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2024年のライオンズを展望する【野手編】

プロ野球ファンにとって"お正月"は三度迎えます。まずは1月1日、暦におけるお正月。そして今年だと3月29日のプロ野球開幕日。さらにもう一つ、キャンプインを迎える2月1日。ライオンズの場合は昨年から短期集中型へ変更した為、敢えて足並みを揃えず、2月6日にお正月を迎えます

紅白歌合戦でもそうですが、一番の大物がトリを務めるのは世の常識ですからね。満を持してキャンプインということで

紆余曲折はありましたが、山川穂高のFA移籍に伴う人的補償も甲斐野央に決まり、よほどのことが無い限り、いまのメンバーで開幕を迎えます



ポジション別分布図



年度別分布図


支配下登録63人、育成枠登録26人、過去最大となる総勢89人の大所帯。怪我人や体調不良による離脱者がどれだけ出るか読めない難しさもありますが、選手が足りなくなり三軍の試合を延期せざるを得なかったこともありましたので、これが余剰人員を出さないMAXの人数なのかどうか

また昨年、ホークスにおいて課題となった「三軍&四軍選手のモチベーション低下問題」を参考にしたかどうかは分かりませんが、最大7人分の”空き”を作り、競争を促しています

ちなみに年度別分布表を見ていただければ分かるように、1999年代以降(24歳世代)以降の選手が43人とほぼ半数近くいるのも特徴的

※2023年開幕時:総勢83人/24歳世代以下31人



野手編



2024年野手デプスチャート


・捕手

昨今、NPBにおいてどのチームも絶対的な捕手を敢えて作らない運営にシフトしてきていることもあり、9:1もしくは、9.5:0.5の様に一人の捕手に全てを任せる起用法は減ってきています



埼玉西武ライオンズ スタメンマスク一覧表(2011年以降)


ライオンズも炭谷銀仁朗が正捕手として君臨していた時代は95%以上、森友哉も90%近くを占めたシーズンがありましたが、昨年は正捕手不在となり、結果的に分散型となっています

そんな中、正捕手レースで一歩リードしたのが古賀悠斗。パ・リーグトップの盗塁阻止率を記録し、オールスターゲーム以降は打撃成績も向上。若手中心の侍JAPANにも選ばれるなど飛躍と一年となりました

柘植世那が2023年10月20日にシーズン中から悩まされていた右ひじの手術を行い、実践復帰はおよそ三か月後。開幕一軍入りの可能性は限りなく低いため、古賀とすればここで一気に正捕手レースを独走したいところ

事実上、二番手となるのが6シーズンぶりにライオンズへ復帰となる炭谷。ジャイアンツ、イーグルスと2球団を渡り歩いた経験を基に戦力として有形の力もあり、野球に取り組む姿など無形の力も期待しての獲得となります

昨年は首脳陣から見て、一軍で使える捕手がいなかったのと、もしもの時は佐藤龍世を三人目の捕手として起用する意図もあり、基本は捕手登録を二人にしていましたが、今年は捕手として頭数に入れてないはずなので、登録人数はどうするか?

もし開幕時に三人目を用意しておくなら、古市尊が筆頭となる。というか、岡田雅利は実践復帰までまだ時間が掛かるし、牧野翔矢と是澤涼輔は育成枠、野田海人は高卒2年目なので、古市しか選択肢がない。逆に言うと、柘植の復帰がいつになるかによって、牧野と是澤は支配下登録を勝ち取るチャンスが増える

ちなみにライオンズの捕手は総じてフレーミング技術の評価が低いので、この評価が高ければアドバンテージになる。首脳陣がどこまで評価しているのかは不明だが



・内野(一塁&三塁)

山川が抜けた一塁には好漢で堅実な成績を残していたD.マキノンではなく、メジャーで114本を放つなど、長距離砲としての実績を持つJ.アギラーと契約した



2017年から6年連続で二桁本塁打を記録していたが、昨年は5本塁打。年齢的にもピークを過ぎた感は否めないが、何も問題の無い選手が日本に来るわけもないので、全てを求めるのは虫が良すぎる



本人は日本で結果を残して、もう一度メジャーに戻るとモチベーションを高くしているようで、余生のつもりで来日されることを思えば、それ自体悪い事ではない。まずは活躍してもらい、契約はまた改めて考えればいいので


一方、三塁は佐藤龍世がレギュラー獲得に向け、千載一遇のチャンスを掴み取れるか

【209-55 3HR 打率 .263】

これだけの成績を見せられたら「これでレギュラー候補なの?」と不思議に思う人も多いだろう。しかし

【209-55 3HR 打率 .263/出塁率 .390/長打率/ .378/wRC+ 153】

と成績を追加するとその評価は一変する

打撃における得点貢献を指数化したwRC+では、投手を除いたリーグの平均的な打者を100として見るので、仮に120あれば1.2倍貢献したとなる

龍世が記録した【wRC+153】は200打席以上立ったパ・リーグの選手の中ではチームトップの7位。中村剛也が8位なので、表面上の成績以上に価値のある内容だった

あとはシーズンを通して出る場合、どれだけの成績を残せるか?仮に500打席立って、.270/8本ぐらいの成績であっても、高い出塁率がキープできれば、OPSは.800を超えてくる

