工藤 弥生

短歌や詩などの物書き、写真。海、空、黄昏、鉱石のような、透明で危ういものが好き。よく聴…

工藤 弥生

短歌や詩などの物書き、写真。海、空、黄昏、鉱石のような、透明で危ういものが好き。よく聴くのはバッハとピアソラとAndrew York。 Instagram http://instagram.com/moco_forte

マガジン

  • たからばこ

    何度も読みたいものを、そっと。

  • 空から落ちてきた

    ラジオのつまみをいじっていたら、心惹かれる曲が流れてきたり、手紙入りの瓶が流れてきて、直接語りかけてきたり、そんな瞬間がほしくて。 散文、ときに韻文。胸いっぱいのさびしさをあなたに。

最近の記事

死にたい理由はないはずなのに、時折死にたいという思いで心が重くなることがある。

実際に死ぬわけじゃないし、死にたいわけではないはずだ。 それなのに「死にたい」という言葉が浮かび上がる。 いくら沈めても浮上してくるそれは、いつの間にか私の当たり前になっていて。 ただ単に「つらい」だけなのだろう。 ただそのつらさを処理しきれなくて「死にたい」という言葉に変換されてしまうのだろう。 この「つらさ」を素因数分解するか、もっと相応しい言葉をこの感覚に与えないと ずっと「死にたい」という言葉で置換されたままになってしまう。 来月生まれてくる子供に真似されたら困

    • 産休中って何するの?

      「産休中って何をするんだろう」 休む前はそう思っていた。 取得経験ある上司たちに聞いたら「すぐ入院しちゃったの」という話が多く 多少戦々恐々としていたことを覚えている。 実際休みに入ると、矢のように時間が過ぎる。 思ったように体が動かない。 昨日できていたことが難しくなっていく。 本を読むにも体力が必要だと認識した。 何を私はやっていたのか。 ・引っ越し後の荷解き ・引っ越し後の収納 ・赤ちゃん用品の購入 ・不用品の処分 ・職場関係の書類準備 ・役所関係の書類準備 ・入院

      • チョコレート、あるいは本当にほしいものについて

        チョコレートが好きである。 しかし、妊娠中なのでたくさん食べるわけにもいかない。 チョコレート欲が限度を迎えたある日、楽天で低糖質チョコレートを購入した。 これならきっと大丈夫、チョコレート欲が満たされるし普通のチョコレートよりは体に悪くないだろう。 そう思ったのだが。 食べたのに、満たされない。 食べているのに、満たされない。 枚数の問題ではないし、低糖質だからといって複数食べ続けたら体に悪いに決まっている。 チョコレートを食べたら、チョコレート欲が満たされると思って

        • 虚しさについて

          どこかで、今の自分がしていることが、全く役に立たないのでは、立っていないのかという意識があって それが自分の心と行動にブレーキをかけている。 炊飯器のスイッチを入れて、ホットクックのスイッチを入れて、自動掃除機(ルンバじゃないけど)のスイッチを入れれば 7割方の家事は終わるようなもので その他トイレ掃除とか、風呂掃除とか、野菜を切るとかそういう作業をすれば あらかたオッケーな毎日であって ある意味とても恵まれた環境。 あとの時間は出産準備とか情報収集とか、していればいいだ

        死にたい理由はないはずなのに、時折死にたいという思いで心が重くなることがある。

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        • たからばこ
          4本
        • 空から落ちてきた
          23本

        記事

          疲労と離れる

          どうしてこんなにも疲れるんだろう、と自分に問いかけると、妊娠しているからという答えが返ってくる。 間違いではないのだ。現に妊娠9ヶ月。もう少しすれば臨月。いつ出産してもおかしくはない。 それでもちょっと違う気がする。この疲れは妊娠しているからではなくて、他の原因に由来しているのではないか。 そこで私は答えに詰まる。 だからといってどうすればいいのだ。 答えはない。単に、疲労と近づきすぎているだけ。そう考えてしまったほうがいいのだろう。 夕焼けに照らされた液晶画面に、

          疲労と離れる

          一心同体とか信じない

          「お腹の中で子供が動いて、一心同体なんだなと感じました」 という言葉を耳にすることがある。 妊娠していなかったときは「ふーん」としか思っていなかったのだが いざ自分が妊娠して、胎動を感じるようになると、感じ方は変わってきた。 「全然一心同体じゃない」 「むしろ自分と子供が全く別個の存在であるとしか感じられない」 という感じである。 彼/彼女は、私の意志や行動とは関係なく、動くときに動き、休む時に休む。 寝る前にゴンゴンと脇腹を蹴ってくるのも元気な証拠なのだろう。 むし

          一心同体とか信じない

          圧力と体積

          ある程度圧縮することで、その時間が濃厚なものとなったりする。 日常における「やらなければならないこと」というものは 私にとっては時間を濃厚にするための必要悪だったのかもしれない。 そんなことを思うのは自分が産休に入ったばかりで、 9ヶ月のお腹を抱えつつもお腹の赤ちゃんが泣くわけでもなく とりあえず掃除と洗濯と料理だけをやっていれば問題がない状況にあるから。 生協のカタログを見ていたら2時間が経っていて慄然とした。 私はたくさんの時間を無駄にしているのではないか。 「自由

          圧力と体積

          産休に入って思うこと

          思ったよりも忙しい。 忙しくないはずなのだが、体の動きが思うようにいかないので 少し動いたり家事をしたりするだけでとても疲れる。 産休になったら、もっと時間があると思っていた。 現実は違った。 おかしいほどに時間が早く流れているのに その時間で何をやったのか自分でも判然としない。 それでもブログやnoteを更新したりして まだ自分は何かを生み出している、ということに縋りついてみたり。 職場に戻れる気がしない。 そう考える人の気持ちが分かる。 残業や休日出勤をして、家で

