上回る。

30打席以上の対戦だと、日本ハムの左腕、加藤貴之。
37打席の対戦で、30打数10安打、2本塁打、打率.303と打たれているように見えるが、
一方で、13三振を奪っており、2.8打席に1度というペースで三振している。
加藤は奪三振率が高い投手ではなく、キャリアで5.9打席に1度、三振を奪っているので、山川からいかに多く三振を奪っているかわかる。

20打席以上の対戦だと、ソフトバンクの左腕、リバン・モイネロである。
20打席の対戦で、15打数3安打、11三振を喫し、打率.200、ホームラン0本と抑えられている。つまり、対戦した1.8打席に1度のペースで三振している。

20打席以下の対戦だと、今オフ、日本ハムに復帰したドリュー・バーヘイゲンが14打席の対戦で、13打数1安打、8三振、打率.077と、山川をほぼ完ぺきに抑え込んでいる。

山川穂高との対戦で被打率が最も低い投手は?

山川との30打席以上の対戦で被打率が最も低い投手は、日本ハムの右腕、玉井大翔である。
32打席の対戦で、30打数3安打、9三振、打率.100と抑えており、ホームランは1本だけである。
玉井はプロ入りして7年間、328試合の登板すべてリリーフだが、対山川のワンポイントリリーフにはうってつけということだ。

20打席以上の対戦まで拡げると、次点は同じく日本ハムの左腕、上原健太である。
20打席の対戦で、17打数2安打、4三振、打率.118、ホームランは0である。

山川と10打席以上、対戦して、ヒットを1本も許していない投手は2人いる。
中田賢一(元ソフトバンク)も10打席、対戦して9打数ノーヒット、3三振と抑えていた。
国吉佑樹(前DeNA、ロッテ)も10打席の対戦で8打数ノーヒット、3三振と封じ込めている。

なお、金子千尋(元オリックス、前日本ハム)は23打席の対戦で、20打数7安打、1本塁打、打率.350と打っていたが、2019年に「金子弌大」に改名してからは10打席の対戦で、9打数ノーヒット、4三振と別人のように抑えていた。

山川穂高にホームランを最も打たれていない投手は?

山川と20打席以上、対戦してホームランを1本も打たれていない投手は6人いる。

トップはブランドン・ディクソン(元オリックス)で31打席、続いて宋家豪(楽天)が26打席、上原健太(日本ハム)、松井裕樹(前楽天、サンディエゴ・パドレス)、リバン・モイネロ(ソフトバンク)、種市篤暉(ロッテ)が20打席で並んでいる。

山川と30打席以上、対戦してホームラン1本だけに抑えた投手は4人いる。

美馬学(前楽天、ロッテ)は49打席の対戦で、1本しかホームランを打たれていない。
山崎福也(前オリックス、日本ハム)も43打席で1本のみ。
前述の玉井大翔(日本ハム)と宮城大弥(オリックス)はともに32打席の対戦で1本だけ被弾している。

注目の甲斐野央との対戦成績は?

山川の人的保障として西武に移籍した甲斐野央だが、山川との対戦成績はどうだったのか。

結果は13打席の対戦で、13打数6安打、打率.462と山川がかなり打っている。
だが、ホームランはゼロ。

なお、「プロテクト漏れ」騒動の渦中にいた和田毅は山川と16度の対戦しており、11打数4安打、1本塁打、打率.364と比較的、打たれていたが、3三振を奪っている。

山川穂高を待ち受ける西武投手陣

ソフトバンクが山川穂高を獲得したことは、打線の強化という目的以外にも、投手陣にとっても朗報だったかもしれない。

一方、今季はこれまで味方であった西武の投手陣との対戦を控えている。
西武投手陣は2022年はリーグトップの防御率2.75、2023年はリーグ2位の2.93と近年、好調である。
グラウンド外での騒動はひとまず、西武投手陣が今季、山川の打棒をどれだけ「無効化」できるのか、あるいは山川が3度目の復活を果たすのか、注目である。

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