背番号も10番に代わり、球団からの期待も一身に浴びる龍世にとって、今後のプロ野球人生を賭けた勝負の一年となる


この二人がレギュラーとして活躍することはその一方で泣く選手も多くいて、その筆頭は渡部健人になるだろう。彼らからポジションを奪えない限り、レギュラーにはなれず、このままプロ野球人生を終えるかもしれない瀬戸際に追い込まれる可能性もある

何かと比較される山川は入団3年が終わった時点で一軍のレギュラーでないのは同じだが、二軍では無双状態で技術的な問題より精神的な問題、敢えて言うなら覚悟が足りなかっただけだった

それに比べ渡部は二軍で無双状態にもなっておらず、そこまで至っていないのが実情。山川は4年目に入り、オールスターゲーム以降、渡部直人や上本達之らベテラン選手にお尻を叩かれ、覚悟が決まってからは一気に覚醒し、E.メヒアからレギュラーを奪取。その後は本塁打王に3度輝くなど日本を代表する打者になりました

果たして渡部は同じルートを歩めるか?大事な一年が始まる


・内野(二塁&遊撃)

二遊間はよほどのことが無い限り、外崎修汰と源田壮亮によるトノゲンコンビにお任せとなる。実際のところ、松井監督もレギュラーとして確定しているのはこの二人だけと明言している



外崎は2020年以降、打撃不振に陥ったが、ようやく復調の兆しを見せ、OPSも.738と7割台に。2018~2019年はOPSが8割以上あったので、それと比べれば物足りない様にも見えるが、wRC+は126→129で昨年は120となっており、投高打低な近年のNPBではよく打った方だと言える

ただ攻守におけるキーマン的存在なので、20-20は難しいとしても、せめて15-15ぐらいの成績は残して欲しい

打撃フォームを改良しているようでこれが上手くハマってくれたら


源田はWBCで右手小指を骨折。治してから実践復帰となったが、実際は小指が外側に開いた状態で元には戻っておらず、打撃ではスイングする際の負担を減らす必要があり、守備でもスローイングはもちろん、持ち替えの際に小指が引っかかる為、極力シングルハンドで捕ろうとするなど、攻守に影響があった



トノゲン二人に言えることだが、32歳を迎える年齢ともなれば守備面、特にUZRにおいてピークは過ぎているとの評価となる。そこで考えられるのが、コンディションを維持するため、意図的に休養日を設ける起用法があるがそれを導入するか否か



ちなみにDELTA TVではUZRの推移がグラフ化されていて、一軍復帰した5月末から7月ごろまでは横ばい状態だが、一か月を過ぎて現状における最適化が分かってきたのか、8月以降は右肩上がりとなっており、休養日は設けなくてもいいのか、一年間トータルで考えると設けるべきなのか

もし計画的に20試合前後休ませる起用法を導入するのであれば、その間は児玉亮涼や平沼翔太、一軍レベルに相当する成績を残せていれば山村崇嘉など候補がいないわけではないし、それを怖がって固定するのは悪手だと思うので、見る方も含め変わっていくべきなのかなとは思います


・外野

あらゆる評論家やファンが触れている「外野手が決まらない問題」

2018年:OPS .798(6位)/wRC+ 118(4位)
2019年:OPS .705(11位)/wRC+ 96(11位)
2020年:OPS .684(12位)/wRC+ 86(12位)
2021年:OPS .582(12位)/wRC+ 63(12位)
2022年:OPS .625(12位)/wRC+ 83(12位)
2023年:OPS .572(12位)/wRC+ 70(12位)

4年続けてリーグワーストの攻撃力というのはひど過ぎるし、裏を返せば伸びしろともいえる。ここを改善すればチームは一気に好転するので

このオフ、チームは一つ手を打った。近年、C.スパンジェンバーグ、B.オグレディ、M.ペイトンとほどほどの守備力を有した中距離打者を獲ってきたが方向転換。メジャーでは未完の大器とも評されてきた長距離砲、F.コルデロの獲得である


中村という生けるレジェンドはいるものの、山川が抜けたことでチームに長距離砲はいなくなった。2020年以降(※2020年は短縮シーズンだったが)、40本以上打ったのは村上宗隆、岡本和真、そして山川のみ。つまり現在のNPBにおいて、真の長距離砲はこの3人だけと言える。それほど希少価値のある選手を失うことが濃厚だったため、近年では珍しくお金をかけて長打を期待できる外国人選手2人を獲得した

ファンもマキノンとの契約延長に消極的な態度だったチームに対して、不満の声も上がったが、現状維持ではなく、さらに上、天井を目指そうとする補強策に不満の声は小さくなっていった感はある。もちろん、マキノンとの別れはさみしいが

ちなみにライオンズの新外国人選手が2人とも20本以上打ったのは、

1963年:T.ロイ(21本)、G.ウイルソン(20本)
2001年:A.カブレラ(49本)、S.マクレーン(39本)
2008年:C.ブラゼル(27本)、H.ボカチカ(20本)

