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121:紙にプリントされた猫の写真を切り抜く

紙にプリントされた猫の写真を切り抜くとき,それは「紙=像物体」を切っているのであろうか,そこにプリントされた「猫=像客体」を切っているのであるのだろうか.猫の輪郭を切り抜くとすると,猫とそれ以外の境界線を切っていると言える.では,「境界線」は猫なのか? 「境界線」は,猫で猫以外でもない.だとすれば,単に「紙=像物体」を切っているのか.

この場合,確かに「像物体」を切っているとは言えるけれど,実際は「猫=像客体」を切り抜いていて,猫とそれ以外という二つの像客体が分離される.切り抜かれて分離されたことで,はじめて「境界線」が「物体」としての厚みを持ったり,「物体」であることを示すようになり,見る人が「境界線」を「物体の端」として意識する.このようなプロセスで,「猫=像客体」に「紙=像物体」が入り込んでくる.しかし,もともと「猫」は「紙」の上にプリントされていたのであって,切り抜かれてはじめて,それが「紙=像物体」として意識されるのは間違いである.もともと「紙=像物体」があったのだが,それは「猫=像客体」を含んだ四角いフレームのなかで「紙=像物体」は意識され難い状態にあったと言える.

「猫=像客体」と「紙=像物体」とは相互浸透していて,一つの状態になり「写真」として存在していた.しかし,「写真」が切られることで生まれるフレームではない,「猫=像客体」の境界線が物体化し,「猫=像客体」と「紙=像物体」とが多少分離して示されるようになるが,それはまだ「写真」である.しかし,その「写真」は物体化した「境界線」を持ち,そのなかに「猫=像客体」と「紙=像物体」とが相互浸透の状態からは互いの存在を個別に顕わにして,「猫=像客体」であり「紙=像物体」でもあるという隣り合った状態になっている(のではないだろうか)

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