DEFTONES:2013年インタビュー

個人的に世界で一番好きなバンド、DEFTONESのチノ・モレノ(vo)のインタビューです。2012年に7作目『KOI NO YOKAN/恋の予感』をリリースした後、Ozzfest Japan 2013出演のために来日したとき、出演前に行うことができました。バンドとしては、オリジナル・メンバーのチ・チェン(b)が亡くなってから1か月程度しか経っていないなかでの来日ではあったものの、コンディションは充実していたようで、気さくに応じてくれたのをよく覚えています。

『KOI NO YOKAN/恋の予感』についてはリリースのときにインタビューが実施されていた(担当は僕ではなかったです)ので、この時はチノのサイドプロジェクトについての話題を主にしてみました。実際、DEFTONESのメンバーでも一番課外活動が一番多いのはチノで、加えてどのプロジェクトでも、本人の嗜好が色濃く反映されているんですよね。チノのことだけでなく、DEFTONESを構成する要素を理解するうえで、参考になる話も多いと思います。余談ですが、話している途中で「お前詳しいな」と言ってくれたのがうれしかったです。最後のTHE DILLINGER ESCAPE PLANの件は、まぁ愛嬌ということで。

文中でも出ている†††(CROSSES)ですが、2014年のセルフタイトル作以来となる新曲を制作しているそうです。DEFTONESとしては2020年にアルバムを出したものの、新型コロナウィルスの影響でツアーができないので、音源を作るのにあてたのかもしれないですね。

translation by Yukiko Amita

――日本に来るのは、2011年2月に東京で1公演のみのライヴをやって以来ですね。
「また日本に来られたことが嬉しいよ。日本はライヴをやるには素晴らしい国なんだけど、そう簡単に来られる場所ではないからさ。しかも今回はOzzfestだし。何度もアメリカで出演したことがあるから、どんなフェスなのかはある程度わかっている。その日本版にも参加できて光栄だよ」

――新作のタイトルも『KOI NO YOKAN/恋の予感』と日本語ですしね。
「正直言うと、ここ数年はチのこともあって、バンド内が不安定になってしまうことが何度もあったんだ。だから今回はポジティヴで、前向きな気持ちになれるような曲を書きたいと思っていたんだよね。それもあってなんと言うか、自分たちにとってセラピーのような感覚だった。このタイトルも、ピッタリだと思う。ヘヴィなバンドのアルバムタイトルって、ダークなものになりがちだけど、オレたちもそうする必要はないしさ。このタイトルは、何かこれから素敵なことが始まる瞬間を意味していて、とてもポジティヴなものだよね」

――DEFTONESとしてはツアーの最中ですが、6月の下旬にはISISの元メンバーとやっているPALMSとしてセルフタイトル作をリリースしますね。いくつものバンドが同時進行していると、混乱したりはしませんか?
「むしろ、どれも楽しみにながらやっているよ(笑)。DEFTONESは昔ほどツアーをたくさんやっているわけではないから、合間にできることはなんでもやるようにしているんだ。音源の制作も若いころからずっとやってきたことだから、単純に楽しいものだしね」

――チノは以前からTEAM SLEEPをやっていましたし、去年はFARのショーン・ロペス(g)と†††(CROSSES)を始めましたよね。ほかのメンバーに比べて、いろいろなことをやっている印象です。
「†††はまた新しいEPを出す予定があるし、実はTEAM SLEEPも2006年くらいまでの音源をまとめて、アルバムとしてリリースしたいと思っているんだ。たしかにそう考えると忙しいね(笑)。どのプロジェクトも、いつまでに完成させなければならない…というデッドラインはまったくないから、メンバーのスケジュールが合うときに集まって、みんなで楽しくやるというスタンスでいられるんだ。今も新しくBAD BRAINSのメンバーたちとジャズやフュージョンっぽいバンドをやろうと話をしているところ(注:2016年にSAUDADE名義でリリース)。どんな音楽にも挑戦していきたいし、楽しみつつ、クリエイティヴィティを追求していきたいんだ」

――新しくプロジェクトを始めるときは「DEFTONESではできないことをやりたい」という思いがあるんですか?
「いや、どれも友だちとなんとなく話しているところから発展して、スタジオに入ったり曲作りをするようにして始まったものなんだ。そもそもDEFTONESはヘヴィなサウンドが中心ではあるけど、音楽的な制約がないバンドだからね。DEFTONESでできないことを…という感覚はないよ。活動の中で新しく学んだ方法論やスタイルを、音楽を通して出会った人たちといっしょに試してみたいんだ。それに、オレはほかにこれといった趣味がないからさ。TVもあまり観ないし、ゲームにも興味がない(笑)。どうせなら音楽を作って、プレイすることに時間を使いたいんだ」

