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Cabin FeverとDomestic Violence

映画『ジュリアン』を観た。

邦題はジュリアンだが、原題は『Jusqu'à la garde』
仏語で「刺したナイフの刃を付け根まで深く差し込む」という意味合いだそうだ。まさに。
英題は『Custody』で、意味は親権だというのがしっくりくる。
英題、邦題ともになかなか良い訳だと嬉しくなった。


※余談ですが映画.comで毎年開催されている邦題オブザイヤーが面白いので是非。私の個人的ベスト『聖なる鹿殺し』も5位に入ってました!


話がそれたが、少年ジュリアンの瞳、表情の演技が素晴らしい作品だった。
ジュリアン役の彼はトーマス・ジオリアというのだそう。幼い頃から小さな劇場に通いつめていたという彼、難しい役どころによくハマっていた。
あの頃の吸収力とか表現力は無限大だなあ。

さて、彼を観ていると思い出すのが、
言わずと知れた1980年の名作『シャイニング』のダニー・ロイド。


2020年に続編『ドクター・スリープ』が公開されることが発表されたこともあり、先日久しぶりに鑑賞した。

狂っていく父親、という意味では共通点も多い2作品。
例えば終盤のシーン 
よくある構図かもしれないが、
ジュリアンの銃で扉を壊し母子を追いかけ回す父、
シャイニングの斧で扉をぶち破るシーンは、どこかリンクを感じざるを得なかった。

シャイニングの中ではCabin Fever(一種の閉所性発熱)が原因で狂っていくと表現されている。
ジュリアンではDVへの問題提起として描かれている。

『ドクター・スリープ』は幼少期の恐怖体験をトラウマとして抱えたまま大人になったダニーが主人公となるようだ。

ダニーもジュリアンも命こそ助かったが、体験は心に留まるままだろう。

精神病というのは一概に誰かを責められるわけではなく、難しいことだと日頃思う。当人にも被害者にも止めることが難しい。だからこそSOSを見逃さず、対処できる社会にしていかなければいけない。

ジュリアンの冒頭、ジュリアンからの手紙を読むシーンは野田市教育委員会の事件を思い出さずにはいられない。

私は幽霊が出てくるホラー映画が怖くて観られないのだけれど、
人間サイコホラー映画は大好きでよく観る。
その度、最も恐ろしいのは人間なのだと何度も思い知る。
霊感がないので幽霊を実際に見たことはないが、
実際の日常生活で人間と関わる方がよっぽど恐いから、
サイコ映画が好きなのかもしれない。

人の心が読めない。恐い。
人の心が読めても。恐い。

生きやすくなる方法を一生模索しながら生きていく。
人間に生まれたからには仕方のないことかもしれないが、
しばしば人間でいることがたまらなく耐えられなくなるのである。




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