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100pぐらいの漫画同人誌を描く

この記事には二次創作・BL同人誌の内容が含まれます。

他の方の記事を見て私も100pぐらいの本をいっぱい描いたな〜と思い、何となく記録として残しておこうかなと思いました。
時短テク等はありませんが普通の人が普通に描いた記録として参考のひとつになれば幸いです。

2022年11月に発行した「天国へようこそ」という本を例に書いていきます。
B5サイズ・表紙込112p(漫画107p)・成人向けの同人誌です。
※記事内でえっちなことについては言及しないので安心してください。

作画環境

・iMac + Wacom Cintiq24(液タブ)
・iPad Pro 13inch(第5世代・512GB)
・使用ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX

基本は自宅でデスクトップPC、外出時や家の中でも場所を変えたい時はiPadで描いてます。この本での使用量は半々ぐらいだったと記憶しています。
どちらでペン入れしても変わらないように液タブ側の筆圧を調整しています。
クリスタのクラウド(容量10GB)を活用しての作業になりますが、100Pぐらいの本文データなら私の場合でも大きくて4GB程度なのでたくさん描き込む人でも該当の本文だけでクラウドがパンパンで同期できない!ということはないかな〜と思います。

原稿時のタイムスケジュールは基本こんな感じです。4〜5時間ぐらい原稿できたらいいな〜という予定で生きています。隙間時間で細かく原稿するより長時間集中して原稿する方が身体に合っているのでこんなスケジュールです。
あまりにも眠い日は22時に寝て2時に起きて原稿したり多少時間にズレはあります。

ネタ出し

7/17のもくりで「特定の性癖の漫画を描いてみたいのに妄想しても毎回失敗する」とボヤいた夜中に「何故なのか……」と謎のガッツを発揮し、

楽しかったのでスクショがあった

7/21に該当の項目を微かに含んだ一通りの脳内妄想が完成しました。ちなみにこの時は「70Pぐらいかな」と思っていました。
言語化が苦手なのと、妄想を文字で出力すると満足して漫画にしなくなってしまうのとウルトラせっかちな性格のため、この後プロットのように文字化する工程はありません。

■補足
話の流れとして大丈夫か不安になった時は「ストーリープロッター」というアプリに情報を入力して、不自然な部分がないかを確認します。スマホアプリだけでなくブラウザ版もあります。

私は道筋がおかしくないかを確認するだけなのでざっくり入力することしかしませんが、細かく掘り下げて入力することが可能なアプリなのでプロットをきちんと作る方にも便利かと思います。
ストーリープロッターの枠組みは「3幕構成」(発端→中盤→結末 というストーリーライン)ですが、絶対この形式でお話を作らなければならない!という訳でもないし、たまにわざとお約束を外れるのもお話として楽しいと思っています。私も自分の話の起承転結とか分かってないので…

ネーム

頭の中に映画みたいな映像情報を保持している状態で、これをネームとして書き出していきます。7/22から始めました。
この時は9/18のイベント合わせで出したいな~と考えていたため、暇を見つけてやらないと間に合わない!と思い、いらない紙の裏にネームをしました。(普段はもう少し余裕があるのでクリスタでネーム用マンションを建設して描きます)
誰かに見せるものでもないし絵は下書きでちゃんと描くのでコマ割とセリフとアタリのようなものが描けていれば良いと思っています。

この時のネーム(A4の紙を半分に折って描いた)

7/23のイベント中もネームをして、終わったのが7/28で漫画107p(本文108p・表紙込112pの本)になることが分かりました。
ネームに掛かった期間は約1週間です。
今までの感覚で「100pの漫画は仕上げるまで3ヶ月掛かる」というのが分かっていたはずなのですが、当時イベントハイだった私は頑張れば何とかなるのでは??と思い「9月のイベントに出したいな~」などと呟き走り始めました。

■補足
私がクリスタでネーム用マンションを建築する時に使ってるテンプレートはこちらです。ネーム用テンプレは無償提供でいっぱいあるので色々使ってみると良いと思います。
・B5仕上がり用ネーム用紙(無料)
https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1695519

