大人だって、新しい恋をする

「僕とお付き合いをしてみませんか。」

突然のコトバだった。


このところ、どうしても気持ちの整理ができなくて、初めてコーチングのセッションを申し込んだ。

もしセッションを受けるなら、この人がいい。以前から、そう思う人がいた。

スラリと背が高くて、優しくて穏やかで、キャリアがあるのに偉ぶることもなく、おそらく誰からも好感を持たれる、そんな人。



「本当に話したいことは、何かな?」

3度目のセッションの日。そう聞かれた。

1度目は仕事に関する今後のビジョン。2度目は、コミュニティや社会性、人との繋がりについて。それぞれコアな部分を掘り下げて、これから進みたい道が見えてきた。


それでも、いちばん話したかったことは…
家族においての。自分の存在意義。

けれど、これを話題にすることは、
すごく怖くて、勇気がいることだった。


夫とのこと。
思春期真っ盛りの子どものこと。

私って、彼らにとって一体何なんだろう…。
そう想う出来事が、立て続けにあった。



彼はわかっていたのだ。
私がずっとモヤモヤしている、答えを見出したい胸の内を、本音を曝け出していないことを。


セッションの場は、安心で安全な場であること。口外することは絶対にない。これからの自分のために、まず話すということが、大切な一歩となるんだよ。


それを聞いて、私はゆっくりと言葉を絞り出した。それに対して、穏やかに、優しく投げかけられる問いに、直面した事実。悲しい理由。本当はどうなりたいと思っているのか。だんだんと溢れるように、すがるように、自分の思いを自分の言葉で伝えた。
顔はもう、涙でぐちゃぐちゃだった。

誰かの前でこんなに泣いたのは、初めてだった。コーチという、家族や友人ではないのに、心から信頼と尊敬できる人。悲しい気持ちを心の中から言葉にして吐き出し、泣かせてくれた。
時間の流れが、静かで穏やかだった。



「伝えてくれて、ありがとう。そんな想いを、よくひとりで抱え込んでいたね。頑張ったね。」

湧き出るように流れ出た、気持ちと涙も少し落ち着いてきた時。彼が座っていたスツールを手に持って、座っていた斜め右側から、そっと私の右側にきて、ぎゅっと抱きしめてくれた。



「僕と、お付き合いをしてみませんか。」

仕事絡みのイベントで初めて会ってから、優しくて魅力的な人だということは感じていた。その後何度か共通の場で話すことはあったが、それまでのこと。

今日の中で、これまでお会いした中で、いちばん穏やかで、優しい声だった。


人のために一生懸命になれる人だということは、知っていた。何か話したいことがあって、ここに来たこともわかっていた。苦しんでいることもわかった。

コーチとしてではない。1人と1人の人として。僕の言うお付き合いとは、美味しいものを食べに行って、美味しいね。って一緒に感じたり、心が惹かれるものや場所に足を運んで、あれこれ意見を言い合ったり。そういう時間を一緒に過ごしてみたいと思っている。傷ついていることが分かるから、少しでもその傷の癒やしになれたらという思いもある。

そう話してくれた。


力強くて優しくて、温かかった。心臓って、こんなに強く拍動するのか⁈と自分でびっくりするほど、脈打っていた。



互いに結婚してるとか、子どもがいるとか、共通の知人もいるとか、一旦そういうことには蓋をして、「一緒に」と言ってくれたことに、心を寄せてみたいと思った。直感だ。


若い学生の頃の恋愛や付き合いとは違う。結婚云々とか、未来を期待して振り回されることもない。社会的には、いい大人。結婚してたって、ちょっとドギドキするような気持ちで会える人がいる。そういうことって、日々を、自分自身を豊かにするエネルギーになるんじゃないか。

私は傷ついている。愛し愛されて、強く望まれて結婚をしたわけではなかった。これでいいんだ。そう思っていたけれど、私だって、そんな夫に執着せず、自分の気持ちに正直に生きたっていい。

直感で抱いた気持ちを肯定できる、意義を探している。


「みんなには、内緒だよ」
そういった彼の顔が、とっても愛おしかった。

初めて本気で好きになった人と同じ、3つ年上の人。

気持ちのままに進んでみようと想う。

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