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「新潮文庫の100冊」は今でも「想像力と数百円」なのか検証

今年も夏の文庫フェアのシーズンがやってきた。
新潮社・KADOKAWA・集英社の今年のフェア紹介冊子がこちら。

左からKADOKAWA「カドブン夏推し」、新潮社「新潮文庫の100冊」、集英社文庫「ナツイチ」冊子

新潮社は数年前からの謎のロボットキャラクター「キュンタ」、集英社もここ3年くらい続いている可愛らしい猫の「よまにゃ」がイメージキャラクターを務めている。
KADOKAWAは今年から新たに「カドイカさん」というキャラが出てきた。ぶっちゃけ、ス×ラトゥーンっぽい雰囲気をかなり感じるが、ここはキャラクターを論じる投稿ではない。

私はもう夏フェアからなにかを選んで読む、ということはすっかりしなくなったのだが、冊子は大好きで毎年読み比べている。
そのうち、新潮文庫の冊子の表紙にある、キャッチコピーが気になった。

キュンタの左上に「想像力の旅に出よう。」とある

「想像力の旅に出よう。」
このコピー、なにかを思い起こさせるのだ。
そう、かつて「新潮文庫の100冊」フェアのキャッチコピーで使われていた、「想像力と数百円」を思い出す。

「想像力と数百円」は糸井重里さんによる名コピーで、1984年から使われたものだ。
「ほぼ日刊イトイ新聞」にも、新潮文庫の100冊の糸井コピーの数々が、当時の懐かしい冊子表紙とともに紹介されている。懐かしい画像が多いのでお薦めだ。

ところで。
最近、文庫がすっかり高くなったと感じている人も多いはずだ。
それこそ、「数百円」の感覚で手にしてレジを通したら千円を超えてびっくり、という体験は誰もがあると思う。レーベルやページ数にもよるが、千数百円どころか、二千円近いケースもある。
で、新潮文庫の「想像力と数百円」コピーを思い出した私はふと、
「新潮文庫の100冊」フェアは今でも「数百円」なのだろうか?
と思ったのだ。
思ったら調べるしかない。
冊子に掲載されているフェアアイテムの定価を調べてみた。

夏フェアは基本的に、文豪たちの名作を中心にしている。ほとんどが著作権フリーになっているので、そういった名作は今でも非常に安価だ。
夏目漱石『こころ』は税込407円
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』は税込473円
芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』は税込352円

だ。安い。

では定価が一番高いフェアアイテムはなんだろう。
最近の作品ほど高い傾向があるので、まず新刊はどうだろうか。
今年の夏フェアの目玉でもある新刊の
加藤シゲアキ『オルタネート』は税込990円。
おお、ギリで「数百円」だ。
海外作品なら高いかも、と思ったのが
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』。結構分厚いし。
税込1045円だった。やっぱり千円は超えるか。
あ、待てよ、本体価格なら950円じゃないか。言いようによってはまだ「数百円」と言える。
同じように「本体価格なら数百円」なのが、
山本文緒『自転しながら公転する』税込1045円(本体950円)
柚木麻子『BUTTER』税込1045円(本体950円)

おお、これはひょっとして、新潮文庫は今でも全部「数百円」なのでは……? という期待を抱いたところに立ちはだかったものを見つけてしまった。

司馬遼太郎『梟の城』税込1155円(本体1050円)

ああ、惜しいなあ……。

ただ、間違いなく言えるのは
「新潮文庫の100冊は、今でも【ほぼ】数百円である」

ということだ。

ちなみに。他の2社のフェアアイテムの最高額文庫は
KADOKAWA 宮部みゆき『黒武御神火御殿』税込1100円(本体1000円)
集英社 ジャニス・ハレット『ポピーのためにできること』税込1650円(本体1500円)
※日本人作家作品では、東野圭吾『白夜行』税込1430円(本体1300円)

だった。


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