告別の色は淡い水色だった
【ピエロの手記76 断章64】
朝 目覚めると
世界は、いや私の部屋は無彩色だった
空間は霧に満ちており
薄い灰色が淡い水色にも見えた
これは夢の続きなのだろうか
いや あの時もそうだった
頭の中では彼女の旋律がうたっている
いや あの時は何の音も聞こえていなかった
ベッドから足を床におろす 硬い
これは現実なのだ
まさかおまえ 無意識に
もう一度 あの時を演じようとしているのではあるまいな
否!
否!
否!
今はそれも許されていないのだ
今はただ奥歯を噛み締めて疼痛に耐え
歌声の誘いを断ち切らねばならぬ
地獄とは死ぬことではない
死ぬことも許されずに
さりとて救いの天使は永劫に降臨することはなく
毎日 ご飯を食べることなのだ
‟悲しいピエロ”
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