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タイトルだけ見ると人身売買みたいだが、そういうわけではない。「好きな人情報」、つまりA君はBちゃんが好き、BちゃんはC君が好き、みたいな「好きな人情報」を売買していた。おそらく、最初にやった商売みたいなのはコレ。

中学生の頃、なぜかたくさんの恋愛相談を受けた。特に恋愛経験があったわけでもなく、解決策を導くわけでもなかったが。

最初はウンウンと話を聞いていたのだが、数が多くて次第に誰が誰を好きなのかわからなくなってきた。そのため、当時姉からのおさがりで受け取っていたポケベルでその情報を管理することにした。(携帯電話とかまだ普及してなかった時代があるんだよ。)ちょっとヤンキーちっくな女の子1人からしか鳴らないポケベルは、「好きな人情報」で埋まっていった。

ある日、僕がAちゃんから相談を受けていることを聞きつけたB君が僕にこっそり聞いた。

「Aちゃんの好きな人って誰?」

もちろん「教えない」と答えたけど、B君は食い下がる。

「絶対誰にも言わないから!」

それは絶対に誰かに言う奴の言葉だ。「無理やって!」と強めに言ったが、B君はまだまだ食い下がる。しばらく同じようなやりとりを繰り返した後、B君が言った。

「2,000円で売って!」

お金を出すと言われたって、そんな簡単に教えるわけには…………


え?2,000円?


当時の僕の1ヶ月のお小遣いが2,000円。そこから無駄に持っていたポケベル代1,000円が差し引かれて、手元には1,000円しか残らなかった。そんな僕にB君は2,000円で売ってくれと言ったのだ。


いや、売るでしょ。


ただし、追加で条件を付けた。


「僕の知らない、誰かの好きな人の情報を教えて。」


今思うとこの条件を付け足したのは天才だったと思う。ここから相談もされてない、一回も話したことのない人の「好きな人情報」がさらに集まるようになった。

そして売上は一気に伸びるのだが、大問題が発生する。ヤンキーがカツアゲした金で「好きな人情報」を買い、その情報でカツアゲをした挙句、僕に伝えるための誰かの好きな人を聞き出していたのだ。

自己紹介に軽く書いたが、超ヤンキー校だったため、休み時間の度にカツアゲが至る所で起こっている学校だった。そして、僕はこれでカツアゲされてなかったみたい。

案の定、職員室に呼び出され注意を受けポケベルは没収されて「好きな人情報」の販売は終わってしまったのだが、当時の僕には破格の10万円ぐらいが儲かった。

そして僕は罪悪感を感じてカツアゲされた人に少しずつお金を返したとかだと少しは美談になるんだろうけど、実際は友達とゲーセンのメダルゲームに全部使っちゃった。

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