――もちろんそれぞれ違ったサウンドではありますが、どのプロジェクトでもニューウェイヴやアンビエントといった音楽の色が強いと感じます。
「オレは子どものころから色々な音楽を聴いてきたけど、特にニューウェイヴやエレクトロニクス・ミュージックが好きだった。ぶっちゃけ、メタルはほとんど通ってなかった(笑)。むしろ15歳でDEFTONESを結成してから、そういった音楽に触れるようになったくらいさ。だから今でもニューウェイヴを聴くとノスタルジックな気分になるし、シンセサイザーやドラムマシンのサウンドが体にしっくりくる。だからDEFTONESから離れると、そういった側面がより前に出てくることになるんだろうね」

――またチノの音楽に共通して感じるのが、言葉では表現しにくい、とても微妙な感情をていねいに描いているということです。
「うれしいね。たしかに微妙なサウンドの揺らぎだったり、複雑に重ねたテクスチャーだったりで、的確な言葉が見つからない感情を表現しようとしているよ。それに、あえてハッキリさせたくないようなところもあるんだよね。言葉というのは、ときにダイレクトすぎて、ニュアンスやフィーリングを伝えるのが難しいことがある。歌詞を書くときに特に難しいのが、いかに少ない言葉で多くのことを語るか…ということなんだ。例えば、日本にMONOというバンドがいるよね。彼らは歌詞のないインストゥルメンタル・バンドだけど、サウンドだけでとてもたくさんのことを語っていると思う。文字の情報はせいぜいアルバムや曲のタイトルだけで、とても大きな感情を伝えてくれるし、とても深い経験をさせてくれるんだ」

――もうひとつ、どんな曲でも実験的で複雑な面と、キャッチーでわかりやすい面のバランスが絶妙だと思います。
「たしかに実験的で入り組んだ音楽も好きだけど、同時にマイケル・ジャクソンやプリンスみたいな、王道のポップ・ミュージックも大好きだからね。ポップスならではのフォーマットも、体に染みついているんじゃないかな。音楽を作るとき、いろいろな実験をしてみるのは、たしかに楽しいことではある。でも、やりすぎてただの自己満足になってしまうようなことは避けたいんだ。だからポップスのフォーマットをある程度キープしつつ、いかに実験的な要素も盛り込むか…というのは、とても難しいバランスではあるけど、意識しているね」

――今後、コラボレーションしてみたいと思う人はいますか?
「可能だったら、PJ・ハーヴェイやプリンスなんかといっしょに、ゼロから音楽を作ってみたいね。昔TOOLのメイナード(・ジェイムズ・キーナン/vo)と“Passenger”でコラボしたときは、その場で思いついたアイデアを交換しながら歌詞を書いたんだ。先に“こうしよう”なんて話し合いを一切せず、その瞬間に生まれるものに興味がとてもあるね。なんていうか、こうして年をとって経験を重ねていくと、自分にはまだまだ知らないことがたくさんあると気付くんだ。だから、音楽をこれまで以上に作り続けていきたいという気持ちが強くなる。体力的に続く限り…今後テクノロジーが発達したら、指一本でできるようになるかもしれないけど(笑)、死ぬまでずっとやってきたいよ」

――コラボレーションといえば、先日アメリカで行われたGolden Gods Awards 2013で、THE DILLINGER ESCAPE PLANのステージに飛び入りしましたね。
「あー、あのときね(笑)。まず彼らが2曲やってからオレが参加する形だったんだけど、オレが出ていったとき、グレッグ(・プチアート/vo)が顔中血まみれでさ。そのままハグしようとしてきたから“おい、触んなよ!”って感じだった(笑)。でも彼らのことは純粋に好きなバンドだし、いっしょにDEPECHE MODEの“Behind The Wheel”のカヴァーをやれたのも楽しかったよ」

――でも、曲が終わったら一目散にステージから去っていきましたよね(笑)。
「だってグレッグがいきなり松明を持ち出したら“これはヤバい”と思うだろ?実際、あの後すぐ火を噴いたうえにドラムセットを破壊までしやがった。巻き添えを食らわないように、急いで逃げたんだ(笑)」

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