          産休に入って思うこと

          不妊治療の辛さ

          まだ完全に卒業できたわけでもない。 お腹の子供は9ヶ月。無事に生まれてくるまで胎児は胎児だし 生まれてきたあとも気が抜けるわけではない。 不妊治療は、ガチャだった。 50万円で数回ガチャを引く権利を得て(採卵・媒精)、 15万円で1回ガチャを引いて(凍結卵移植)、 だめだったらまたガチャを引いて、 その繰り返し。 2人目もほしい。 そのためには現在凍結中の卵子を来年移植するための 保管料金5万円を払う。 自分は何とか妊娠できたからいいけれど 正直、治療している最中は全

          不妊治療の辛さ

          人工授精は3回で十分だったかもと思う話

          不妊治療は結局、妊活期間も含めたら5年。 地元の産婦人科で人工授精を6回やったあと 都内の不妊治療専門クリニックでもっと精密な検査を受けて 顕微授精⇒3回目の移植で妊娠した。 今は妊娠9ヶ月である。 今思えば、後悔もある。 「もっと早く不妊治療専門クリニックに行けばよかった」 というのが一番の後悔。 「人工授精に早く見切りをつければよかった」 というのが2番目の後悔。 人工授精は、精子を先生が直接こちらの膣に入れるもの。 正直、3回やってだめだったら、6回でも確率とし

          人工授精は3回で十分だったかもと思う話

          環境に倦むというより #短歌条例

          環境に倦むというよりここにいる今の自分に飽き果てている。飛べるのか飛べないのかは知らないが、ここにいたって進めないよね。分かってる。怖くてここにいることを。ここにいるしかないということ。本当か?今でも君は冬の空、冬の青さに透けていけるよ。死にたいよ。死にたくないよ。このままじゃ次も地球に降りてしまうよ。辛いよね。安定剤を放り込む肉体のこと魂のこと。変わるかな、変われるのかな。今ここでひとり遠くに行ってしまえば。

          環境に倦むというより #短歌条例

          今滅びたならば #エッセイ

          今滅びたならば、私には何が残ってくれるだろう。短い髪の毛に散らばった紙屑。記憶の爪痕は風の前にすぐかき消されてしまう。 どこまで行けばよかったのか。 どこで止まればよかったのか。 そんな自問自答のつまらなさを自分で笑って、誤魔化したまま死んでいくのだろうか。 過去がよかったとも言えないけれど、今が悪いとも言わないけれど、何もしなかったら延長線にしか未来はないわけで、それを私はひどく嫌うのだ。既定路線しかない毎日を、延々とシーシュポスのごと繰り返していく暇はない。そんなこと

          今滅びたならば #エッセイ

          遠くまで #短歌条例

          遠くまで歩けないから背を割って異形の翼取り付けたけど、一枚とまた一枚の羽根たちがこぼれるだけでどこにも行けず、形而下の海図を眺め行く先もわからないまま進めもせずに、諦めが染みわたるよな青空の下で喇叭が鳴るのを待った。 薄闇に火星と土星煌めいて、見下ろしている針の穴から、どこまでも進む光といつまでも止まる私の世界の違い、どうしたら追いつけるのか、寂しさを海にこぼして考えていた。 真鍮の肌は汚れて抉られて、歪に伸びた翼の骨が、醜くも懐かしいから取り外すこともできずに血が止まら

          遠くまで #短歌条例

          放課後の夕陽 #エッセイ

          そこはかとない不平や不満を抱きながら毎日泳いでいて、いつの日か彼岸にたどり着くのだろう。 それだけの人生は嫌だと思うけれども、それから逃れるために自分ができることは目の前のことしかなく、そしてその目の前というものも、自分の目に見えているものしか扱うことができないので、きっと他の人から見たら 何も意味のないことを私はやっているのかもしれない。 それでも、何かやることは全く意味がないと言い切れるわけもなく、何かやることでせめて自己満足だけでも手に入れようとあがくことは、笑わな

          放課後の夕陽 #エッセイ

          就職活動なんて #エッセイ

          就職活動なんてしなければよかった。そんな言葉が浮かんでは消え、そしてまた浮かび上がり、働きながらずっと消えることはない。 エントリーシートはとても苦痛だった。やりたくないことをやりたいと書き、お金のためだと書きたいのにやりがいがあると装飾する。文章のツボは心得ていたので9割方通ったが、面接ではかなり苦戦した。 私は組織で働くことを諦めるべきだったのだろうか? 言葉だけをなりわいにしていたら何か変わっただろうか? 言葉をなりわいにする組織を探すべきだったか? 転職活動と言われ

          就職活動なんて #エッセイ

          旅を終わらせる #エッセイ

          旅を終わらせるのには時間がかかる。 家に帰って、部屋の淀んだ空気を取り除き、鞄を開けて荷物を取り出していく。洗い物は洗濯機に、レシートは家計簿に。そんなことをやっていくと、床がいつのまにか散らかっていて自分の心のようだと思うのだ。 とりあえず全部机や作業台の上に置いてはみるのだが、そこからまたとっておくものや捨てるもの、書き留めておくもの、そのようなものを整理するのに少し時間を必要とする。 名残惜しいのだろうか。手放したくないのだろうか。旅は私の手元にまだ終わりながらも漂っ

          旅を終わらせる #エッセイ