スケジュール

いつもはこの辺りで原稿のスケジュールを組みますが今回の本はスケジュールがおしまいだったのとなんか行ける気がしていたので(なんで??????)組んでいませんでした。
安心感に繋がるのでどんなにギリギリでもスケジュールは組むことをオススメします。
私はスケジュール作成に「同人手帳」を利用しています。WEBページなのでXアカウントと連携しておくとスマホのブラウザからも利用できて便利です。
また、進捗を入力する機能があり今原稿が何%仕上がっているのかの確認出来るので長期スケジュールにおけるモチベーションに繋がると思います。

なお私は進捗入力をよくサボり「スケジュールが破綻しています!」と注意されています。

先日発行した本のスケジュールですが進捗を途中から入力していませんね

表紙

ネームが完成するともう漫画は完成したも同然なので、息抜きがてら浮かれたテンションのまま表紙絵を描きます。
今回は1日(7/29)で描きました。大体1日〜2日で描きます。
ついでに印刷所さんや使うセットを決めます。最初から「このセット使いたい!」と決めて描くこともあります。
今回の本は最初から使いたいセットを決めていたパターンです。
(実物の本をお持ちの方がいらっしゃったらこの特殊紙と特色が使いたかったんだな〜と思ってください)
表紙デザインはSKIMAから同人誌の表紙デザインを取り扱っているデザイナーさんに依頼しました。

私は特に画力が高い訳でもなく更に何事にも自信がないため、デザイナーさんの力で表紙ぐらい良い感じの同人誌に仕上げてもらいたいと思っているのと、必要事項の入力ややり取りをしているうちに作る本の形が明確になり内容を含む情報の整理が出来るので利用しています。
依頼をしてOKを頂いたら描いた絵を送付し、自分は漫画を描く側に戻ります。
漫画を描いている途中で表紙デザインラフを頂くとやる気にも繋がるので、そういう意味でもデザイナーさんという外の空気が入ってくるのはいいなと思っています。
SKIMA以外でもココナラやX上でも依頼を募集しているデザイナーさんはたくさんいるので、お金はプラスで掛かりますが利用しやすい方法かなと思っています。

原稿マンションを作る+コマ割と台詞入れ

ページ数は確定したので7/30に原稿マンションを建てました。

(文言に問題があるのでスクショしてモザイクにしました)
https://twitter.com/taci_uo/status/1553334954419167232

毎回Twitter(現X)に上げて(いつもならマンション上げてるけど今回はなかった)オシカプの本を出せることを喜び泣きながら退路を断ちます。
今回のネームはアナログなのでクリスタに取り込む作業に一手間掛かります。
まずスマホでネームを1Pずつ、107枚の写真を撮ります。
iPhoneを使用しているので撮った写真はAirDropでパソコン(iMac)に送りました。

見てるだけで気が狂いそう

私はネームをアタリとしてしか使用していないのでカメラの画質・サイズはデフォルトのままです。
また、何かの事情でiPhoneが使えなかったり、AirDropがうまく反応しない場合はGoogle Driveに上げてパソコンへ送る形を取ります。

その後、クリスタで原稿マンションを開き、写真を各原稿ページに読み込んで拡大変形して貼り付けます。
貼り付けたネームは原稿データ内に残っていなかったので(動作を軽くするため下書き後に削除してしまう)事後イメージになりますがこんな感じです。

ちなみにデジタルでネームしたとしてもネーム画像を分解して原稿ページへ読み込む作業があるのでどちらにせよネームを貼る作業は時間が掛かるし面倒臭いです。

ネームを取り込んだらコマ割りして台詞を打ち込みます。

この作業をいつやったのかは記録が残っていなかったのですが、7/31〜8/4の間に完了させたみたいなので5日ぐらい掛かりました。

下書き

8/5からネームをアタリにして下書きを始めました。
個人的に「下書きを丁寧にすると締切ギリギリでもペン入れが楽に出来て早く終わる!」と思っているので丁寧に描きます。
3D素材を使いながら背景も描いていきます。

でもこのページの下書きは汚い

背景や家具等のペン入れで使うことがあるのでパースがズレてたら格好悪いな〜と思うコマはパース定規を当てられる線を残しておくようにします。
後で楽をしたいので(追い詰められている時に背景をちゃんと描ける訳がないと思っているので…)背景だけのコマはこの時点で描いてしまいます。

