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塗りつぶす

King Gnuのカメレオンという曲に

何度でも何度でも
塗りつぶして
汚れた悲しみの
上から白い絵の具で

というフレーズがある。



汚れた、というと少しニュアンスが違うかもしれないけれど、私には自分の中に、塗りつぶしてしまいたい、悲しみの傷がある。



先日、絵を描く機会があった。
ナビゲートしてくれる人に「伝えたいこと、モヤモヤしていること、キャンパスに手紙を書いて、その上から想いを描いてみたらいい」と言われた。

 
伝えたいこと。
普段言えないこと。
本当の願い。
決別したいこと。など

なんでもいいよ。


その言葉を聞いた時、私はカメレオンのように、悲しみを塗りつぶして、いい加減にその悲しみを、自分の中から切り離したかった。



 
私の傷は、以外と深かった。
言われた言葉を何度も何度も思い出しては、どうにもできない、やり場のない想いに、涙が溢れた。
 
 
忘れよう。ひとりの人だけに気持ちが行かぬよう、他の人の優しさに寄りかかろうともした。でもダメだった。
私の想いは、強すぎた。
 
 
こんなに自分は愛情が深いのか。
取り残される恐怖心なのか。
自分でも、想いの源は正直よくわからない。

 
けれど、悲しいという気持ちだけは、確かなものだった。

 
 
 
過去は変えられない。
経験してきたこと、想い。
それは、人それぞれ。

そんなこと、嫌というほどわかっている。
 
 
 
だから、切り離して、今を生きていきたい。
だから、想いを書き殴ったキャンパスに、真っ白な絵の具を塗った。
 
 
 
塗っても塗っても、その文字はなかなか消えなくて、何度も何度も塗った。必死に、無我夢中で塗った。

塗りつぶしたと思っても、筆のタッチで隙間からうっすらと面影を残す文字に、怯えるようにまた何度も何度も絵の具を落とす。

 
 
もう現れないでほしい。
浄化してほしい。
 
そう願いながら、塗り重ねた。

 
 
 
再び白くなったキャンバスの上に、木漏れ日のような、未来から今に光が降り注ぐようなイメージで、黄色やゴールドの絵の具をのせた。
 
 
 
 
キャンパスは、塗り変わった。

暗い想いを塗りつぶして、新しい光が差し込んだ。
 
  
 
 
 
塗り替える。という経験をしたことで、やっと「切り離す」ということができた。

 
できた気がする。と言ってしまうと、そこに曖昧さが残る。だから、自分の心が、脳が、「切り離した」としっかりと認識するように、できたと言い切る。

 
塗り替えた。
その先には、新しい光が差し込んだ。


 
悲しみを塗りつぶして、切り離した。

私の傷は、消えた。


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