いま

 気づけば社会人になっていた。幼少期の頃の記憶は確実に自分の中にあって、でもそれはまるで夢なのかと思うくらい今の自分と結びつかない。時の流れが一方通過で決して戻れないことに絶望する。今が嫌なわけじゃないけれど、これからの未来が今という時点から分岐していて、
いくつもの未来が広がっているのに、過去へは逆行不可能ということが怖い。

 数日前に彼氏に別れるべきだと思うと告げられた。理由は「気持ちが冷めている」というよくあるものだった。あまりの突然の告白に動揺もあってか、冷めているのならば仕方がないと受け入れてしまった。冷めた状態から彼をこれからも魅了し続ける自信もなかったのだ。情けなさを噛み締めながら、1週間が経ってしんどい気持ちは簡単には心からいなくならない。

 過去の選択を悔いたくない。ああすればよかったとメソメソしていたくない。常に最善を選びたいのだけど、後から振り返って初めて気づくこともある。

 毎日違うことを考えている。でも一貫して自分のことが大嫌いという、摘みきれない根が張っている。早くこの根に栄養を与えて、幸福感で満たさないと自分をダメにしてしまう。

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