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ただそこにいるすごさ

10月からの中村屋さんまつり。もちろん行きました。昼夜行って、悩んだけど2回目は辞めて、幕見で夜昼のハイライトを狙って駆けつけて。
歌舞伎良いな〜という、もともとのきっかけは、勘三郎さんなんだけど、お父さんもっと見たかったな…という思いは不思議となくて、なぜならやっぱり2人の兄弟の中にちゃんと生きてるから。それをひしひしと感じた。
どれほどまで、たくさんの時間と芝居への愛、息子への思いを、注いできたのだろう。面影がちゃんと残るほどの積み重ね。あの型、あの表情、体のバネと動きに、欠片を散りばめて。すごい、本当に愛しかない。
それをちゃんと守っている、兄弟ふたり。それも素晴らしく、魅入られました。
これが歌舞伎。
七之助さんは、初役の揚巻に注目が集まっていたけれど、人情話の普通のおかみさん役がリアルで切なくて、お姫さまでもファムファタルでもなく、ただ日々をがんばって生きる女の人ができるようになったことが、私としては実はすごいなって、これも影の新境地なんじゃないかなって思う。気持ちが迫ってきて泣けた。
女形の3大、と言われるだけあって、揚巻はただ目が離せない。花道での出だけで息を忘れた。
でも、鉄火でもなく、気高いだけでもなく、なんというか揚巻という枠の中に、何か一瞬、空洞がある感じもして、それこそが花魁という存在なんだと思わされる。
ただそこに美しくある。
それっていちばん難しいんじゃないかな。
お話が進むと、情と意気の女の人ってわかってかっこよいんだけど、でも闇に浮かぶあの立ち姿、忘れられない。
仁左衛門さんの助六は色気がすごくて、愛嬌もあって、なるほど吉原いちの色男なんだな、と美しすぎるお二人だった。
余談だけど、こうして観ると、海老蔵さんはやっぱり真面目なんでしょう。凛とした男ぶりの助六だったけど、仁左衛門さんの人ごころを蕩かすような空気は、ちょっとたまらない。
お兄ちゃんの踊りは、ほんとにお父さんのしなやかな動きと愛嬌があってかわいかった。
なんか文章めちゃくちゃだけど、とにかく、ありきたりの語彙じゃ対応できない、この先も何十年もたぶん思い出す10月の歌舞伎でした。
#10月大歌舞伎 #中村勘三郎 #追善 #中村屋 #中村勘九郎 #中村七之助

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