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077:「スクリプト・マテリアル」によるインタラクションデザイン

「5  Designing across Substrates───On Interaction Design with and across a Wide Range of Materials」のまとめ

On materials and six different dimensions of interactivity

「ダイナミクス」や「動的なゲシュタルト」とは,モノを使用しているときに外見や行為が変化していくことであり,ユーザの状態の変化を伝えることでもある.この変化がインタラクションデザインであるこの章ではインタラクティビティにおける6つの性質をみていく.

Properties of interactivity

「現れ」と言ったとき,デジタル人工物がどのようにインタラクションのマテリアリティを与えられているかに言及している.ワイバーグが「インタラクションのポスト表象パラダイム」と言うときは,表象されたリアリティだけではなく,実際のリアリティの一部を考えている.この考えのもとで,二つ,もしくはそれ以上の存在の相互行為としてインタラクションを考えるための6つの性質を以下に見ていく.

1.状態の変化(ダイナミクス)
マウスを動かせば,カーソルが動くような変化.ワイバーグは,エンゲルバートがマウス・ポインターをスクリーンの特定の場所に移動して「マテリアルをここに追加しましょう」と言った,エピソードを紹介している.

このエピソードは,エンゲルバートが「マテリアル」を,ワイバーグのようにフィジカルとデジタルとで分け考えいなかったことを示しているのだろう.

2.変化のスピード(ペース)
3.入力のための要求(ターン・テイキング)
4.入力への反応(受容性)

5.シングルスレッド,もしくは,マルチスレッドインタラクション
「電話をかける」は「電話を持つ→呼び出し音を待つ→電話番号を回す→応答を待つ→会話をする→電話を切る」という流れのシングルスレッドのインタラクションだった.対して,スマートフォンはマルチスレッドである.マルチスレッドはインタラクションデザインのあたらしい挑戦となる.

もちろん,スマートフォンで「電話をかける」のはシングルスレッドだと考えられるけれど,それ以外のことも同じデバイスでできてしまうという意味で,スマートフォンはマルチスレッドインタラクションとなるのだろう.

「拒否」というインタラクションは,黒電話のときにはなかったなと思った.電話は出るか,出ないかしかなかった.

6.ダイレクト,もしくは,エージェント(「見えない」)によるインタクション
センサーのデータやスクリプトによる入力の自動化は多くの事例で有益である.そして,スクリプトで実行されるプログラムがあり,マテリアル的観点からインタラクションデザインを見たとき,「スクリプト・マテリアル」によるインタラクションデザインがある.だから,インタラクションのマテリアリティの一部はスクリプトで実現されており,スクリプトがインタラクション全体の体験に影響を与えるのである.

Activating and combining materials in interaction design

「スクリプト・マテリアル」という考えは,マテリアルがどのようにインタラクティブシステムの一部として一連のコマンド処理が行われるプログラムできるのかを強調する.「スクリプト・マテリアル」がフィジカルな世界に関わるセンサーとアクチュエーターを見ていく.

Sensors and actuators

サーモスタットはセンサーが温度を感知して,次に,ヒーターがコントロールされて,環境の温度が変化して,さらにセンサーが温度を感知するの繰り返しで,温度を一定に保つ.アクチュエーターはコンピュータが別のフィジカル・マテリアルに影響を与えたり,アクティベートできるようにする.つまり,センサーはコンピュータが環境を「読める」ようにして,アクチュエーターはコンピュータがフィジカルな行為をできるようにして,マテリアルなかたちで「書き込み」を行うのである.

コンピュータはセンサーとアクチュエーターを介してフィジカルな環境に対して「読み書き」を行なっているというメタファーは面白いなと感じた.比喩自体がとてもフィジカルな感じがした.

Linkage (and connections)
リンクの技術で例は,オブジェクト指向プログラムの哲学である

Interaction design───Across substrates

スマートフォンのRunkeeperを使って,ランニングをする場合を考えてみる.ここでは,スマートフォンだけがインタラクションをするデバイスではなくなっている.履いている靴,走る経路,GPSのための人工衛星と言ったことがインタラクションを可能にしている.それゆえに,走ることはエクササイズだけではなく,Runkeeperへの入力になっているのである.

インタラクティブな人工物とインタラクションをすると人工物の状態が変化する
多くはユーザ・インターフェイスが変わる部分となっている.デジタル・マテリアルと伝統的なマテリアルの双方を使ってインタラクションをデザインするとき,伝統的なマテリアルをどのように活用するのかが問題となってくる.

Part-whole relations in material interaction design

グラフィカル,タンジブル,「フェイスレス」のどれであっても,ユーザ・インターフェイスのデザインは注意深く行う必要がある.なぜなら,インターフェイスのデザインを通して,ユーザはデジタルな人工物を統合された全体として体験したり,バラバラなものとして体験したりするからである.

この章では「スクリプト・マテリアル」という考えが興味深かった.「スクリプト・マテリアル」は「糊」のようにセンサーとアクチュエーターをつないで,デジタルとフィジカルとを「接着」していくものだろう.デジタルとフィジカルとをいかに「接着」「接合」していくのか.この部分にデジタルな「スクリプト・マテリアル」が使われるし,材料工学が生み出すあたらしいフィジカルなマテリアルが使われていくのだろう.

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