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「&」 最後まで苦しい愛。 伝えないことは美しいものなのか。

大人になるにつれ、荷物が少しずつ増えて相手のことを思うばかりに伝えられない、若くない恋愛。辛い。それが続く。苦しい。

&(アンド)

カバーが気に入って、内容を知らずに読み始めたのだけど、絵がすごくきれいで繊細で、強調する文字もお手製な感じで、ひとことで言うとおしゃれなんだと思います。コマ割り?も大胆だったり、背景もきれいなお手製のパターンやモチーフが、すっっっごく目を引きます。人物もファッションもきれいな人が多くて、70年代っぽい雰囲気もあります。

でも。読むほどに心が騒ぐ内容で、辛い。

26歳の薫は、派遣で医療事務をしながら、大学時代の後輩シロの経営するオフィスに間借りしてネイルサロンを開きます。薫には彼氏が居たことがなく、異性に触られるのが苦手。そんな中、勤務してる病院の矢飼先生とは少しずつ距離を縮めていきますが。。。過去に恋愛経験のある矢飼先生と、恋愛経験のない薫。矢飼先生は明らかにしない過去があることと、自身の恋愛経験があるからこそ薫とは遊びでは付き合えません。一方の薫は思いが募るばかりで、遊びの関係でも良いと矢飼先生に気持ちをぶつけます。

少しずつ矢飼先生の過去が明らかになっていくのだけど、どんな苦しくなるようなシーンでも、ただただ美しいのよね。ドロドロで残念で狂気さえ感じるシーンすら、繊細できれい。このことが悲しみや、やりようのない気持ちを増幅させてく。ほんとはもっと汚いものなんじゃないのかなと思うのに、薫と矢飼先生がピュアで、実はとても相手を大切にしているから美しいものになるんだと感じる。

次こそハッピーエンドだよね?と期待して読むんだけど、読む私はことごとく裏切られる。ふたりはこんなに思い合ってるのに。

自分の過去と立場を考えると、薫には正直に伝えられずにきてしまった。薫もまた気持ちは伝えるものの、自信がなくなったり矢飼先生から冷たくされたりで苦しむ。なんなのこの行き違い、ずっと届かない追いかけっこ、そして不器用さ。

最終話の最後で涙出るよね。なんで?って。この先どこかで再会して、今度こそシンプルに愛し合って過ごしてよ。。。

デザインと絵に大きな力があるから、複雑さや冷たさが滲み出る作品なんだろうなあ。作者さんすごい。




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