昭和の男たちによる昭和な野球に未来はあるか【7/3】

私が毎日楽しみにしているものの一つに「文春野球コラム」があります。

これは12球団に分かれて、スポーツ記者やライター、コラムニストからお笑い芸人やミュージシャン、主婦に至るまで多種多様な方々が監督となって、対戦形式でコラムのHIT数を競うあうものです。

前日には予告先発ならぬ予告コラムが発表されますが、7月3日の予告コラムがこちら

我らがライオンズの中島大輔監督代行が選んだテーマがファンの間で物議を醸している「平井克典投げすぎ問題」
それを首謀者?とも言える、小野和義一軍投手コーチに直撃するとの事。

是が非でも読みたいこのテーマ。コラムがアップされるAM11時になるのを今か今かと待っていた…

と言いたいのですが、仕事が立て込んでしまい、結局読めたのは夕方。

しかしその内容は小野投手コーチへのインタビューに、それを受けての中島大輔さんによる問題点の指摘であり提言と、全てのライオンズファンに読んでいただきたいボリューム満点のコラムでした。



小野コーチへのインタビューですが、ある意味では予想通りと言わざる得ないもので、それは筒香嘉智が言うところの「アップデートできていない指導者」を地でいくものでした。

例えば、6月23日に甲子園で行われたタイガース戦。5点をリードしていた7回から登板し、1点を許すなどいま一つの出来ながら何とか抑え、次の回は打席が回ってくることから「これで交代か。でも次誰を投げさせるかな?」などと思っていたら、何と何と平井がそのまま打席に。

ライオンズファンの「跨ぐなよ!@長州力」という思いをひっくり返すかのように8回も投げさせた場面について

「でも、1イニングに何点取られるかはわからないわけですよ。
その勝っているゲームをとりに行くのだったら、
一番信頼の置けるピッチャーを出したほうがいい。
それが5点差だろうが、6点差だろうが、
うちが勝っているのをとりにいくんだったら、
そういうピッチャーしか(任せられる者は)いない。
その前に連投させていれば、別ですけど」
「基本的には1イニングで行けばいいけど、
うちは先発がそれほどもってない。
平井が6、7回、7、8回と行けるのであれば、助かるし。
それが今後、あいつの野球人生の中で逆に生きてくれればいい。
『1イニングしか持たないよ』というピッチャーじゃなくて、
『2イニング、いつでも行けますよ』というピッチャーであれば、
使い勝手がいい。基本的に、投げる体力は絶対に必要なので」

と答えているが、何が起きるか分からないから一番信頼のできる投手、つまり平井克典をつぎ込んでいては「平井と心中」そのものである。

以前にnoteで書きましたが、2016年も「牧田和久と心中」した結果、6月に怪我で戦線離脱して、そこでチームとしての戦いは事実上終わりを迎えました。

たった3年しか経っていないのに、また同じ愚行を繰り返すのか?

そして当の平井克典本人が疲れてるかどうかに関して、月別の投手成績を見ると気になる点がある。

ほぼ完ぺきな内容だった、3・4月と比較すると、与四球数および与四球率(BB%)が増加。WHIPの悪化にもある様に走者を多く出すようになった5月。
破城はきたしていないものの、WHIPの数字が改善されないまま、これまで高い数値を残していた奪三振率(K%)が50%近く急落した6月。

これを見る限り、結果的に抑えているものの、かなり危うい状態になりつつあるのが分かります。

しかしコンディション管理についても

「多少疲れは出ているだろうけど、
我々はあくまでプロフェッショナルで、
そういう自己管理をきちんとやらないと。
求められたところで応えていくのがピッチャーの仕事なので。
そこは厳しいかもしれないけど、そういう立ち位置にいるから、
しっかり自己管理が必要になってくると思います」

とあくまで本人任せと言った感じで、それの対する投手コーチとしてのアプローチは全く無いように感じる。

またブルペンで肩を作る回数や球数も個人に任せていると言う事はブルペンを持ち場にしている西口文也一軍投手コーチも何もしていないのでしょう。

現在、千葉ロッテマリーンズの一軍投手コーチでもある吉井理人氏の著書『コーチング論』に「とりあえず肩を作っておくのはNG」という項目がある。
とりあえず一回肩を作っておこうとして仮に25球投げたとする。しかし出番がなく一旦作り終わる。そしてまた出番があるかもしれないと肩を作らせる。でも「今はいいわ」とこれを3~4回と繰り返すと、ブルペンだけで100球近く投げていることになり、試合に投げていないのに疲労だけが嵩んでいく。
それを避けるため、「準備は1回、15球以内で」と徹底させていたとの事。

これにはメジャーリーグでの経験が生かされており、日本以上にタイトなスケジュールの為、ブルペンで体操をしたり、チューブを引っ張って肩回りの血行を良くしてから投げ始めるなど、各々が球数を減らす努力をしていたようだ。

