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坂本移動どうぶつ園 未完のバナナ トルコのおっさん

吉祥寺のココナッツディスクで
坂本移動どうぶつ園の
「トルコのおっさん」と「未完のバナナ」を購入。

ここのところ仕事も頑張っている。
それなのに定時に退社して帰り道に
スーツ姿のままこんなアルバムを購入してしまった。
どこか悪い事をしているような気持ちよさと
まだつまらない大人に成り切れて無いという妙な安心感があった。

帰り道。帰路を急ぐ。
最近はサブスクのおかげで
聞きたい音楽の殆どは聞きたいと思ったその瞬間に
ダウンロードしてすぐに聞く事が出来る。

だからこうしてサブスク解禁されてないバンドのCDを買って
「早く聞きたいな」とワクワクドキドキしながら
帰路を急ぐのは凄く久しぶりだった。

中央線の中ではずっとジャケットを眺めていた。
ビニールを破って歌詞カードを読んでしまおうかと思ったけど
その欲求はなんとか抑えた。

2枚ともジャケットからして好きだ。

未完のバナナのジャケット

未完のバナナのジャケット。
お寿司と戦車の写真。統一感も無いし
別に意図を持ってる感じでも無い。
最近アルバムを作りたいと思っている自分にとっては凄く参考になる。

ジャケットは特に統一感無くても
最近の自分が好きな物をペタペタ貼ろうって思った。
好きな物には極力全部好きな物で固めたら楽しそうだから。



トルコのおっさんのジャケット


トルコのおっさん。
「また遊ぼうね」「嫌だよ」って会話が個人的に凄く好きだった。
「また遊ぼうね」「いやだよ」って言い方が柔らかくて凄く好き。
特に「いやだよ」な感じが好き。
ジャケットを作った人(恐らく本人達)の人格が出てる気がする。


やっとこさ家に帰宅。
CDプレイヤーはリビングにあるが
リビングは家族が団欒中なので
自分の部屋に直行し、
パソコンに取り込みながらCDを再生。

まずは未完のバナナ。
帯の峯田が「テクノ」と言っていたが
凄くテクノな一枚だった。

個人的には「社会の敵」が凄く好きだった。

始まりで繰り返される「お尻」というフレーズ。この段階でこの曲にグッと興味を持たされて、どんな展開になるのか楽しみにしていたら
サビで「お尻の穴からパブリックエネミー」だ。堪らねえ。
何を食べたらこんなフレーズが思いつくのだ。
うんこは社会の敵だと言いたいのか
社会の敵はうんこだと言いたいのか
社会の敵なんてクソだと言いたいのか。

多分本人達もそんな意図はないだろうし
こちらもそんな事考えるような頭にならない。

ただただ「お尻の穴からパブリックエネミー」っていうフレーズの語呂の良さに気持ち良くなってしまう。


「お尻の穴からパブリックエネミー」なんて
比喩でも無ければ本来なら存在し得ない文章だ。

だけど物凄く自然に耳に入ってくる。
その理由は、多分だけど
パブリックって単語の中に「ブリッ」って擬音が入ってるからだと思う。

お尻の穴から物が出てくる時の擬音は大概「ブリッ」だ。
「お尻の穴」「ブリ」という音の流れが
僕達には染み付いているから
文章として破茶滅茶でも
音として凄く自然に入ってくるのだと思う。


「踊り明かそうバイトまで」も個人的にお気に入り。
僕は電気グルーヴのN.Oがすごく好きだ。
その理由は、
今まで俺が聞いてきた音楽であれば、
少し大袈裟に言って憂いだり、ルサンチマンの燃料にしていたような現状
をテクノの機械的なサウンドに乗せ
嘆きも憂もせず淡々と歌っているという所だ。

この「踊り明かそうバイトまで」からは
N.Oで感じた魅力に近しい魅力を感じる。
また、そんな魅力に加えて
特に一番のAメロの部分に作者のお茶目でキュートな人間性も滲み出ている所も魅力的。




続いて「トルコのおっさん」
ジャケットを開くと安物の印刷用紙のような紙がパラッと落ちてきた。
紙を広げてみるとどうやらこれが歌詞カードのようだ。

歌詞カードからしてパンク、もしくはハードコア、もしかしたら雑。
今まで歌詞に衝撃を受けた経験は幾度もあったが
歌詞カードに衝撃を受けたのは初めてだ。

特にすごかったのが「マイジェネレーション」(the Whoのカバー)の歌詞、
というかクレジットだ。

「詞/曲 フーの誰か」
と書かれている。隣にカッコ書きで(かけた訳じゃ無いよ)とも書かれている。
凄くパンクでハードコアだ。
the Whoを「フー」としか書かない感じとか
the Whoの誰が作ったのか調べようともしない感じとか。

めちゃくちゃカッコいい。
感受性の枯れ切った28歳の今でさえ衝撃を受けてるんだから
これを14歳で経験してたら俺どうなってたんだろう。多分今より間違えた方向に進んでいた気がする。


楽曲も歌詞カードに負けず劣らずのパンク、ハードコア(もしかしたら雑)な楽曲だらけ。

語弊はあるけど「良い曲を作ろう」って意思が全く感じられない。
その瞬間その瞬間のリアルな感情や、面白そうだと思った事を写真に撮って、音に現像したような感じだ。
だからなのか、歌の中にルサンチマンや承認欲求みたいな異物や、嘘臭さも感じる事もない。
純粋に純度100%で歌ってる内容のみが心に入ってくる。
バンドで言うと、ブルーハーツよりもクロマニヨンズに近しいモノを感じる。

歌の内容だけじゃなくて演奏や曲構成もかなりパンクでハードコア(もしかしたら雑)。

ヒロトはラジオでピストルズの音源を聞いて
「これなら俺でも出来そうだ」と思ったらしい。
50回転ズもブルーハーツを聞いて「俺でも出来そう」と思ったらしい。

僕は根っからのノータリンなので
ピストルズを聞いてもブルーハーツを聞いても
「これなら俺も出来そうだ」なんて思った事がない。


だけどこのアルバムを聞いて僕は
カッコいい!!と思うと同時に、
「これなら俺でも出来そうだ!」と思った。

もう28歳。自分の能力や無能加減も
体力や気力の大幅な減退も身に染みてる。
それでも、「俺でも出来そう!」「俺もやってみよう!」と思わせてくれるって、
14歳の俺を騙すより、もっとすごい事されてる気がする。

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