報酬設計という考え方

仕事というのはたいへんです。
何がたいへんかって、此方にも体調の波ってものがあるのに、毎日一定のタスクを消化することを求められる。まず、それがたいへんだ。
それから、此方の好き嫌い、相性の良し悪しとは関わらず、嫌な奴とも付き合わなきゃならない。それもたいへんなこと。
此方の体調の波、好悪含めた感情の揺れ、そうした不安定さ一切を抑え込んで、一定の作業を消化し、一定の成果を出さなければならない。あー、たいへんだ。

皆さん、どうやってます?なんとか、ごまかしごまかししのいでますよね?私は、そうです。ごまかしてます。で、無理がたたらない程度に怠けてます。怠けすぎると詰むんで、そこは適当に。バランスとってやってます。
今日書く記事は、そのバランスの取り方、ごまかしごまかししのぐ、その「自分のごまかし方」についての方法論。ま、しゃらくさい言い方をすれば「自己マネージメント」の方法論。いや、まず、その方法論の基礎になる「考え方」についてを書いていきます。

私は、「自己マネージメント」とは、つまり「報酬系の設計」のことだと考えてます。
「報酬系の設計」ってのは、つまり「飴と鞭で自分を騙す」ということです。

そもそも人間は、なぜ不安定なのか、と考えると、それは身体を持っているからです。身体は、意識では制御できません。ま、多少はできますが、多くの人は意識の力を過信してます。例えば、感情は制御できないですよね?
感情を表出しないようにすることはできますが、感情自体を滅すること、何も感じないようにすることは難しい。何も感じないように、なんてことをしようとすると、下手をすると解離に陥りかねない。そんな間違った頑張り方をするべきではない。

身体は、人間関係や季節や気圧や体質や病気や、…ええと、とにかくいろんな理由でいろんな状態になる(笑)。これを一定の状態に押し込めようなんてのは無理な話です。意志の力や意欲も、また不安定であると思わなければなりません。意志の強さがあれば、とか、やる気さえあれば、という安易で根拠薄弱な信念はとっとと廃棄処分しましょう。むしろ、不安定がデフォ。この不安定さを「乗りこなす」という態度で挑まなければなりません。
どうやって乗りこなすか。身体の不安定性を全て変数として処理するのは、ちょっと無理がある。
そこで「報酬系の設計」という考え方が有効になるということです。

報酬系は、動物の行動を動機づける「身体の化学反応」のことです。
ここでは大雑把に、
オキシトシン(安心)、
ドーパミン(興奮)、
アドレナリン(不安-攻撃)、
エンドルフィン(悦楽)
の4種類を覚えておくといいでしょう。
報酬設計とは、この四種類の化学反応を、自他の行為と結びつけつつ、どう設計するかということを言います。

報酬系は、「行動」を司る化学反応です。与えられた仕事がそもそもタスクレベルに落とし込まれていればいいのですが、そうじゃない場合、まずは、仕事のプロセスを、タスク群に分割しましょう。
タスク単位で報酬系を設計していくのです。
報酬系の設計のためには、先の4種類の化学反応が起きる条件を知らなければなりません。この記事では、そこまで踏み込んでは書きませんが、大脳生理学の本はたくさん出ていますから参考にするといいでしょう。

例えば、オキシトシン(安心)。ここでは、ちょっと仕事の人間関係を離れて考えてみましょう。
オキシトシンは、本来子育て時に実現される化学反応で、母子の癒着を促す作用を持つ、と考えられています。
哺乳類の親子の様子を想像してみてください。子供を守り、授乳している母親は、脅威となりうる外界には普段よりずっと攻撃的な態度になります。
つまり「オキシトシン・モード」は、「母子間のクローズドな関係を強化して、その反面で、敵となり得る他者への排他性を高める作用を持つ」ということになります。
人間においても、この作用の性質は変わりません。
例えば、ラブラブの男女は、この「オキシトシン・モード」にあると考えられます。
報酬設計の考え方を応用すれば、逆に、男女が「ラブラブになりたい」というときは、この「オキシトシン・モード」を意識的に作り上げてやればよいということになります。
どうすればいいか。答ー二人の“特別な”愛を囁き交わしつつ、共通の知り合いである第三者の悪口で盛り上がればよい。酒が入れば尚いいでしょうね。アルコールは、オキシトシンの抑制を解除します。どうでしょう。思い当たりませんか?

一応、仕事の例も出しておきましょうか。
例えば「トラブル処理」。ここでは、基本的に「アドレナリン・モード」を活用します。つまり、不安というのは起こりうる可能性を察知するアラームとして有効です。だから希望的観測で不安を解消すべきではないということになります。

ただ、アラームが鳴りっ放しの状態は回避すべきでしょうね。健康を害するとパフォーマンスが下がっちゃいます。
アドレナリン過剰を避けるには、ドーパミン、オキシトシンを意識的に制御し、アドレナリンに拮抗させることが必要になります。

例えば、不安をリアプレイザル(言葉による修飾。不安を感じたら「さて、楽しいゲームの始まりだ」等とその状態を再定義する)し、自分の実行すべき動きをゲーミフィケーションすることで、不安を興奮に転化することができます(ドーパミンコントロール)。
オキシトシンをコントロールするのは、もっと簡単。「自然」と「愛」を摂取する。興味深いのは、その「自然」や「愛」が、「イミテーションでも構わない」という点です。
YouTubeで波の音を聴いてもいい。嘘でも「愛してる」と囁かれれば、それで身体が落ち着くということです。
ともあれ、そうして、自らの神経マネージメントをしつつ、如何にネガティブな可能性を見つめ続ける持続力を保てるか(アドレナリンコントロール)ということが、ファクトベースでリスク回避のための打ち手を連打していくマインドスキル、「報酬設計」ということです。

まとめると、
1.自分の意志の力ややる気に依存しようと考えないこと、
2.自分の心身は不安定なものであるとの認識を持つこと、
3.自分の報酬系がどのように作動するか、自分で自分の反応をよく知ること、そのためにメモを取ることも有効だろう、
4.報酬系のコントロールスキルを身につけること。


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