新アラビア夜話を読みました

光文社「新アラビア夜話」

スティーブンソン 南條竹則・坂本あおい訳

を、読みました。


ボヘミアのフロリゼル王子と、家臣ジェラルディーン大佐の心踊るような冒険譚。
おおまかに猟奇的殺人趣味を断罪する「自殺クラブ」、人々を魅了し地獄へ墜落させる「ラージャのダイヤモンド」の二つの物語に分けられる。
被害者、加害者、意図せず巻き込まれてしまった者など、さまざまな人の視点からミステリーの謎に迫る。

ただ謎解きの要素だけではなく、人間の心理に潜む狂気をありありと映し出している。
基本的に巨悪対正義という構造になっているのだけれど、それだけじゃない。
悪人は自分では悪事に手を染めず、善人(市井の民)を上手く利用して物事を図ろうとする。
物語を複雑化して色々考察させるように仕組まれた手法が素晴らしいと思った。

また、実質的には王子が主人公であるものの、王子の登場シーンは少ない。
それなのにどの人物よりも存在感が強く、王子が出てくるだけで不思議と安心感をおぼえてしまう。
頭がきれて、分別もあり、正義感も持ち合わせている。
権力を正しい方向に持っていく力がある。
この物語を読めば、王子のカリスマ性に魅了されてしまうことだろう。

読んでいる間中、常に続きが気になってドキドキしていました。面白かったです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?