雨降りのバス

雨天の車内の雰囲気は暖かくて優しい。

降り口の近くの吊革に捕まると、窓の外をよく覗くことができた。

水滴が絶えず窓に当たって、過ぎゆく景色にぼんやりとモザイクをかけた。

冷たい世界の中で、バスの中だけは暖房が効いていて心地よい眠気を誘う。

まるで微かな催眠ガスが体中を包んでいたような感覚に襲われたので、ゆっくりと大きな欠伸をしてみると、ここがどこなのかわからなくなった。

走るほどに揺れる箱。

頭がぼやけて働かなくなってしまった。

夢とうつつの間で、気づけば一人、私は夢幻を抱えていた。

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