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075:「インタラクションのマテリアリティ」について考えるための意味ある地平

「3 The Materiality of Interaction───Understanding Interaction through a Material Lens」のまとめ

A concern for interaction

「インタラクションのマテリアリティ」と書いているが,マテリアル,マテリアリティという概念がどのようにインタラクションデザインに関わるのだろうか.

その前に,インタラクションとは何なのだろうか.HCIの分野では,ヒトとコンピュータとのあいだのターン制のやりとりだという定義があるけれど,「道具」という観点から考えてみる.道具はインタラクションと絡み合っていて,インタラクションを可能にするだけではなく,インタラクションを定義し,インタラクションを形にしたものであり,究極的にインタラクションを可能にするものではないだろうか.だから,「ヒト」「テクノロジー」「インタラクション」を分けて考えていけない.これらを統合して「インタラクションのマテリアリティ」について考えるための意味ある地平を見つける必要がある.

では,「インタラクションにおけるマテリアリティ」とは何か.ここでの「マテリアリティ」とはフィジカル・マテリアルとデジタル・マテリアルに言及するものである.もし「マテリアリティ」がインタラクション行為におけるヒトとテクノロジーとがどのように絡み合っているのかを示しているのだとすれば,関連する言葉もこの複雑性を示すものになるだろう.インタラクションが,私たちとインタラクトしているものと分けるものができないものだとすれば,インタラクションデザインのためのコア,分析の単位として「インタラクションのマテリアリティ」を考えられるだろう.

ワイバーグが「道具」を持ち出すように,「インタラクションのマテリアリティ」はハイデガーの手元存在のように近いものであり,意味連関の広がりのなかでとらえる必要があるだろう.

手元的に存在する道具全体で構成されていた「世界」が空間化されて,ただわずかに眼前的に存在するだけの広がりのある事物の連関になる.このように均質な自然空間というものが登場したのは,手元的な存在者の持っていた〈世界適合性〉を固有なしかたで脱世界化しながら,出会ってくる存在者を露呈する方法が確立された後のことなのである.

ヒト,テクノロジー,インタラククションとが分かれている「均質な自然空間」ではなく,〈世界適合性〉で繋がった世界でインタラクションを考えるために「インタラクションのマテリアリティ」という概念は必要なのかもしれない.以前,このあたりをスマートフォンで考えたことがある.個別に分かれてしまったマテリアルを意味の連関のなかで考えることで,あたらしいインタラクションを構築していくことが求められているのだろう.

Material interactions: On ubiquitous computing, tangible UIs, and third-wave HCI

「インタラクションのマテリアリティ」を考えるには,サードウェイブのHCIについて考える必要がある.サードウェイブのHCIはコンピューティングをテクノロジーとしてではなく,日常の活動のなかに使用していき,日常のオブジェクトだけではなく,日常的文脈,社会的文脈,文化的実践の中で考えていく.

On the notions of "interactivity" and "materiality" in interaction design research

デジタル・オブジェクトとアナログ・オブジェクトは存在論的に別のものとして考えられてきた.けれど,マテリアル中心のインタラクションデザインではその境目はぼやけけてきている.アトムとビット,そして,細胞のちがいはぼやけてきているし,排除されてきている.

「スマート」オブジェクトは,インタラクティブシステムの動的なゲシュタルトという言葉で考えられる.「マテリアリティ」という言葉は,インタラクティブ・テクノロジーやオブジェクトのなかで,フィジカル・マテリアルとデジタル・マテリアルとを統合したものを指している.

The materiality of interaction───Current research, frameworks, and examples

ここでは,いくつかのインタラクションの理論の検討される.その結果,ワイバーグはインタラクションはクラフトの伝統に近いものだと指摘する.そして,インタラクション・デザイナーははデジタル,アナログ,スマート,フィジカル,そして,非物質的物質さえもシームレスに横断することができると考えられる.

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