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今年聴いて良かった奴ベスト10 その8 JZ Replacement

  JZ Replacement / DISRESPECTFUL (2020) ロシアのサックス奏者Zhenya Strigalev(ジェニア・ストリガレフ)と英国のドラマーJamie Murraye(ジェイミー・マーレイ)がUK拠点に活動するプロジェクトJZ Replacement。ゲストとしてTim Lefebvre(ティム・ルフェーブル)を招いたトリオによる一枚。アルタード・ステイツやルインズのような爆速即興系に親しいものを感じる。ロフトジャズやパンク的なもの、UK

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    • 今年聴いて良かった奴ベスト10 その7 Yuri Goloubev

      Yuri Goloubev / Two Chevrons Apart (2020) モスクワ出身のベーシスト、Yuri Goloubev(ユーリ・ゴロベフ)によるリーダー作。1972年生まれだから19歳の時ソ連崩壊を体験した人だろう。自身のリーダー作としては恐らく4作目であり、英国のレーベルからのリリース。補足としてTim Garland(ss, ts)とJohn Turville (pf)はイギリス人、Asaf Sirkis(ds)はイスラエル人。 調べてみたところDO

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      • 今年聴いて良かった奴ベスト10 その6 潮先郁男

        さがゆき, 渋谷毅, 潮先郁男 / We'll Meet Again (2008) 潮先郁男(gt)をリーダーとし、さがゆき(vo), 渋谷毅(pf), の3名による連名。 さがゆき氏は声による完全即興からスタンダードな歌までこなす幅の持ち主、渋谷毅氏は渋さ知らズから「おかあさんといっしょ」への楽曲提供まで幅広く(『小沢健二 / 球体の奏でる音楽』のピアノと言うと通じやすいかもしれない)こなす超ベテラン、そのさらに6つ上で1933年生まれの潮先郁男氏76歳の時の初リーダー

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        • 今年聴いて良かった奴ベスト10 その5 和田直

          和田直 / ブルース・ブルース・ブルース (1977) 言うほどThree Blind Miceの歴史には詳しくないし、カタログを舐めるように聴いたこともない。かつて日本のジャズを聴き漁った時期はフリージャズ狂いであったのでモダンジャズの領域は疎い。ライブで観る機会のない名古屋や大阪を拠点とするアーティストとなると尚更である。日本でジャズ・ブルースをやらせたら右に出るものはいない和田直。氏は2021年に亡くなられたそうだ。 強烈なグルーヴは今田勝(org, pf)、小原哲

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        • UK Jazz
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          今年聴いて良かった奴ベスト10 その4 加藤崇之

          加藤崇之 / 森の声 (2019) 鈴木勲グループでの活動や渋さ知らズのギタリストとしても知られる加藤崇之。僕が10代の頃ジャズをやりたくて酔っ払って暴れていたら悪ふざけでキスしてきたオッサンでもある。YouTubeはアルバムとは関係のないライブ。 エレキギターを持つと前衛的でブッ飛んだ即興演奏やソロを繰り広げるが、クラシックギターを持つとたちまち繊細で内省的なプレイになる。本作はガット(クラシック)ギターソロの3作目。 故・津村和彦氏の遺品であるギターを弾くことによる

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          今年聴いて良かった奴ベスト10 その3 Sal Salvador

          Sal Salvador / Music to Stop Smoking By (1963) open.spotify.com 去年『真夏の夜のジャズ』4Kリマスターを観た。そこでSal Salvadorのやたらとパキョペキした音が気になったのである。 1月の自分が書き残していたが、GibsonではなくGretchのギターを使っていたらしい。ベンジーが椎名林檎を打つときに使うアレである。これがパキョペキョ感の一員なのではなかろうか。 タバコジャケは東海岸Rou

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          今年聴いて良かった奴ベスト10 その2 Franco Cerri

          Franco Cerri / Chitarra (1964) 2021年はハッピーなソウルが受け入れられた年だとか聴いたが、静かでポジティブな感情というものを今年の自分は西海岸やヨーロッパのジャズに求めていたような気がする。 イタリアンジャズというのはとにかくレコードが高価で取引されていて録音はそんなに良くないけれど時々とてもカッコいいものがある、それぐらいのイメージしかない。聴き漁るために金を積む必要がある恐ろしいジャンルだと思っている。 今年はジム・ホールを筆頭にと

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          今年聴いて良かった奴ベスト10 その1 Wayne Krantz

          Wayne Krantz / Krantz Carlock Lefebvre (2009) 「今年良かった10枚」のようなものを書かなくなって久しいが、ちょっと時間が確保できたので書いていたらとんでもなく長くなった上に推敲も面倒くさいのでとりあえず1枚目の話をしようと思う。 最近タワレコの通販でセールが行われると半額や7割引になったデジタルエサ箱からまとめて注文することが癖になってきている。タワレコ実店舗のワゴンは9割ハズレしかないのだが、通販のセールはジャズの1000円

