読書記録

ホテル・アイリス/小川洋子 著

知り合ったのは少女の母が経営しているホテルでのひと騒動がきっかけだった。「黙れ、売女」ただ一言投げ出された深みのある太い声に、少女は魅了されてしまう。少女と老人が共有した(周りから見れば)のは、滑稽で淫靡な世界そのものだった。当事者だけが知るエロティシズム。官能表現あり。

************

性癖だと言われればそれまでかも知れない。だけれど、その向こうにある性癖という言葉だけでは片付けられない(かも知れない)淫靡な世界があった。これが愛というなら、これも愛のひとつなんだろう。
暴力的な描写もあり、官能描写もあるのに、見苦しくなく、どこか綺麗。お互いが肉体的束縛ではなく精神的な束縛によって結ばれている。老人は少女に、少女は老人に。どちらがかけても、二人がみた世界というのは成立しないのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?