の3例のみ

近年、投高打低化が進み、初年度から活躍することが難しいNPBで”クジ”を2つとも当てるのはかなりの難易度となりますが、当たれば優勝争いに参加できるし、外れたらBクラスが濃厚となる

果たしてこの賭けが吉と出るか凶と出るか


残り2つのポジションは「今年も」と言っては何だが、若手による争奪戦となる

川越誠司がトレードでドラゴンズへ移籍し、愛斗は現役ドラフトでマリーンズに移籍。入団年数ベースで8年ほど経ってポジションを掴めなかった選手を移籍させ、2000年以降に生まれたミレニアム世代に可能性を見出そうとしている

先頭集団を形成するのが蛭間拓哉であり、長谷川信哉、そしてオープン戦などで打ちまくったらという前提で山村崇嘉となるだろう

山村に関しては浅村栄斗が本格的に一軍デビューした2011年がそうであったように不慣れであろうが、内外野の空いているポジションに入れて起用する形が考えられる

実際にそうなれば「守備がーーーー」という状況も出てくるだろうが、そうも言ってられないほど打てないので、消去法ではなく、首脳陣やファンが誰を入れたらいいか分からなくなるほど悩む状況になってほしいのだが


・指名打者

栗山巧と中村剛也、ライオンズが誇る大ベテランはともに40歳を迎えた昨年も貴重な活躍を見せ、いまだ衰えない姿を見せている

ベテランにとって一番の敵は肉体面の衰えもあるだろうが、怪我ではないか。衰えもあるから怪我の可能性も高くなるのだろうけど、急激に衰えが来るのも事実で過去そういった選手も多くいた

これに関しては無いことを願うしかないので予想は立てづらいが、とにかく元気な姿でシーズンを完走してほしい

怪我と同じぐらい気になるのが、両外国人打者の存在。アギラーは一塁、コルデロはレフトでの起用が予想されるが、守備があまりにもお粗末だった際、指名打者で起用するとなれば2人の出る幕は無くなる

これでは戦力を最大化できないので、多少のミスには目をつぶっても起用するほかない。指名打者の渋滞だけは避けたいところ


・スタメン予想(願望)

スタメン予想は100人いれば100通りの案が出るもので、正解不正解はない。それぞれの野球観が出るもので、SNSなどで「私のスタメン予想」というのを見ると、いろんな考え方があるんだな~と思う次第である。結果的に自分の考えに合った(近い)人をフォローしがちなので、考え方が近くなっていくのはあるだろうけど


私が現時点で考えるスタメン予想(願望)はこのようになる

4 外崎修汰
5 佐藤龍世
7 F.コルデロ
3 J.アギラー
D 中村剛也/栗山巧
9 蛭間拓哉/山村崇嘉
8 長谷川信哉/西川愛也
2 古賀悠斗/炭谷銀仁朗
6 源田壮亮


秋山翔吾の移籍以来、適任者探しの旅に出ているが、いまだ見つからず、外野手問題同様、一番打者問題は喫緊の課題となって久しい

日本の野球と言ったら主語が大きくなり過ぎだけど、往々にして一番打者には足を最優先するがあまり、打つことを疎かにする傾向がある。福本豊氏の名言ではないが、走るため(足を生かす)には打てないと話にならないので

そうなると現在のライオンズで打てて、尚且つ走れる選手となれば外崎一択となる。課題は本人が「一番打者たるもの、ボールをじっくり見て」など考えすぎているところがあること。スピードとパワーを両立できる稀有な存在だけに、これさえクリアできれば理想に近い一番打者誕生となるが

二番には佐藤龍世を推したい。セイバー的な考えとして、良い打者に数多く打席が回るよう、打順を上げるという考え(一方で打順を組み替えたことによる得点期待値に大きな差は出ず、誰をスタメンに選ぶかが大事との考え方もある)からすれば、二番に源田壮亮を挟み、三番で起用するより、地続きで二番に起用した方がいいのではないか

個人的なイメージは第一次岡田政権時の関本賢太郎であり、二番固定ではなかったが、土橋勝征といった感じ

この二人は時代と監督の好みもあり、犠打数も多かったが、龍世には犠打をメインとした作戦ではなく、大学の先輩後輩コンビでチャンスメイクをして、クリーンアップトリオに繋げていく攻撃が望まれる

乱暴な言い方にはなるが、基本的に5番まである程度決まれば、6番以降は誰でもいい。昨年、オールスターゲーム以降の打撃が発揮できれば、古賀悠斗が6番でもいいし、外野の競争枠から台頭してくれたら、その選手を6番にしてもいいし

とにかく打線のカギを握るのは両外国人の成功。ここに尽きるので、うまくいくことを願うばかりである


書きたいことが多くまとめきれなかったこともあり、野手編が長くなり過ぎたので、投手編およびファーム編は日を改めてアップします

では👋👋


ライオンズを中心にあれこれ思った事を書いてます。