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          それは旧共産圏のジャズだった

          トヌー・ナイソー、澤野工房(ヨーロピアンジャズ専門のレーベル)のCDで聴いたな~と思いながら調べ直したらエストニアのピアニストであることを知る。エストニアということはソ連崩壊の91年まで鉄のカーテンの向こう側の人間だったというわけである。 旧共産圏音楽はソ連国有レーベルメロディアに統制されていた分、奇妙な進化を辿っており狂ったプログレバンドが東欧にウジャウジャとひしめいていたりいるのだが、トヌー・ナイソーのジャズは基本的にストレートでありながら、やはりどこか西側からズレた部

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          村田和人の四分音ズレた音楽が夏の蜃気楼になる

          この前(昨年末)ディスクユニオンで買った『村田和人 / ひとかけらの夏』 山下達郎が以前のサンデーソングブックのレスポール特集回で「台風ドライブ」をかけていて非常に気に入ったのだがサブスクにはないのでCDを購入。爽やかだが暑苦しくないロック。山下達郎プロデュースの力によるところも大きいのだろう、リード曲「一本の音楽」はもはや歌以外山下達郎ではないかとツッコミを入れたくなる。主に「ポケットに入れて~」の「てヘェ~」の跳躍と声の裏返し方がなのだが。 「台風ドライブ」の方はどこ

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          2020年にもなって2001年のアニメことエイリアン9の主題歌の話をする

          2019年一番刺さったアニメがエイリアン9。2001年のOVAだが? デケデケしたテクノ的ベースを60年代のGS~サーフィンホットロッド的ガールズポップ歌謡曲(前川陽子か?)の匂いと繋げた短調のAメロから80年代末Bメロ(渡辺美里のMy Revolutionなんかを彷彿とさせますね)を経由してアニソン然とした長調のサビへ切り替わる様が気持ち良い。最高ですね。 EDも最高なんですね。歌とセリフが被さって同じ言葉を先読みしてゆくギミック、それを利用して主人公3人のバージョン違

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          CD滅亡時代にサブスクで聴けないジャズをCDで聴く~ステファン・グラッペリの巻~

          「Stéphane Grappellii / And His American All Stars 1978」 Stéphane Grappelli (vln) Bucky Pizzarelli (gt) Roland Hannna (pf) George Duviver (b) Oliver Jackson (ds) フランスのジャズレーベル、Black & Blueのリイシューが行われていることに気付き、気になるものをリストアップしたが一部サブスクに存在しな

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          ミナスもいいけどサンパウロもね

          ダニ・グルジェルは娘、デボラ・グルジェルは母。最初に存在を知ったのは新宿のディスクユニオンラテン館だっただろうか。ジャケットだけ覚えているがまともに聴くのは初めてかもしれない。 2013年からのアルバム4枚から編纂されたベスト盤。2017年のアルバムであるが清々しいほどのブラジリアンジャズ、ジンボ・トリオなどを筆頭とした深い関わりの中で育まれてきた彼女たちの音楽は新世代のエリス・レジーナのようである。

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          世界中の国歌を片っ端から聴いた

          起床即ソ連国歌を鍵盤ハーモニカで演奏し始める。何故。ド頭のデーンがコードだとただのCであることに驚く。クラシックだと超強力なトライアドが鳴っていることがよくあるのだな、やはり。 以前からどこか一つのオーケストラや音楽隊ではなくそれぞれ自国の音楽隊が演奏した国歌たちをまとめて聴きたいと思っていたのだが、Spotifyであればそれが半分ぐらい叶えられることに気付き、National Anthemなプレイリストを垂れ流しにする。バングラディシュの国歌などが中東の音階混じりで美しい

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          坂本龍一のピアノトリオがいつの間にか出ていた

          坂本龍一のアルバムで一番好きなのがピアノトリオ編成である『1996』なのだが(Jaques Morelenbaumの変態チェロと元NYフィルコンマスヴァイオリニストのDavid Nadienが組み合わさった「Rain」が白眉)、2012年に再びピアノトリオ編成のアルバムを出していたことを知らなかった。1996とはまた違う楽曲達があの張り詰めた空気で聴けることは素晴らしい。このアルバムのヴァイオリンはカナダの若き才能Judy Kang。

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          ボサノヴァが溶けたバターになってしまうまで

          ジョアン・ジルベルトのライブ盤『João Gilberto / Live At The 19th Montreux Jazz Festival』を追悼記念に購入し、なんとなく流し聴きをしていたのだが、その中の「A Felicidade」が素晴らしい。 細馬宏通氏は著書「うたのしくみ」の中でジョアンとボサノヴァについて触れており、その中でボサノヴァは同じ歌詞を何周も何周も歌い続けることで高揚感を生み出すという解説をしていが、まさにそのボサノヴァのリピートによって聴衆が徐々にた

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