余白が広がる

風。自然。景色。夕焼け。
そんなセンチメンタルな風景は私を若返らせる。チャットモンチーを聴きながら自転車で駆け抜けた坂道は夕日に照らされていた。風が気持ちよくて、何でもできそうな気がした。すぐに暗くなってしまいそうな、だけどまだオレンジ色に照らされている、そんな風景。

いつもはそんな感覚を思い出す機会なんてなくって、生活に追われて眠気に追われてたくさんのことを日々忘れていく。キラキラした青春時代を過ごしたわけでもなくむしろしんどいことの方が多かったのだけど、あの時の感覚は二度と体験できないものでとても貴重なものだった。誰にも何にも変えられない感覚。

いつも何かを考えていた。
携帯メールを待ちわびていたし、LINEのメッセージに怯えることもなかった。
知らず知らずのうちに自分の気持ちを無視し続けている自分がいて、心の余裕なんてものも考える暇もなくて、ただバタバタとやるべきことをこなすだけの日々。
勢いをつけるのは得意だけど、自分を大切にしてあげるのはとても苦手なんだと思う。あの頃は色んなことに夢中で色んな景色や風景、そして周りにいた人たちが愛おしく儚く尊かった。ありがたかった。そんな時期の感覚を忘れずにいたいし、忘れてはいけないんだなと、そんな感覚を忘れかけていた今、そう思った。

自分が強くなければ人を信じられない。今ではその意味が身に染みてわかる。そう、久々にドラマ『オレンジデイズ』を観てセンチメンタルな気分に浸っている。10年以上も昔のドラマだけど色褪せることなく、蘇る記憶と感覚が新鮮で驚いた。小さな画面からでも心の余白が広がる瞬間があることを知った。サブカルチャーはそんな可能性を十二分に持っているのだと改めて確信できた時間だった。

#エッセイ #コラム #cakesコンテスト #ドラマ #オレンジデイズ #センチメンタル #妻夫木聡 #柴咲コウ #瑛太 #成宮寛貴 #白石美帆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?