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小川哲『君のクイズ』きっかけで振り返る、私のTVクイズ視聴歴(なお出演経験はない)

小川哲さん『君のクイズ』(朝日新聞出版)を読んだ。
傑作である。
クイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝、これで一千万円の行方が決まる、という最後の問題で、「問題ーー」と言った瞬間、ライバルの本庄絆が解答ボタンを押した。

「ママ. クリーニング小野寺よ」

で正解、本庄が優勝する。
前代未聞、驚異の「ゼロ文字解答」だ。

三島玲央は、この番組をVTRで振り返り、この問題がヤラセだったのか、本庄の実力だったのかを検証する。検証するうち、自らの人生経験がクイズの解答に活かされていることに気づいていく。
クイズプレイヤーの思考を明かしながら、クイズというものの奥深さを知ることができる、まさに「本格クイズ小説」の大傑作と断言できる作品だ。

小川哲『君のクイズ』(朝日新聞出版)

この作品の主人公と同じく、自分もクイズ人生を振り返ろうと思う。そういえば主人公の名前(三島)が私と一緒だ。
クイズ人生、といっても、クイズ番組に出た経験はない。テレビや本など、自分が触れた作品を振り返りたい。

昔は素人参加のTVクイズ番組は今よりも多かった。クイズグランプリ、アップダウンクイズ、クイズタイムショック、パネルクイズアタック25は「四大クイズ番組」と呼ばれていた、気がする。
そんな中、私たち世代なら間違いなく印象的なのは、「アメリカ横断ウルトラクイズ」だ。
年に一回開催され、勝者がアメリカを横断しながらクイズに解答していく番組で、そのスケールの大きさは圧倒的だった。
当時、ビデオデッキなどない我が家では、ラジカセをTVのスピーカーに部分に当てて録音し、何度も聞きながら問題集を作ったりしていたものだ。

ウルトラクイズの優勝者は「クイズ王」と呼ばれ、私にとっては英雄のようなものだった。
その第2回目のクイズ王、北川宣浩さんが、自らのクイズ番組出演体験とクイズ対策をまとめた本『TVクイズ大研究』を出版された。1981年、朝日ソノラマ刊。これが恐らく、日本で初めての「クイズ対策本」だったのではないかと思う。当時買って、むさぼるように読んだものである。
今はもちろん絶版だが、著者の北川さんが全文をネット公開されている。
さすがに情報が古すぎるが、当時の雰囲気など楽しめるのでお薦めしたい。

その後、ウルトラクイズも毎年問題集が出るようになった。もちろん毎年買っていた。
また、クイズ王を中心にして一部タレント化していたのもこの頃だ。道蔦岳史さんが、どっちかと言えばヒール役のような雰囲気を出していたのも覚えている(現在もクイズ作家として活躍されている)。
ほかに、森田敬和さん、瀬間康仁さん、長戸勇人さん、能勢一幸さん、永田喜彰さんなどがクイズ本を出されており、ほとんど買った記憶がある。
競技クイズの奥深さを知ったのも、この頃だと思う。

高校生クイズが始まったのは、ちょうど高校生になったタイミングだったと思うが、結局、高校生クイズにもウルトラクイズにも応募したことはない。基本、私にとってクイズ番組は、観るものなのだ。

最近では、伊沢拓司さん率いるQuizKnockが大のお気に入りで、毎日のように動画を観ている。
このへんの話は前にも紹介している。

『君のクイズ』の参考文献として挙げられている、伊沢拓司さんの本『クイズ思考の解体』(朝日新聞出版)は、早押しクイズの問題文のどこでボタンを押せるか、などの「確定ポイント」の考え方などが数多くの具体例と共に紹介されていて面白い。お薦めである。



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