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088:あるけどないかのように振る舞う光学接着樹脂

東京工芸大学色の科学芸術センター「カラボギャラリー」で開催されている小山泰介さんの「レインボー・ヴァリエーションズ」を見てきた。

MASSAGEの連載で「波のようなマテリアル」という言葉を使ったので、プリントの網点が波🌊で変調されたように見える《Rainbow Waves》がとても気になった。下の画像は《Rainbow Waves》を接写したもの。

プリントされた写真の上に穏やかな波があるわけだけれど、そのとき規則的な並びから変調された網点は「どこに」あるのだろうか。波のサーフェイスにあるのか、波自体にあるのか、写真のサーフェイスにあり続けるのか。あるいは、そのすべてにあるのか? おそらく、そのすべてに同時に存在するようになっているのではないだろうか。

砂山太一さんがAGC Studio Exhibition Vol.27 「鏡と天秤 -ミクスト・マテリアル・インスタレーションー」で展示した Mirror で使用したミラー型ディスプレイで映っている映像にも感じた、そこに映像はあるけど、どこにあるのか、と考えた時の感じを思い出した。展示のインタビューで砂山さんが「奥行き感よりも、極めて薄く感じられるようなイメージの映像です」と言っていたのが印象的で、実際に見に行ったけど、やはり興味深かった。三次元の写しの上にもう一つサーフェイスが組み込まれているような感じだった。

ACGギャラリーの上にはショウルームがあって、そこに砂山さんが使ったと思われる商品の説明があって、これも興味深かった。「光学接着樹脂」によって、光の反射をコントロールする。このとき「光学接着樹脂」あるけどないように振る舞うことで、「ある」ことになる。マテリアルの不思議さがある感じ。

砂山さんのMirrorの映像はあるけどないかのように振る舞う光学接着樹脂のおかげで、鏡がつくる三次元空間の写像に「シール」のように貼り付けられている。それは、二次元平面と三次元空間という異なる二つの次元のものを「光学接着樹脂」がひとつの鏡面に貼り合わせているようである。

小山さんのRainbow Waves では、波が「光学接着樹脂」のようにカメラのセンサーと撮影対象のプリントのあいだにあることによって、普段は見えないことになっている網点を拡大し、歪めて、変調した状態をつくりだしている。変調した網点がつくる模様は、「写真」というよりは「光学接着樹脂」によって切り出された「彫刻」としてそこにあるように感じられる。

ということで、今日(2019年6月15日)は小山さんと砂山さんとトークをします。よろしくおねがいします🙏

日時: 2019年6月15日(土) 15:00 -
出演 :小山 泰介(写真家)
砂山 太一(建築・美術研究、京都市立芸術大学芸術学研究室 専任講師)
水野 勝仁(メディアアート、インターフェイス研究者、甲南女子大学文学部メディア表現学科 准教授)
会場 :東京工芸大学中野キャンパス

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