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おかえり人間

機械になれたら、と思う時がある。
私の場合は、それは単純作業をしている時だ。

ひたすらに同じ作業を繰り返すことが、私は大嫌いだ。同じ作業の繰り返しなら、原理的にはどんなものだって機械を使って自動化できるはずだ。
サボりたがりで面倒臭がりの私がプログラミングを学んだ結果、こうした思いが頭をよぎってしまい、単純作業の苦痛さはどんどん増していった。

そんな私が、紙の表をひたすらにエクセルに転記していく作業をしなければならなくなった。絶対機械でできるよ〜と思い、OCRなど試したものの、表ってなかなか綺麗に読み込んではくれない。やっぱり、手でひとつひとつ、打ち込んでいかなくちゃいけない。

一番嫌いなタイプの作業だけれど、やらなきゃいけない。
だから、できるだけ苦痛を感じずに早く終わらせたい。

こんなときは、自分を機械に近づけていくことを考える。
目線を紙に落とし、数値を認識し、即目線をPCの画面にやり、キーボードを叩く。また目線を紙に落とし、数値を認識し、ーーの繰り返しを、一定のリズムで行う。

そうしていると、1件作業が終わるごとに、大きく伸びをして、
「ああ、わたしは人間なんだーー!!おかえり人間のわたし!!会いたかったよ!」
と叫びたい気分になる。開放感が、尋常じゃない。
この作業の後に食べるご飯は、いつも食べているカップ麺でもすごく美味しく感じる。外に出れば、見慣れた景色が輝いて見える。友人とのたわいもないおしゃべりが、とても楽しい。恋人が、ちょっとだけイケメンに見える(気もしないでもない(いや、しない))。

さて、このいやーな作業も、今日でひとまずは一段落。
今日、この作業が終わったら、「おかえり人間のわたし!!!!」と本当に叫んでしまおうかな。そして、夕ご飯に好きなお弁当屋さんのからあげ弁当でも買って帰ろうかな。

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