見出し画像

効率とは……ー倍速視聴か、等倍速視聴かー

『美術史の門前』という講座に参加している。

『西洋美術史の歴史8 20世紀ー越境する現代美術ー』という全集の中の20世紀パート1冊を、1年全15回の講義で読んでいくというもの。
修論に必死になりすぎて、ぜんぜんリアルタイム参加できなかったので、修論が終わった今!録画を!見るべし!!と毎日せっせと見ている。

リアルタイムで参加できなくても追いつけるのほんとありがて〜〜〜と思う反面
「録画データだと等倍速で見ると損をする!!!」というYouTube倍速視聴によって植え付けられた謎の価値観が発動してしまうのが悩み。
そもそもは対面講義用の設備なのであくまで録画は補助教材であり、そのためポッドキャストのようなクリアな音質ではないうえに、(これがいちばんの問題なのだが)わたしに美術史的知識や語彙、作家名などのストックがなさすぎて、倍速視聴すると聞き取れないのだ。
「門前」といえどしっかり専門的な話で、変に入門だからと言って概論だけぺろっとしゃべるのを望まないわたしとしては容赦のなさはありがたいのだが、倍速視聴はできない。そもそもが、みんなで教科書を手元に読みながらすすめる講座なので本が手元にあれば簡単に解決する。書いてあることを解説してくれるのだから。だけど本は図書館に返却してしまったのよ。
リアルタイム参加できない人のための補助動画の活用×美術史ビギナー中のビギナーにつき語彙ストックが圧倒的に少ない×そもそも教科書が手元にない(これが最も大きな問題)
聞き取れないのは、すべてが自分の責任だ。

悩むんだったら等倍で見ろよとセルフツッコミは何度もいれつつ、いや、せめて1.75倍?これもむりか、1.5倍?せめて1.25倍で…!と謎に抵抗してしまう。YouTubeの倍速視聴癖は本当に恐ろしい。大学の授業もめちゃくちゃ遅く感じてしまったもんな……。そんで遅く感じるだけなら別にいいけど、遅い→手持ち無沙汰な気持ちになる→何か内職をしたくなる→授業を聞けない(そんな器用ではない)という悪循環がはじまっていくのはよろしくない。

「等倍で見たら負け」という非常にくだらないルールの中で、これまでのアーカイブは、知らない作家は検索して作品を見つつなんとか知識補完をして難しいところは1.25倍、前回の講義とつながっていて聞き覚えがあるところは最大で1.75倍と倍速チャレンジを続けている。

しかし、ついに、どうしても聞き取れないところがでてきた。
等倍速にして、何度聞いても音声がとぎれて、作家名が聞き取れない。
「じゃんぼとりえ」と聞こえるのだが、そんな作家はgoogle先生は教えてくれず「もしかして〜〜〜かも?」というサジェストもしてくれない。これまであんなに親切に教えてくれていたのに。周辺情報で検索してもうまくひっかかってこない。
google先生に見切りをつけ、チャットGPT先輩に聞いても、質問要件と違う回答をしてくるし、なんか空想の作家の名前とかも言ってくる。GPT先輩は虚言癖があるのでファクトを調べるのにはやはりあまりむいていない。

不毛なやりとり

おそらく正解であろう「ジャン・フォートリエ」に行き着いたときには、1時間を超えていた……。

https://www.kwc.server-shared.com/Travel-and-Art/2021/01/28/大原美術館:『人質』フォートリエ/


正解がわかると、人形の話でもないし、(身体性のテーマの章で、この直前が身体と人形についての話題だった…)第一次世界大戦ではなく第二次世界大戦だし、わたしのGPTへの質問もぜんぜん違うやん、そりゃ誰も答えてくれないわ。
そんで、やっぱり、1.25倍速でも、人の話、ぜんぜん聞けてないわ!!!!!

これに1時間かけてたらさ、等倍速で手元に教科書を持って聞く方がぜったいにぜったいにぜったいに、ぜったいに、効率的だ。
それなのに、”いやいやこの自分で調べてたどりつた経験をしたからこそ「ジャン・フォートリエ」は印象に残ったのだぞ”とこの期に及んでメリットを探そうとするわたしの思考よ。
どこまで倍速視聴に毒されているのだ。

アマゾンで、教科書をポチった。
動画はそっと閉じ、ありがたいことにしばらくはアーカイブは消えないらしいので、教科書来てから視聴しよう。

講義の内容はめちゃくちゃ面白い。
ただ、ここまで聞いた内容も、リアルタイム参加してないときのものは、文脈が理解できないままな可能性が高いことがわかったので、もう一度聞く。

効率を求めるとは不毛なものです。
誰からも強要されたわけでもなく仕事とも無関係な美術史を効率よく学ぼうとする自分の姿勢は非常に滑稽である。

そもそも、教科書買うのをしぶって図書館でかりてやりすごしていたのも、(まあ、自分が無職でケチの村に入村しかけているというのも大いにあるけど)本を際限なく購入していたら、もうしまう場所がないよ、、、増える一方だよ、、、という効率目線だったのです。
本なんてどこにでもしまえる。
こういう本は買った方がよい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?