これが先に描いた建物

下書きをサボった日もあったため、8月末頃「正直9月のイベントには間に合わないな」と思ったのですがこのまま諦めるのも癪なので下書きを続け、結局間に合いませんでした。当たり前ですね。
イベント前に尻叩きとして半分ぐらいぽいぴくに上げて、見てくださった方から励ましのスタンプやお言葉をいただき泣きながら無配の漫画を6P描いて(描きたかったから)9/18のイベントに参加しました。
またしても記録が残っていないのですが9/18のイベント当日には下書きが完成していました。(友人に見せびらかした記憶がある)
下書きに掛かった期間は一ヶ月半ぐらいです。これはちょっと掛かりすぎです。
11/6にオールジャンルのエアイベントが参加費無料!のお知らせが来たのでこのイベント合わせで発行することにしました。

ペン入れ・仕上げ

9/20から下書きで気になる箇所の直しとペン入れと仕上げを始めました。
私は進捗を上げないと描いた実感が生まれずやる気が死んでいくウルトラせっかち人間なので1P毎にペン入れと仕上げを行っていきます。
掛かる時間の目安は全年齢ページが1Pあたりペン入れ1時間・仕上げ15分、
R-18は書き込みや仕上げに手間が掛かるので1Pあたりペン入れ1時間半・仕上げ30分ぐらいと見ています。
もちろん目安なので早く仕上げたら「天才か!?!??」と言って良いですし、遅れて仕上げたら「ここは大事なページだったもんな…」になるので計画上の目安です。

■捗らない時
ダラダラしてるな〜と思う時はmocri(もくり)の「集中モード」をタイマーとして利用して、ペン入れ時間目安を「作業時間」に、仕上げ時間を「休憩時間」に設定するとアラームで追い込んでもらえるので便利です。
※1/18追記:もくりは2024/3/22 15:00でサービス終了となりました(今までありがとうございました…)

▷もくりがなくなったので……
ポモドーロを悪用した作業方法なのでポモドーロタイマー機能のあるアプリなら同じ使い方が出来そうです。
個人的になかなか合うのが見つからなかったのですが、最近iPhoneアプリの「Pomolog」を使い始めました。
ポモドーロのセットがいくつも作れて(私は全年齢用と成人向けで作業時間が異なるため)、見た目もシンプルなので気に入っています。
今日はこれくらい作業したな~という時間の記録がされるのもいいところだと思います。

他にもpixiv Sketch等で作業配信をして誰がいつ見に来るか分からない「サボれない」状況を作るのも個人的には合っています。配信を見ている方が応援(いいね)してくれたりするので頑張るぞ〜という気持ちになれます。

その後は特に何事もなく10月末に入稿し、エアイベント合わせで通販の新刊登録やサンプル作成を行いました。
ペン入れと仕上げに掛かった期間は40日ちょっとです。
自分の所属ジャンルのアニメが放映してたり毎週公式の供給があったりしていた中頑張ったんじゃないかなと思います。

完成した原稿マンション

こうしてネタのかけらを見つけてから3ヶ月ちょっとで100Pぐらいの同人誌が完成しました。出せて良かったです。
実際のスケジュールをまとめるとこんな感じでした。

最後に

私は昼間普通の会社に勤めている一般人ですがそれでも100Pぐらいの本が出せているので、この記事でページいっぱいの同人誌を作ろう!と思っているオタクのやる気に繋がれば嬉しいです。
ちなみに上下巻とかにしないのは単純に面倒臭いからです。
「100Pぐらいの漫画を1から描くには3ヶ月は掛かるぞ!!!!」ということを私は肝に銘じてまたたくさんページのある同人誌を描いてみたいな~と思っています。

■変更点
・1/13:誤字を修正、不足だと思った部分に画像と説明を追加、スケジュールについての言及がなかったため目次として追加しました。
・1/14:画像の大きさの調整、捗らない時のこと、私のタイムスケジュールを参考として追加しました。
・1/16:「ストーリープロッター」が3幕構成であることなどを追加しました。
・1/18:mocriサービス終了について追記しました。ポモドーロタイマーでリピート機能があるものなら同じような使い方が出来そうです。
・4/8:mocriの代わりに使い始めたアプリのことを軽く記載しました。画像足せたら足したいです。


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