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見たものつれづれ帖

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お芝居、歌舞伎、映画に将棋。たまに日常。まれにおいしいもの。心が動いたものの覚えがき。
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10年ぶりの天日坊

10年ぶりの天日坊

座席に座って幕が開くまで、すっかり忘れていた。天日坊ってどんな話だっけ?
10年ぶりの再演と聞いていたけれど、そもそも10年前の私はどんな毎日を過ごしていたのだろう、それすらもちょっとあやふやで。どこの部署にいて、どんな思いで、誰と仲良くしていたのか。ぼんやりと曖昧なのに、ただ前に見たときの鮮やかな幕切れと、主人公のラストの絶叫だけがはっきりと心に残っていた。

「俺は誰なんだ??」

前に見たと

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NCTの踊り分析日記

NCTの踊り分析日記

完全にnctにハマりました。
踊りを見て完全に引き込まれ、音もかっこよくて、暇さえあればYouTubeを見てしまう。
もともとジャンル問わず、歌舞伎、クラシックバレエ、フラ、インド舞踊…舞が好きなのだけれど、どちらかと言えば民俗的なベースがあるタイプのものを見ることが多くて、正直自分がハマったのに自分でも意外。

素晴らしいダンサーは、時を支配する。音を支配する。世界を作る。見ているこちらも我を忘

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フォースって結局なんなのさ

フォースって結局なんなのさ

スターウォーズ観てきた。ネタバレじゃないつもりだけど、ちぇ、知りたくなかったと思いそうならば、ご注意を。
おおまかなストーリーは、たぶんジョージ・ルーカスさんが考えた通りだろうけど、ところどころにディズニーっぽさというか、マーベル風味というか、あれ?こういう感じだっけ?という部分があった。別にそれが悪いわけじゃなくて、単なる好みやイメージの問題。
勝手に思ってた。スーパーマン的、超人的じゃなくて、

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ニンに合う

ニンに合う

仁と書いてニンと読むらしいけれど、誰かの劇評で見たのだと思う。ニンに合う、という言葉は、役柄がその人にぴたっと合うさまを言うのだそうだ。
3月に猿之助さんの弁天小僧を見てから、ずっとそのことを考えている。猿之助さんの動くさまを見たくて、あのキセル片手にくだ巻く弁天小僧も見なくちゃ!と駆けつけたのだけれど、なんだかいつもほど高揚しなかった。猿之助さんの舞が好きで、踊らないからかな、という気もするけれ

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炎と水と

炎と水と

こいつぁ春から縁起がいいわぇ、というわけで、初春大歌舞伎に。歌舞伎座の中にはお正月飾りが飾られて、華やかで浮き立つような。来ているお客さんのわくわくする気持ちが漂っていて、やっぱりいつもと違う気分。
昼の部の吉田屋は、またもや七之助さんが演じる三大女役なんだけれど、勘三郎さん追善公演に行ったばかりで、そんなお大尽っぷりを発揮できるわけもなく、幕見狙いにして、夜の部のみ行ってきました。
実は芝翫さん

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おせっかいかもしれない

おせっかいかもしれない

フェルメール展の帰り道。なんだか時代を超えて、オランダに、あの午後の光の中にいたような気持ちになっていたからかもしれないけれど。
人の関わりがぐっと狭く、近く。出会う人の総量も少なくて、そのぶんだけ大事だった頃みたいな雰囲気にいつの間にか浸っていたせいかもしれない。
電車の中に3人組が乗ってきた。そのうち1人は体調悪そう。飲みすぎてもう立てなくて、あきらかにダウン寸前だった。口にビニール袋を当てて

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本のいろいろ

本のいろいろ

最近、読んだ本に、はずれがない。というか、そもそもはずれとか当たりもないんだけれど、しみじみよかった、繰り返し読もうと思える本にめぐり合ってる。
こういうときは流れの兆しを読めている感じがする。
まさにそういうことが書かれているのが、吉本ばななさんの「違うことをしないこと」。小説と違って、手引書のような一冊だった。
当たり前のように周りの顔色を読んで、空気も察して、正しいと思われる道筋に沿って進ん

