見出し画像

ボボボーボ・ボーボボという漫画

20世紀の終わり、ジャンプに訪れた破壊神

インターネット界隈でこのようなノートを見ている方々ならば、ボボボーボ・ボーボボという作品の名前を知らないということはないだろう。
2000年に掲載されたボーボボの読み切りは世間に混乱をもたらし、その混乱も落ち着きかけた2001年から連載が始まった。
私はボボボーボ・ボーボボこそ、ノストラダムスの予言に記された恐怖の大王だったのではないかと確信しているところであるが、もしかして今の若い人たちってノストラダムスの予言知らないのでは?ツラくなってきた。

説明不能・言語の限界を感じる表現力

漫画というものは、文学作品にはない視覚的な表現と、映像作品にはない文章的な表現を組み合わせることによって、1ページに大量の情報を詰め込んでいる。

例えば「はだしのゲン」という作品があるが、最も印象的かつ決定的な瞬間である原子爆弾の炸裂シーンは、たった1コマの画で表現される。
静かな空を押し上げる、巨大なキノコ雲の画をみれば、その大きさや押し寄せる爆音など説明不要だ。
一方で、被爆し飢え渇いた人々が、なぜ水を口にしたとたんに息絶えるのかはきちんと文章で説明される。

漫画界トップクラスの名作を以って説明したところでボーボボの話に戻るが、この作品に関してはどのコマが秀逸だとかそういった説明ができない。
4ページくらい続けてジェットコースターの上で架空の曲「亀ラップ」を歌い狂ったりするが、この表現の意図はわからない。歌詞を読んでも何もわからない。私が初めて紙面で「亀ラップ」を読んだ時の感情も説明できない。
私はギャグマンガというジャンルを好みこれまで多くの作品を読んだが、類似するものが一切ない。
理解力や読解力に自信があるなら、ぜひ「亀ラップ」に挑戦してみてほしい。
解読できた方はぜひレポートにまとめてご提示ください。説得力のあるノートであれば購入も視野に入れてお待ちしています。
ここまで「亀ラップ」について言及してきたが他にも解読困難な項目は多数あるのでお試しください。

なんだかんだでうまくいく、後味の良さ

ボボボーボ・ボーボボは、一応バトルマンガだ。
無辜の民を迫害する悪の軍団「毛刈り隊」の壊滅を目的に旅を続けるうち、より強大な敵が現れたり、過去の因縁にケリをつけたりする。
ところでこのボーボボ、全キャラクター中でダントツに強いかというとちょっと判らない。
バトル経過とみると、かなり苦戦している割合が高い。ボーボボら味方側の攻撃がまったく通じない場面も多いし、非戦闘員が傷つくなどピンチに陥ることも何度もある。
鼻毛真拳が恐ろしく強いことは確かなのだが、他の毛の真拳と比べると下位に座しているし(特に髪の毛とスネ毛には完敗に近い)、黒太陽真拳・バビロン真拳のように街の崩壊を食い止めるようなエネルギーを持っているわけでもない。

ボーボボは”最終的には勝利してる”という感じで最強の座についている。
圧倒的なのは、相手に対する対応力・カウンターの強さだ。
相手が”芸術力”で攻撃してきたら、”鼻毛真拳の芸術力”でこれを倒す。
圧倒的な実力差の相手には、仲間と協力して”新奥義”や”協力奥義”をその場で生み出して倒す。というか、その時々で明らかに新しい奥義が生まれ続けている。
それが土壇場のラストスマッシュとして決まることで、痛快なバトル展開を生み出すのだ。

何もかもメチャクチャだが、倫理ラインだけは守られる

世の中にメチャクチャなギャグマンガというのは古来より数多くある。
「えの素」「稲中卓球部」を始めとしたこれらの崩壊的なギャグ漫画は私も好きなのだが、人に勧めることは決してない。もちろん例にあげた2作品以外にも同じように感じている作品は多くある。

ボーボボのお勧めしやすい美点の一つとして、基本的に悪いことをするのはいけないことで、悪い奴は懲らしめられる点だ。
これを担保するのが、日本を代表するツッコミであり本作のヒロインであるビュティだ。味方側の誰かが他人に迷惑をかけたり変な行動をした時には必ず、そのコマ内で激しくツッこむ。
非戦闘員のビュティだが、ツッコミという役割に関してかなり強力なパワーをもっており、パーティ内でのヒエラルキーの最上位にあるといっていい。

パーティのバランスも、実にギリギリのラインで現実的な倫理を犯さないように配役されている。
とんでもなくぶっ飛んだキャラクター達だが、ちゃんと悪いことは悪いと理解して行動しているので、安心してみていられる。
そして、常識を逸脱していくキャラクターの脇にはちゃんと常識的なキャラクターを配役しているので、明後日の方向に飛んでいくことはかろうじて避けているのだ。
なお、前述の「亀ラップ」はビュティ不在の場面でぶっ飛んだキャラ2名を自由に行動させた結果であり、バランスよく配薬することの重要性を裏付ける証左だ。みんなも確認しよう。

お勧めは「ボボボーボ・ボーボボ」

ボボボーボ・ボーボボには、タイトルの異なる系列作品が4作ある。
このノートで語っている内容のほとんどは1作目についてだ。

「ボボボーボ・ボーボボ」全21巻   2001年~2006年
「真説ボボボーボ・ボーボボ」全6巻 2006年~2007年
「ふわり!どんぱっち」全3巻
「ほんのり!どんぱっち」全1巻

ボーボボと真説を区別するため1部・2部と呼ぶ場合もある。
2部は1部で残っていた環境部分の整理ともいえる内容で、1部にくらべ世界観が完成しているためか、全体的に落ち着いた印象だ。正統派の続編といえる。
ボーボボ作品を完成まで追いかけたいなら、ここまで読めば大丈夫だ。

ふわり!とほんのり!は上2作品とは完全に別物で、キャラクターはスターシステムといっていいレベルで別人だし、世界観も内容もまったくことなる。
(なお、作画も驚くほど変わっており、連載当初は別人と疑った)
現代を舞台にした日常系ゆるふわマンガで、特に人型女性キャラのかわいらしい一面を堪能することができる。なお、主人公はボーボボではなくビュティと首領ぱっちのコンビを中心として描かれる。
ボーボボとは方向性が真逆なので、ボーボボの続編として期待すべきではない。ボーボボを知っているとより味わい深い、くらいの気持ちで読もう。

私がこのノートを書くほどに狂おしく愛している作品はここでいう1部
「ボボボーボ・ボーボボ」だ。
時事ネタなど、一部は伝わりにくくなっているかもしれないが、普及の名作であることに変わりはない。
ぜひ、多くの人に読んでほしい。