Moonというゲーム

プレイステーション最盛期の隠れた名作

Moonというゲームが発売されたのは1997年。FF7、三国無双 (無印)、電車でGO、チョコボの不思議なダンジョンと同じ年の発売だ。
当時最新のゲーム機がプレイステーション (初代)であり、PS2発売より3年も前というと、まるで古典ゲームのように感じる。

開発はラブデリック、販売はアスキーだが、恐らくこの社名を聞いてもほとんどの人はピンと来ないであろう。
なにせ、現時点でどちらの会社も解散あるいは吸収合併されて無くなっている。
特にラブデリックを知っている人はかなりのゲーム通か、ラブデリック作品に魂を握られ前後の作品まで調べ尽くした猛者かのどちらかに違いない。
テクノロジー分野では現在も広く名を残すアスキーと異なり、ラブデリックは小さなゲームソフト開発会社で運営期間も短かった。 (Moon発売の4年後に解散)

RPGへのアンチテーゼ

現在においても、日本のゲーム市場を語る上で"RPG"というジャンルは欠かせない。
"小さな村に住む青年は、ある日お城に呼び出され、世界を救うために旅立つ"
どの作品が思い浮かんだだろうか?
Moonも、このようなお馴染みのシーンから始まる。
プレイヤーは勇者を操作し、村人から情報を聞き出したり、村人のタンスからアイテムを入手したり、モンスターと戦いながら、世界を滅ぼそうとする悪のドラゴンを倒すべく冒険するのだ。

突然だが、冒険はここまでだ。
場面は変わって、ここからがこのゲームの本編になる。

プレイヤーが操作するのは、いや、プレイヤーは、存在感のない村人の青年だ。
村はずれに、優しいお婆ちゃんと元気な犬のタオと、2人と1匹で暮らしている。
お婆ちゃんは毎日おいしいクッキーを焼いて、ぼくに持たせてくれる。 (寝坊しなければ!)

村人たちは生きて、ここで暮らしている

王様はお庭で鳥にエサを撒いてやるのが日課だ。
パン屋のベイカーは朝早くからその日のパンを焼いて、午後に売り切れるとお店を閉めてしまう。
パブは夕方からの営業だから、昼間に行ってもママは爆睡してる。
お城の守衛さんは、休みの日に子供と会えるのを楽しみにしている。

ぼくもそうだ。
朝起きて、一日中歩き回ったら、夜には疲れて倒れてしまう。
食べ物を食べれば、少しだけ元気が出て動けるようになるかもしれない。

穏やかな日々、平和な世界。
モンスターも生息しているが、住民たちは対して気にもとめていないようだ。
そんな日々を切り裂くように、黒い鎧の剣士が現れる。

敵を倒さない。弱い主人公。

プレイヤーのぼくは、モンスターを倒さない。戦って強くなったり、武器を揃えたりしない。
唯一の成長要素である"ラブ"を集めても、夜遅くまで活動できるようになるだけだ。

生活の範囲ではできることはとても多い。いつ、どこで、何ができるのか。何をすれば何ができるようになるのか。
住民たちの悩みを解消してあげてもいいし、あげなくてもいい。
"ラブ"を集めてもいいし、集めなくてもいい。
エンディングに至る方法は複数あるので、好きな方法でクリアすればいい。
とにかく、自分がしたいように暮らせばいいのだ。

伝説のゲーム

私はこのゲームを、1人でも多くの人にプレイしてほしいと思っている。
コンセプトの尖った作品だが、クレイアニメ風のデザインで描かれる世界や、聴ききれないほど多彩な音楽 (好みの音楽をBGMに設定できる)、緻密に設計された住民たちのロールなど、特筆すべき優れた部分をぜひ体験してみてほしい!
Moonの世界で暮らしてみてほしい!
星の数ほどゲームが開発される現在でも、このゲームに代わるゲームは存在しない

さて、冒頭でこのゲームの開発会社は当時無名に等しく、発売の4年後に解散しているということを説明した。
amazonでもヤフオクでもいいので「Moon (PS)」で検索してみてほしい。発売当時 運良く、あるいは先見の明によりプレイすることのできたプレイヤー達が、インターネットの普及と共にこのゲームの秀逸性を広めたものの、そのころには既に市場になかったのである。

運良く手に入れたなら是非、ゆっくり時間をかけて、やりたいようにプレイしてほしい。

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(藻)-marimo-

Moon(PS)

私の大好きなゲーム"Moon"について、好き勝手に語るマガジン。好きなところばかり語る。
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