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うららー

ジェロニモ だだもれ

卒業式が18日に執り行われ
各科の生徒たちが新天地へ飛んでいった
静まり返った体育館の後片付けは
なんかちょっと寂しくて
反面、新入生の声が聞こえてきそうな
新しい息吹も感じられる

演台横の立派な松の木と
白やピンク、赤や黄色の生花
取り分けて皆で持ち帰る片付けをする

生花のタンブラーには
オアシスというシャワシャワのスポンジがあり
そこに縦横無尽に花が生けてあるので
スポンジのカスをこぼさないよう
丁寧に花々を抜き均等に分けていく

もういいでしょう

オアシスには
なんだかシブキの葉のようなものが
数本残っていたほどで

このまま廃棄しましょう
と均等に分けられた花を新聞に包みながら
その後の作業がふんわり伝えられた

見えてしまった
硬そうな葉の根元に小さな蕾がひとつ
オアシスに取り残され
両手をあげて助けを求めているかのように

あ、私これもらっていいですか?
蕾のついたソレを抜き取って新聞に包み
乾かないようにティッシュを濡らして
帰宅までデスクの棚に

カチコチした緑の小さな蕾
何の花か、椿か?たぶん椿だろう

一輪挿しに栄養剤と水を入れ
ごめんと葉を落とし生けた
暖かい部屋が良いだろうとリビングへ

数日が経って、まだ蕾はカチコチで
何の変化も見当たらない
水が少し減ったくらいで
持ち帰った時と何も変わっていない
このまま咲かずに蕾がポロンと
取れてしまうのではないか

おはよう、今日は寒いね
ただいま、ストーブつけるよー
花が見たいよ、ゆっくり咲いてね

世も末である…
花に話しかけている自分
何この感覚

10日が過ぎた時
劇的な変化が起きていた
蕾が膨らみ、所々に赤い色が差してきた

うわぁ やった
とてものんびりやさんのこの子
見ててねもう少しで咲くから
って言ってるみたいで
心の底から愛おしく思う

刻一刻と赤色は濃さを増し、広がり
今までのカチコチさも見た目にほころんできた
この中はカオスなんだろうな
花びらがくしゃくしゃになってたたまれてる
どんな花が咲くんだろう



たったひとつの花が咲くだけなのに
なんてこんなに嬉しいんだろう

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