吉井コーチのこのような取り組みを見ると、小野投手コーチは「選手の自己管理」と言っているが、むしろ小野&西口両コーチによる「選手の管理」が全くできていないことが大問題である。

このあたりは二人とも現役時代は先発投手として活躍されてきた方なので、救援投手の事をイマイチ理解していないのでは?とも思ってしまう。

正直なところ、それだけの問題ではなさそうだが…


ただ「平井克典投げすぎ問題」に関しては、投手コーチを替えたらすべての問題が解決するのかと言えば、そんな簡単な話でもない。

というのもライオンズというチームは昔から「先発は完投するもの」という考え方が根強く、その流れからか「先発陣を重視・ブルペン陣を軽視」する前近代的な考えが強いからだ。

これは参考程度に見ていただければいいのですが、1974年に「セーブ」記録が制定されて以来、昨年2018年までの勝利数に対するセーブ数の割合はこの様になる。

制定された1970年代は勝利数に対して28.3%しかなかったのが、2010年代は昨年までで49.9%とほぼ半分を占めるようになった。
しかしライオンズは事実上、最下位となっている。
これにはからくりもあって、昨年の様に大量点を取った試合が多ければ、セーブシチュエーションにならないので、セーブ数が増えないというのもあるにはあるが。

ただこれを見てもクローザーを含む、ブルペン陣を軽視しがちなのは何となくイメージしていただけるのではないかと。

つまりはライオンズというチームに根付いた、いやネガティブな表現をすれば蔓延ったマインドというのを簡単にはがすことは中々できないだろう。


そして避けて通れないのが指揮官でもある辻発彦監督について。

平井克典を回跨ぎで起用するのは監督からも言われており、最終的にこの起用法にGOサインを出しているのだから、この問題の根源とも言える。

また吉井コーチの著書から引用させていただくが、栗山英樹監督も工藤公康監督も目先の一勝にこだわり、4点・5点リードがあったとしても、冒険的な投手起用は中々出来ないという。その為、吉井コーチは時に喧嘩をしながら、長丁場を見越した起用を進言していた。

昨年オフ、土肥義弘投手コーチが退団(実際は配置転換)したとき、ゴシップ系の雑誌で「短気な辻監督と衝突した」との記事があり、取るに足らない記事と切り捨ててしまっていいのだが、何も無かったのかと言われると、何かしらの問題があったと言えなくもない。

何が言いたいかというと、仮に来シーズン、救援投手としてのキャリアが長かった杉山賢人二軍投手コーチの内部昇格や、今年から解説者としてライオンズの試合を担当されている豊田清さん、もしくは意外と言っては失礼ですが、解説時にブルペン陣の準備など問題点をきちんと指摘されている星野智樹さんを入閣しても、再び衝突する可能性があるので、人を替えたら全てが万事うまくいくというほど簡単なものではないだろうという不安がある。

そしてフロントの長として束ねているのが、渡辺久信GMでこの方もブルペン陣を軽視しがちで、チームとして立ち行かなくなったら、先発投手を無理やりクローザーに回す力技を披露するなど、先発重視タイプであり、選手起用に関しては基本「〇〇と心中」タイプでした。

ここまで書いてきて思ったのが、辻監督や小野投手コーチをフォローするわけではないけど、選手に求める理想が高すぎるのではないだろうか?

前回(6/22)にアップされた記事では、野球における基本中の基本とも言えるキャッチボールについて「何故やるのか?」という意味を若い投手は本当に理解しているのだろうか?という榎田大樹の不安を書いたものでライオンズファンだけでなく、野球関係者からも反響があったよう。

前回と今回の記事に共通しているのは、「選手任せ」ということ。

自己管理出来て、自分には何が足りなくて、何をすればいいのか分かっている人はいいんです。プロ野球選手として一流になるのは、このようなことが出来る人だから。

でもそうではない選手を育てるには、答えは出さなくても、ヒントは出してあげるべきなんです。

こちらに新若獅子寮について寮長の後藤明美さんが話をされていますが、20部屋から26部屋+インフルエンザなどで隔離する2部屋に増えるとはいえ、この部屋数ではホークスの様に三軍チームを作ることはできない。

先日行われた西武ホールディングスの株主総会で後藤高志オーナーが

「ドラフトで入団した若手を育成することが大きなテーマ」

と話されている様にホークスやイーグルスほどお金を掛けられないライオンズにとって育成で選手を「外す」ことなく、戦力にしないと、育成が追い付かないわけです。


その為にも見かけは「昭和」の男でもいいので、頭の中は「令和」の男としてアップデートしてもらいたい。

大体、小野投手コーチも現役時代は肘や肩を痛めて、投げられない辛さは知ってるでしょ。それを平井克典に同じ体験させるわけにはいかんでしょ。

いやホント、コンサルみたいなこと言いますけど、人材は人財なのでね。

お願いしますよ、皆さん。

ライオンズを中心にあれこれ思った事を書いてます。