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ただそこにいるすごさ

ただそこにいるすごさ

10月からの中村屋さんまつり。もちろん行きました。昼夜行って、悩んだけど2回目は辞めて、幕見で夜昼のハイライトを狙って駆けつけて。
歌舞伎良いな〜という、もともとのきっかけは、勘三郎さんなんだけど、お父さんもっと見たかったな…という思いは不思議となくて、なぜならやっぱり2人の兄弟の中にちゃんと生きてるから。それをひしひしと感じた。
どれほどまで、たくさんの時間と芝居への愛、息子への思いを、注いでき

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月を見てもひとり

月を見てもひとり

人と会ったり、色々と用事を済ませて、買いたい服も見つからず、ちょっと疲れた週末。ごはん作るのが面倒で、お弁当買って帰るのもわびしく、あったかいものが食べたくて、軽く寄り道して帰ることにした。つばめグリルの前を通って、そうだ、ハンバーグ食べたい!と猛烈に思って、でも家族連れが何組も並んでいるから、違う駅ビルの別のハンバーグ屋さんに向かった。わりと入りやすいイメージがあったのだ。
お目当ての店は、前に

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エールしかない

エールしかない

同じ部署の仲良しさんたちが、なぜかぱたぱたと辞めることになり、送別会続き。会社って不思議で、もともとは、あまり仲良くなりそうにない人と机を並べて、毎日、横で電話のやり取りを聞いたり、書類回したり、ちょっと愚痴ったりしているうちに、なんとなくうち解けていく。そのうちに、あ、大変そう、とか、いいことあったな、とか、今日デートか(セクハラではないよ)とかわかるようになる。
毎日を重ねるってすごいな、と思

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悪ものが美しいのは舞台だから

悪ものが美しいのは舞台だから

ちょっと前だけど、8月の納涼大歌舞伎のはなし。悪い七之助が大好きなので、楽しみにしていた、盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)。チケットを完全に取り忘れていたから、久しぶりに外国人観光客に混じって幕見に行った。大学時代とか、まだぴよぴよOLだった二十代の頃は、そんなにお金もないし、もっぱら幕見ばかりだった。天井桟敷そのものの高さは、まるで芝居の神様の目線のようで楽しい。なんだか久しぶりにワクワク

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天丼のおいも

天丼のおいも

天ぷらのおいもは、結構好きだ。子供の頃から、家で母が天ぷらをするときには、必ずさつまいもがあった。甘いさつまいもの天ぷらはおやつ感覚で、結構食べていたように思う。けれど、天丼におけるさつまいもは、果たしてどうなんだ!だいたい、ごはんとさつまいもって、ダブルでほんのり甘みがあって、合わないぞ!甘じょっぱいおかずがごはんに合うのは、じょっぱい部分があってこそだ!!あとポクポクした食感が、ここでは裏目に

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連想ゲーム。ラーメンといえば

連想ゲーム。ラーメンといえば

なぜかのってるシナチク、なると。色々な作家さんのラーメンにまつわるエッセイをまとめた本を読んでいて、もし私がラーメンを語るならば、と考えた。
正直、年に二、三回ぐらいしかラーメン食べないし、それも阿夫利みたいなあっさりしたやつ、とか、大学時代に体育会の男の子と付き合っていた女の子はいきなりみんなラーメン好きになっていたよな、とか今の私に思い入れは少ないことに気づく。
しかし、子供時代の私は違う。ラ

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色気すぎ! 切られの与三

色気すぎ! 切られの与三

シアターコクーンの思い出は色々あって、蜷川さん演出の9時間だか6時間だかの舞台を見たり、宮沢りえちゃん&松たか子さんの共演でまじで火花散っていたNODAMAPとか、自分でも忘れるぐらいあるけれど、コクーン歌舞伎もやはりその一つ。とにかく舞台そのものも素晴らしいけれど、距離感が近いこともあるのだろう。
その世界を一緒に生きた。という感じがする。
どれもどこか、今の私たちと同じような感覚が織り込まれて

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