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サントリー知多とグレーンウイスキーの話


サントリー知多といえば、最近急激な値上げが発表されたウイスキーで、現在急速に在庫が消滅している。多分4月までは余程血眼に探さないと買えないんじゃないかな?

https://www.suntory.co.jp/news/article/14499.html  より

まあ、店も安く買って高く売るのが商売の基本だろうから在庫を隠してたりするんであろうがそれにしてもエゲつない話やのう

さて、この知多であるが、グレーンウイスキーであーる。前も書いたけど国産グレーンを作れる所は実はそこまであるわけではなく、またこのグレーンウイスキーっちゅーもん自体が割と結構謎めいている酒であり、一般的なイメージとしては「安酒」というイメージだが、この値上げ表見てもわかるように実はそんな安いもんでもないようである。

公式サイトの説明

見辛いわ…

トウモロコシなどの穀類を主原料とする、グレーンウイスキー。
連続式蒸溜機で蒸溜し、樽で熟成させます。
風味が軽やかで、穏やかな性格のため、サイレント・スピリッツと呼ばれています。

https://www.suntory.co.jp/whisky/chita/about/

なお原料の比率はここが詳しい

原料はイエローデントコーン(トウモロコシ)約9割、アメリカ産。糖化用大麦麦芽約1割、フィンランド産など。

https://jwic.jp/distillery/chita/

何で知多が選定されているかというと、このエリアは知る人ぞ知る?スーパー埋立工業地域であり、ここに穀物の船が到着するのダ。

従ってトウモロコシなどは上記で見ているようにほぼ全量が輸入である。まあモルトも輸入ではあるが。

グレーンなのに、モルト?

グレーンウイスキーの知識としては「トウモロコシみてえな穀物」というのはよく知られているが、原料をみるとほとんど「モルト」が記載されているだろう。


ちなみに記載が「グレーン、モルト」の順番となってる場合グレーンの方が比率が高いとされる。酒においてはあんまり厳密じゃなくてもいいようだが、あえてグレーンを先に書いてるようなウイスキーはグレーン比率が高いのは間違いなさそうである。

何故モルトが必要なのか

答えは簡単で、トウモロコシだけだと糖化しねえからだ。酒には糖化のプロセスが必要である。前の説明に戻ってよく見てみよう

原料はイエローデントコーン(トウモロコシ)約9割、アメリカ産。糖化用大麦麦芽約1割、フィンランド産など。

https://jwic.jp/distillery/chita

ウイスキーというのは実にこの麦芽が放つ酵素で糖化している(ちなみに焼酎は「麹」がこれを担当する)。トウモロコシは放置しててもこの酵素が得られないため麦芽を必要とする。その割合は実に1割でいいというのがまた面白い所ではあるが。

従って原材料にはグレーン、モルトとなっていても別にモルトの酒がバッティングされてるわけではなく、単純に発酵用途ということであろう。

レビュー

基本的にはコーンウイスキーっつーのもあるのか味はペラペラだ。正直こんな高い値段を出して飲むようなもんなのかというのは多いに疑問が残るが、コストの面から高くなりがちなのだろう。そもそもやっぱり、繰り返しになるけどグレーンというのは安酒ではないらしいんだよね。だから国産ジャパニーズウイスキーメーカーはシングルモルトばかりが出来上がる。もちろん、現代はシングルモルトの方が評価されがちだからあえてブレンデッドに手を出す必要はないのかもしれないが、国産でなかなかブレンデッドウイスキーが作れないのはコスト面にも理由があるのではないかな。

ちなみにジャパニーズウイスキーの新定義は以下の4つである

  1. 原材料は麦芽を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること

  2. 国内の蒸留所で蒸留すること

  3. 原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること

  4. 日本国内で瓶詰めすること

外国産の原料でもいいが国内で必ず蒸留しないといけない。この基準が結局ジャパニーズブレンデッドを作るときの多いなる障壁になるのは明かである。

ただ、世界のウイスキーを見るとグレーンは安く作れるものもあるようで、これが結構うまかったりもするのでより一層知多とかが割高に見えてしまう。この辺はどうしても穀物を輸入に頼らないといけない事情もあるんだろうし、高かったとしてもグレーンオタとしては必ず抑えておかないといけない宿命にあるウイスキーではある。

で、味の話に戻るとストレートで飲んでも甘味はあるが、深みにはかけるし、やはり穀物くせえ。これをヨシとするかアシとするかは個人によるんだろうがって感じはあるが、シングルモルトのようにストレートで飲んで心地のいいものかというとそれはほとんど感じない。

ただ、この穀物くさい感じの奴をソーダで割ると爽快感が一気にアップして、うまい。やっぱビールもキンキンに冷えた奴が旨いように、グレーンウイスキーのようなあんまボディーの重たくない奴は冷えた炭酸が妙にマッチするという所である、瓶ごと冷凍してもいい。が、何度もいうけど、そんな飲み方するには値段が高いわね。此度の値上げでさらにもう一段階ギアが上がったときに果たして売れるのか?どうなんだろうな〜

あとがき

知多蒸留所っつーのは見学が基本的にはできない。個人的にはめちゃくちゃ見学したいんだが…よほどのツテがないとできないらしいんだよな。でもネットには見学したっていうブログが結構あって読んでいると面白い。

でですね、知多には熟成エリアがないらしいのよ。つまりニューポッティーな酒だけ作って山崎とか白州(とか近江エージングセラー)に送られてそこで熟成されるんだって。じゃあ知多っちゅーのの配合はどうなってんだよみてえなw。このニューメイクも3種類くらいのバリエーションで蒸留されているらしいから、グレーンと一口にいっても実は奥が深いのである(多分)。まあそういう話を聞いてみたくないすか?

ところで最近、新潟に国産クラフトグレーン蔵ができてこの前試飲してきたけど結構面白かった。まあ連続式蒸留器なんだけど3段と7段の蒸留で味の違うニューメイクを試飲させてもらいましたが、まだ出来たばかりというのと、あとはまだ見学の用意がないようなので、時期が到来したら行ってみたいもんだな〜と思ったりしたのでした。


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