がんこvol

『Tokyo発シガ行き➡︎』 (2019年2月号アーカイヴ/第4回) "灯台もと暗し"

(※アナログ形式で読みたい方のために記事の一番下⬇︎に 原稿を画像として貼り付けてあります。解像度も十分あるかと思いますのでそちらが良い方はこちらをプリントなさってくださいませ!)

       ✴︎ ✴︎ 以下、アーカイヴ ✴︎ ✴︎

画像1

「守山は昔、森山って書いたらしいよ。けれどある時から“守山”になったんだって。どんな秘密を守っているのかな」
そう言ったのはわたしが毎週月曜にFBで更新しているエッセイ(月モカ)にも時折“スピリM” として登場する友人。整体師の女性で不思議な、視える、能力がある。この話に根拠はないし、そのようなことが記されている歴史的な文書も多分ない。ただ、言葉はわたしの心に深く刻まれた。守山はある時から何かを”守って“いる!?それが年始の「伊勢遺跡」に繋がる。

 ところで皆さん、守山の地に「伊勢遺跡」なるものが存在すること知っていましたか? わたしは最近まで知らなかった。昭和54年、守山市の伊勢町から栗東市に広がる田んぼの下から発見されたそれは、弥生時代後期の遺跡としては国内最大級で、生活の匂いのする土器などがあまり見つかっていないことから、政治や祭祀を行うところだったらしい。へえ! それってもしかして「邪馬台国!?」
びっくりして調べると、ネットには「邪馬台国近江説」というワードでちらほら出てくるし、それにあやかって守山市が毎年「もりやま卑弥呼」というコンテストを開催していることも分かった。
ちゃんとそういう歴史を市のPRに反映していてスゴイ。ウケる。笑。
もりやま卑弥呼に、本気で、なりたい。

人は世界を知りたいと思って、海を渡り旅をする。

画像2


例えば飛行機を乗り継いでギリシャの島々へ。
遺跡や宮殿跡なんかを訪れ、人類の“かつて”に思いを巡らせる。けれど実は、生まれた土地に秘密が眠っていることがある。よく「タンスの2つ目の引き出しを見て」とか「キッチンの下の開きを開けよ」「本棚二段めの右から3冊めの39ページ」などなどヒントを辿ってプレゼントを見つける遊びがあるけど、わたしのこの4年はまさにそんな感じ、2015年から始まった何かを辿り、2019年の1月にわたしがたどり着いたのは「伊勢遺跡」だった。幻冬舎と石原慎太郎さんの企画で行われた2015年のアラビヤ行きが、わたしの人生を変えた。
「ドバイ行きませんか?」そんなPOPなノリで幻冬舎の編集者から連絡が来たのは2014年の秋のことで、わたしは「行く」と即答した。石原慎太郎さんの持つ財団の仕事で作家の交換留学。まるひと月、UAEで生活をする。行くのは女性の書き手2人、男性の書き手2人、実は審査がありかなりの希望者で混戦していたらしいのだが、わたしはそれを知らず、答えた段階で決まっていると思っていた。知らないって平和。笑。わたしは知らないうちに審査に受かり、審査に受かったことも知らないまま旅立った。出発前の懇親会で石原慎太郎さんはこう言って激励してくれた。
「芸術家たるもの、一世を風靡せよ」

画像3

アラビヤは、これまで旅したヨーロッパやアメリカ、いわゆる「西」の方と全てが違っていた。わたしは今まで世界を、西側しか見てこなかったのだ。「東」から語られる世界は、わたしたちが報道などでこうかな? と思っているものとは全然違って、知らない世界に来たような感じがした。中でもシャルジャという街(サッカーアジアカップの試合が先日まで行われていた)のイスラム博物館に行った際、そこの天文学の部屋でわたしが受けた衝撃は凄まじかった。数々の人類の叡智を目の当たりにして、簡単に言うとわたしはこう考えたのである。文明や科学が、今と比べて昔は劣ったという考えは、もしかしたら間違っているのかもしれない。もしかしたら太古の時代、やっぱり物凄い文明が一度栄えて、そして滅びたのかも。この世界観は、宮崎駿さんのアニメや星新一さんの小説などでも触れたことはあったけれど、まさに実感として自分が“それ”と対面した瞬間だった。体がしびれて、手の先はとても冷たいような、それでいて脳内は目まぐるしく、何かを見つけようとしていた。


日本に帰ってからのわたしは、いつしか人類のルーツについて考えるようになっていた。それで古代文明や、宇宙のことなんかを、ちょこ、ちょこ、と調べ始めた。ギリシャに行ったのもそういう流れからだった。

画像4

(⤴︎ギリシャ。サントリーニ島の海岸にてエーゲ海にぽちゃんしてみる。周りが火山の噴火で溶けた溶岩なので黒く、なんだか恐ろしかった)

けれど、調べれば調べるほどそこから導き出される重要な街は「近江」なのである。美内すずえさんの「アマテラス」も、秘密を開けるために琵琶湖に出かける、というところで漫画が止まってしまっているし、手塚治虫さんが亡くなる前に描いた「火の鳥」は“太陽編”つまり滋賀の犬上郡を舞台にして壬申の乱を軸に展開される狗族の物語だったりする。東京で調べているのに「ここに太古の秘密があるぞ」と出てくるのは、幼い頃に過ごした懐かしい地名ばかり。そしてわたしは、砂漠の果てまで出かけて行ったのに、チャリンコ圏内の「伊勢遺跡」のことを、存在すらも知らなかった。発掘された年に生まれたのに。何をやっていたのだろう、世界を旅して扉を開けて、そこで見つけた言葉は「近江」「守山」生まれ育った町だったのである。

 今回ちょっと、このページで収まらないようなことを書き始めてしまったので、また少しづつこの物語は書き進めて行きたいと思う。
元旦に訪れた「伊勢遺跡」は実際のところ、何の変哲も無いさら地で、笑、あまり神秘的な体験はできず、
(あっ、あそこに白い鳥が飛んでいるけど神様の使いかな)
とか無理やり何かにこじつける。その後、チャリで西友に寄ってすき焼きの具材を買い足し、前回の「すき焼き大宴会」が始まったというわけ。

画像5

☆2019年3月号「わたしのCOSMIC BOX」は、本のがんこ堂さんの各店舗にて取り扱い中です!(3/21現在)

      ✴︎  ✴︎ 以下 アナログアーカイヴ ✴︎  ✴︎ 

画像6

画像7

                                                         <2019年2月号>  挿絵/ 杉田美粋(妹) 

がんこエッセイの経費に充てたいのでサポート大変ありがたいです!